第二期 第十話 「支え合うということ」
十月。
秋空が高く澄み渡る朝。
今日は、ミヤビにとって大切な資格試験の日だった。
試験会場の最寄り駅へ向かう電車の中で、参考書を開いては閉じる。
(ここまで頑張ってきた。)
仕事が終わってから勉強を続けた日々。
眠気と戦いながら問題集を解き、休日も机に向かった。
できることは全部やった。
それでも、本番が近づくと緊張してしまう。
会場へ向かう途中、スマートフォンが震えた。
ユウキ
「もう着いた?」
ミヤビは微笑みながら返信する。
ミヤビ
「今から会場に入るよ。」
数秒後。
ユウキ
「ちょっとだけ外に出られる?」
「え?」
ミヤビは不思議に思いながら入口へ戻る。
すると。
「ミヤビ。」
優しい声が聞こえた。
「ユウキ!」
そこにはスーツ姿のユウキが立っていた。
「仕事は?」
「午前中だけ時間をもらった。」
「えっ。」
「どうしても、直接応援したくて。」
ミヤビは目を丸くする。
「そんな……。」
ユウキはコンビニの紙袋を差し出した。
「温かいお茶。」
「ありがとう。」
「終わったらゆっくり飲んで。」
「うん。」
少しだけ沈黙が流れる。
ユウキは優しく笑った。
「大丈夫。」
「ここまで頑張ってきたの、俺が一番知ってる。」
「だから自信を持って。」
ミヤビの肩から少し力が抜けた。
「ありがとう。」
「行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
試験終了。
夕方になり、ミヤビは駅前のベンチで温かいお茶を飲んでいた。
結果はまだ分からない。
それでも、不思議と後悔はなかった。
「全部出し切れた。」
そう思えたのは、朝のユウキの言葉があったからだった。
一週間後。
今度はユウキの番だった。
大型案件の最終プレゼン。
会社でも注目される大切な仕事だ。
朝、会社へ向かう途中でスマートフォンを見る。
ミヤビからメッセージが届いていた。
ミヤビ
「頑張って。」
「ユウキなら大丈夫。」
「終わったら美味しいご飯を食べようね♪」
その短いメッセージを読んだだけで、自然と笑顔になる。
「よし。」
ユウキはスマートフォンを胸ポケットへしまい、会社へ向かった。
午後。
プレゼンは無事に終わった。
部長が笑顔で近づいてくる。
「素晴らしかった。」
「ありがとうございます。」
「契約はほぼ決まりだ。」
ユウキは静かに息を吐いた。
肩の力が抜ける。
真っ先にスマートフォンを取り出した。
ユウキ
「終わった。」
すぐに返信が届く。
ミヤビ
「お疲れさま!」
「今日はいっぱい褒めてあげる!」
その一文に思わず吹き出してしまう。
その夜。
二人はお気に入りのレストランで待ち合わせをした。
「お疲れさま。」
「ミヤビも。」
乾杯をして、ようやくほっと一息つく。
「試験どうだった?」
「やれることは全部やった。」
「ユウキは?」
「プレゼン成功した。」
「よかった!」
ミヤビは自分のことのように喜んだ。
食事のあと、川沿いを歩く。
秋風が心地よい。
「前はさ。」
ユウキが静かに話し始める。
「仕事が忙しい時、一人で抱え込んでた。」
「うん。」
「でも今は違う。」
「ミヤビが応援してくれる。」
「それだけで頑張れる。」
ミヤビも少し照れながら笑う。
「私も。」
「試験会場でユウキの顔を見たら。」
「『一人じゃない』って思えた。」
二人は自然と立ち止まる。
「支えられてばかりだな。」
ユウキが言うと、
「違うよ。」
ミヤビは首を横に振る。
「お互い様。」
「一人で頑張るんじゃなくて。」
「二人で頑張る。」
その言葉に、ユウキはゆっくり頷いた。
「そうだね。」
駅へ向かう途中。
二人は手をつないで歩く。
以前よりも会える時間は少ない。
それでも、心の距離は誰よりも近かった。
嬉しいことも。
苦しいことも。
全部、一緒に分け合える。
それが恋人であり、人生を共に歩みたいと思える相手なのだと、二人は改めて実感していた。
次回予告 第二期 第十一話「未来への決意」
資格試験の合格通知が届き、ユウキの仕事も一段落する。穏やかな日常が戻る中、ユウキはあるジュエリーショップの前で足を止める。「まだ少し早いかもしれない。でも、いつかは――」。未来を見据え始めたユウキは、自分の心にある決意と向き合い始める。




