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第二期 第八話 「初めての記念日」

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八月。


 夏の夕暮れ。


 難波の街は、仕事帰りの人や観光客でいつものように賑わっていた。


 ユウキは腕時計を見ながら、小さく笑う。


「ちょうど一年前か。」


 今日は、ユウキとミヤビが初めて出会った日。


 アニソンバー「Sirius」で偶然隣り合い、同じ作品が好きだと分かった、あの日から一年が経っていた。


 店の前では、ミヤビが待っていた。


「お待たせ。」


「ううん、私も今来たところ。」


 二人は自然に笑い合う。


 この一年で、緊張しながら交わしていた挨拶も、今ではすっかり日常になっていた。


「入ろうか。」


「うん。」


 扉を開けると、店内には懐かしいアニメソングが流れていた。


 カウンターのマスターが二人を見るなり、にっこりと笑う。


「おっ、いらっしゃい。」


「今日は記念日なんです。」


 ミヤビが少し照れながら言う。


「一年前、この席で出会いました。」


「そうだったのか。」


 マスターは驚いたあと、嬉しそうに頷いた。


「それはめでたいな。」


「じゃあ今日は、二人が初めて話した時に流れていた曲を流そう。」


 しばらくして、店内にあの日と同じアニソンが流れ始めた。


 二人は顔を見合わせ、小さく笑う。


「懐かしいね。」


「うん。」


 料理を楽しみながら、自然と思い出話になる。


「最初、私すごく警戒してたよね。」


 ミヤビが笑う。


「分かったよ。」


 ユウキも苦笑する。


「でも、同じ作品が好きって分かった瞬間、空気が変わった。」


「俺もあんなに話が弾むとは思わなかった。」


「『オタクっ子集まれ』を作ろうって言い出したのもユウキだった。」


「あれは勢いだったな。」


 二人は笑い合う。


 あの一言がなければ、今ここにはいなかったかもしれない。


 食事を終えたあと、二人は店を出て夜風の中を歩いた。


 川沿いの遊歩道は、一年前と同じように静かだった。


「この一年、本当にいろんなことがあったね。」


 ミヤビがゆっくり言う。


「飲み会。」


「聖地巡礼。」


「映画。」


「料理。」


「夏祭り。」


「水族館。」


「クリスマス。」


「告白。」


 思い返せば、どれも大切な思い出だった。


「全部、昨日のことみたい。」


 ユウキが笑う。


「でも、一年分ちゃんと積み重なってる。」


 夜景を眺めながら、ユウキは足を止めた。


「ミヤビ。」


「うん?」


「約束したいことがある。」


 ミヤビは静かにユウキを見る。


「これからも。」


「毎年、この日を一緒に迎えよう。」


「出会ったことに感謝する日として。」


 ミヤビの目が優しく細くなる。


「うん。」


「約束。」


「来年も。」


「十年後も。」


「その先も。」


「一緒にここへ来たい。」


 ユウキは照れながら笑う。


「俺も。」


 ミヤビはバッグから小さな包みを取り出した。


「実はね。」


「記念日だから。」


「プレゼント。」


 ユウキが開けると、中には革製のカードケースが入っていた。


「仕事で使えるように。」


「ありがとう。」


「大切に使う。」


 ユウキも笑顔で小さな箱を差し出す。


「俺からも。」


「え?」


 中には、二人が初めて出会った日の日付が刻まれたキーホルダーが入っていた。


 裏面には、小さく文字が彫られている。


『運命は、あの日の隣の席から。』


 ミヤビは目を潤ませながら微笑んだ。


「こんなの……ずるい。」


「泣いちゃう。」


「喜んでもらえてよかった。」


 帰り道。


 二人は手をつなぎながら歩く。


 夏の夜風が心地よい。


「ねぇ、ユウキ。」


「うん?」


「一年前の私に教えてあげたい。」


「『隣に座った人が、大切な人になるよ』って。」


 ユウキは優しく笑う。


「一年前の俺も、信じないだろうな。」


「きっと。」


「『そんなアニメみたいなことあるわけない』って。」


 二人は顔を見合わせ、大笑いした。


 でも、その"アニメみたいな出会い"が、本当に二人の人生を変えた。


 偶然の一歩が、かけがえのない未来へとつながっていた。


 帰宅後。


 ユウキは新しいカードケースを机に置き、ミヤビとの写真を見つめる。


 ミヤビもキーホルダーをバッグにつけ、小さく微笑んだ。


 恋人になって初めて迎えた記念日。


 それは、過去を懐かしみながら、未来への約束を交わした一日になった。

次回予告 第二期 第九話「すれ違いの理由」


仕事が忙しくなるユウキと、新しい資格取得に挑戦し始めるミヤビ。お互いを応援したい気持ちは同じなのに、会える時間が少しずつ減ってしまう。「大切だからこそ無理をさせたくない」という想いが、思わぬすれ違いを生み始める。

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