第二期 最終話(第十三話)「君と歩く未来へ」
一月。
冷たい冬の空気の中にも、新しい一年の始まりを感じる朝。
ユウキは鏡の前でネクタイを整え、深く息を吐いた。
「……よし。」
営業の大事な商談でも、ここまで緊張することはない。
今日は、ミヤビとの思い出を巡る一日。
そして、自分の人生を大きく変える日になると決めていた。
待ち合わせ場所は、一年前と同じ難波駅前。
「お待たせ。」
ミヤビが柔らかく微笑む。
淡いベージュのコートに、去年クリスマスにプレゼントした青いストールを巻いていた。
「そのストール。」
ユウキが嬉しそうに言う。
「お気に入りだから。」
ミヤビは照れながら笑った。
「今日はどこへ行くの?」
「思い出巡り。」
「思い出巡り?」
「付き合って。」
「もちろん。」
最初に向かったのは、二人が初めて出会ったアニソンバー『Sirius』。
昼間はまだ営業前だったが、店の前に立つだけで、あの日のことが思い出される。
「ここから全部始まったね。」
ミヤビが静かにつぶやく。
「勇気を出して話しかけて、本当によかった。」
ユウキが笑う。
「私も。」
「もしあの日、別の席に座ってたら。」
「今はなかったかもしれない。」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
続いて訪れたのは、二人で聖地巡礼をした坂道。
そして映画館。
初めて手をつないだ川沿い。
夏祭りの会場。
水族館。
一つひとつの場所で思い出を語り合う。
「ここで転びそうになったよね。」
「ユウキが支えてくれた。」
「ここでは映画を観て泣いた。」
「二人とも泣いてた。」
思い出すたびに笑顔になる。
どの場所にも、二人の時間が刻まれていた。
夕暮れ。
二人は川沿いの遊歩道へやってきた。
空は茜色に染まり、水面がゆっくりと輝いている。
「きれい……。」
ミヤビが立ち止まる。
ユウキも隣で景色を眺めた。
「ミヤビ。」
「うん?」
「少し聞いてほしい。」
真剣な表情に、ミヤビも静かに頷く。
「一年前。」
「俺は仕事しかない毎日を送ってた。」
「休日は一人でアニメを見て。」
「それでも十分だと思ってた。」
「でも。」
「ミヤビと出会って。」
「笑う回数が増えて。」
「帰り道が楽しみになって。」
「未来を考えるようになった。」
ユウキはゆっくりミヤビを見つめる。
「家族に会って。」
「一緒に旅行して。」
「将来の話をして。」
「気づいたんだ。」
「俺が一番幸せだと思う未来には、いつもミヤビがいる。」
ミヤビの瞳に涙が浮かぶ。
ユウキはコートのポケットから、小さなケースを取り出した。
ゆっくりと開く。
中には、シンプルなデザインのペアリングが並んでいた。
「これは婚約指輪じゃない。」
「でも。」
「これから先も、一緒に未来へ向かって歩いていきたいという約束の指輪。」
少し照れながら笑う。
「ミヤビ。」
「これからも。」
「俺の隣で笑っていてほしい。」
「そして、いつか結婚しよう。」
夕暮れの静かな風が二人を包む。
ミヤビは涙をぬぐいながら、何度も頷いた。
「……はい。」
声が震える。
「私も。」
「ユウキと同じ未来を歩きたい。」
「嬉しい時も。」
「苦しい時も。」
「ずっと隣にいたい。」
涙をこぼしながら笑う。
「よろしくお願いします。」
ユウキはそっとペアリングを取り出し、ミヤビの左手の薬指にはめる。
ミヤビももう一つの指輪をユウキの指にはめた。
二人は指輪を見つめ、自然と笑い合う。
「似合ってる。」
「ユウキも。」
照れながら見つめ合う二人。
言葉にしなくても、お互いの気持ちは十分に伝わっていた。
その夜。
サークル「オタクっ子集まれ」のメンバーへ報告すると、グループチャットは祝福のメッセージで埋め尽くされた。
タクミ
「おめでとう!!」
リク
「ついにここまで来たか!」
ユイ
「結婚式は泣く自信あります!」
二人はスマートフォンを見ながら顔を見合わせる。
「みんなに支えられたね。」
「うん。」
「本当に。」
帰り道。
ユウキとミヤビは手をつなぎながら歩く。
左手には、おそろいの指輪が静かに輝いていた。
恋人として始まった日々は、やがて人生を共に歩む約束へと変わった。
これから先も、きっと楽しいことばかりではない。
すれ違う日も、悩む日もあるだろう。
それでも二人なら乗り越えられる。
同じ夢を見て、同じ未来へ向かって歩いていける。
そう信じられる相手に出会えたのだから。
第二期 完
「あの日、隣の席に座った君は、やがて僕の人生で一番大切な人になった。」
第三期予告「結婚へのカウントダウン」
婚約という新たな一歩を踏み出したユウキとミヤビ。両家への正式なあいさつ、結婚式の準備、新居探し、そして新生活への期待と不安。支え合いながら「夫婦になる日」を迎えるまでの物語が、いよいよ始まる。




