第二期 第九話 「すれ違いの理由」
九月。
夏の暑さも少しずつ和らぎ、朝夕には秋の気配が感じられるようになっていた。
ユウキは会社の会議室で、新しい営業プロジェクトの説明を受けていた。
「今回の案件は、来年度を左右する重要なプロジェクトです。」
部長の言葉に、会議室の空気が引き締まる。
「ユウキ課長、中心になって進めてもらいます。」
「承知しました。」
ユウキは力強く返事をした。
責任ある仕事を任されることは嬉しい。
しかし同時に、これから忙しくなることも覚悟していた。
一方、ミヤビにも新しい目標ができていた。
勤め先でキャリアアップにつながる資格試験を勧められたのだ。
「挑戦してみようかな。」
参考書を開きながら、小さくつぶやく。
仕事を続けながらの勉強は大変だ。
それでも、自分自身を成長させたいという気持ちは強かった。
その日の夜。
二人はいつものようにメッセージを送り合っていた。
ユウキ
「今日は会議続きで疲れた。」
ミヤビ
「お疲れさま。ちゃんとご飯食べてね。」
ユウキ
「ミヤビも勉強頑張って。」
ミヤビ
「ありがとう♪」
短いメッセージだった。
でも、お互いを気遣う気持ちは変わらない。
数週間後。
忙しさはさらに増していた。
ユウキは残業続き。
ミヤビは仕事のあとに資格学校へ通う毎日。
休日も、それぞれ仕事や勉強に時間を使うことが増えた。
以前は毎週会っていた二人も、気づけば二週間会えていなかった。
金曜日の夜。
ユウキはスマートフォンを開く。
ユウキ
「日曜日、少しだけ会える?」
しばらくして返信が届く。
ミヤビ
「ごめんね。その日は模擬試験なの。」
ユウキは少しだけ寂しさを感じた。
しかし、すぐに打ち直す。
ユウキ
「そっか。頑張って。」
その一方で、ミヤビもメッセージを見つめていた。
(本当は会いたい。)
でも、ここで勉強を休めば、自分で決めた目標を諦めることになる。
(ユウキも仕事を頑張ってる。)
(私も頑張らなきゃ。)
そう自分に言い聞かせた。
数日後。
仕事帰り。
偶然、会社近くの駅で二人は顔を合わせた。
「ユウキ。」
「ミヤビ。」
予想していなかった再会に、二人とも少し驚く。
「元気?」
「うん。」
「ユウキは?」
「何とか。」
笑顔ではある。
でも、どこか疲れた表情だった。
ミヤビも少しやつれたように見える。
二人は駅前のカフェへ入った。
「久しぶりだね。」
「本当に。」
コーヒーを飲みながら、お互いの近況を話す。
「勉強、大変?」
「うん。でも少しずつ慣れてきた。」
「ユウキは?」
「今月が山場かな。」
少し沈黙が流れる。
以前なら、この沈黙も心地よかった。
でも今日は違う。
お互いに話したいことがあるのに、うまく言葉が見つからなかった。
帰り際。
ミヤビが小さく口を開く。
「ねぇ。」
「うん?」
「最近、少し無理してない?」
ユウキは苦笑する。
「ミヤビもだろ?」
「私は大丈夫。」
「いや、大丈夫じゃない顔してる。」
二人とも、相手のことばかり心配していた。
「少し休もう?」
ミヤビが言う。
「勉強も仕事も大事だけど。」
「体を壊したら意味ないよ。」
ユウキは静かに頷く。
「そうだね。」
「ミヤビも無理しないで。」
「約束。」
「約束。」
二人は小さく指切りをした。
別れたあと。
ユウキは駅のホームで夜空を見上げる。
(会えない時間が増えても。)
(気持ちは変わらない。)
一方、電車に揺られるミヤビも、小さく微笑んでいた。
(頑張ろう。)
(また笑って会える日のために。)
会える時間は少なくなっても、お互いを思う気持ちは以前よりも深くなっていた。
だからこそ、この忙しい季節も乗り越えられると、二人は信じていた。
次回予告 第二期 第十話「支え合うということ」
資格試験当日を迎えるミヤビ。緊張する彼女のもとへ、仕事の合間を縫ってユウキが現れる。一方、ユウキの大切なプレゼンの日には、今度はミヤビが心を込めた応援を届ける。「一人で頑張る」のではなく、「二人で支え合う」という新しい関係を実感する物語。




