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第一期 第二話 「オタクっ子集まれ、始動!」

挿絵(By みてみん)


土曜日の昼。


 営業先へ向かう必要も、会議資料を確認する必要もない休日。


 それでもユウキは朝九時には目を覚ましていた。


 テーブルの上にはスマートフォン。


 画面には昨日交換したばかりの連絡先が表示されている。


ミヤビ


 たった四文字の名前なのに、なぜか何度も画面を開いてしまう。


(連絡するって言ったのは俺だしな)


 少しだけ緊張しながらメッセージを送る。


おはようございます。昨日はありがとうございました。飲み会の日程を決めませんか?


 数分後。


 すぐに返信が届いた。


おはようございます! 私もちょうど考えてました。来週の土曜日なら大丈夫です♪


(返信早っ)


 自然と笑みがこぼれる。


 そこからはテンポよく話が進んだ。


 ユウキが男性五人。


 ミヤビが女性五人。


 合計十人。


 サークル名は昨夜決まった通り――


『オタクっ子集まれ』


 ミヤビはスタンプを送りながら、


名前、やっぱり好きです(笑)


 と返してきた。


 ユウキも思わず笑ってしまう。


 一週間後。


 大阪・難波。


 アニメ好きが集まる居酒屋の個室。


 開始十分前には、ユウキが店へ到着していた。


「課長なのに一番早いですね」


 声を掛けてきたのは大学時代からの友人、


 タクミだった。


 二十八歳。


 眼鏡を掛けたシステムエンジニアで、休日はゲームとアニメ三昧。


「遅刻するよりいいだろ」


「真面目ですねぇ」


「仕事柄な」


 二人で笑っていると、次々にメンバーが集まり始める。


 ユウキ側は、


 ・タクミ


 ・ケンジ(会社員)


 ・ソウタ(教師)


 ・リク(動画編集者)


 そしてユウキ。


 一方、ミヤビも四人の友人を連れてやってきた。


「こんにちは!」


 笑顔で入ってきたミヤビの後ろには、それぞれ雰囲気の違う女性たちが並んでいた。


「今日はありがとうございます!」


 その笑顔だけで場の空気が柔らかくなる。


 ユウキは少しだけ安心した。


「それじゃあ……」


 ユウキが立ち上がる。


「今日集まっていただきありがとうございます。」


 少し照れくさい。


「みんなアニメ好きという共通点があります。」


「せっかくなので、好きな作品を語ったり、一緒にイベントへ行ける仲間になれたら嬉しいです。」


「乾杯!」


「乾杯ー!」


 十個のグラスがぶつかる。


 その瞬間。


 個室中に笑い声が広がった。


「えっ、その作品好きなんですか!?」


「劇場版で泣きました!」


「分かる!」


「推しは誰?」


「私は主人公派です!」


「いやヒロインでしょ!」


 話題は尽きない。


 年代も職業も違う。


 それでも好きなものが同じというだけで、一気に距離が縮まっていく。


 ユウキはその光景を見て、嬉しくなった。


(やってよかったな)


 ふと視線を向けると、


 ミヤビもこちらを見ていた。


 目が合う。


 すると彼女は小さく微笑み、グラスを軽く掲げる。


 ユウキも同じようにグラスを上げた。


 それだけで言葉はいらなかった。


 二次会は近くのカラオケ。


「アニソン縛りね!」


 誰かがそう言うと、全員一致で賛成だった。


 懐かしい曲。


 最新のオープニング。


 熱いバトルソング。


 しっとりしたエンディング。


 みんなで歌えば自然と大合唱になる。


 ミヤビが歌ったバラードは、透き通るような歌声だった。


「すごく上手ですね」


 ユウキが拍手すると、


 ミヤビは照れ笑いを浮かべる。


「家で一人カラオケしてるので……」


「努力の成果ですね」


「ありがとうございます」


 嬉しそうに笑うその表情は、とても自然だった。


 帰り道。


 駅へ向かう途中。


 他のメンバーはそれぞれ別方向へ帰っていく。


 気が付けば、


 ユウキとミヤビの二人だけになっていた。


「今日は本当に楽しかったですね。」


「ええ。」


「みんな優しい人ばかりでした。」


「また集まりたいですね。」


「もちろん。」


 少しだけ沈黙が流れる。


 するとミヤビが言った。


「実は……」


「?」


「こういうオフ会って初めてだったんです。」


「そうなんですか?」


「ネットで知り合った人と会うのが少し怖くて。」


「でも、ユウキさんなら安心できる気がしました。」


 その言葉にユウキは少し驚く。


「ありがとうございます。」


「こちらこそです。」


 駅前まで歩くと、


 ミヤビは軽く頭を下げた。


「また来月も集まりましょう。」


「はい。」


「今度はもっと人数が増えるかもしれませんね。」


「それも楽しそうです。」


 二人は笑い合う。


 別れ際。


 ユウキは改札へ向かうミヤビの後ろ姿を見送った。


(安心できる……か。)


 その一言が、不思議なくらい心に残っていた。


 まだ恋ではない。


 けれど、確かに二人の距離は昨日より少しだけ近づいていた。

次回予告 第三話「二人だけの聖地巡礼」


サークル活動が軌道に乗り始めたある日、ミヤビからユウキへ「今度、アニメの舞台になった場所へ一緒に行きませんか?」とメッセージが届く。初めての二人きりのお出かけに戸惑いながらも、共通の「好き」を通じて互いの素顔を知っていく。恋愛感情とはまだ呼べない、小さなときめきが芽生え始める。

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