第二期 第四話 「初めての両親への報告」
四月。
大阪の街は桜が満開を迎えていた。
休日の午後。
ユウキとミヤビは難波公園のベンチに並んで座り、桜並木を眺めていた。
「もう春だね。」
ユウキが穏やかに言う。
「一年って早いね。」
ミヤビも微笑む。
去年の今頃は、まだお互いの存在すら知らなかった。
それが今では、恋人として隣に座っている。
その変化が不思議で、そして嬉しかった。
しばらく桜を眺めたあと、ミヤビが少し真剣な表情になる。
「ユウキ。」
「うん?」
「話したいことがあるの。」
ユウキも姿勢を正した。
「どうした?」
「私ね……。」
一度深呼吸をする。
「お父さんとお母さんに、ユウキのことを話したの。」
「……え?」
「付き合っている人がいるって。」
ユウキは少し驚いたが、すぐに優しく笑った。
「そうだったんだ。」
「うん。」
「二人とも、すごく喜んでくれた。」
ミヤビは照れくさそうに続ける。
「『どんな人なの?』って何度も聞かれて。」
「何て答えたの?」
「優しくて、真面目で、仕事も頑張っていて、一緒にいると安心できる人だよって。」
ユウキは照れたように頭をかく。
「そんなに褒められると恥ずかしいな。」
「本当のことだから。」
少し間を置いて、ミヤビは続けた。
「それでね。」
「うん。」
「今度、実家に遊びに来ない?って言われたの。」
ユウキは驚いて目を見開く。
「ご両親に?」
「うん。」
「もちろん、無理にとは言わない。」
「でも、一度会ってほしいなって。」
ユウキは少し考えたあと、静かに頷いた。
「ぜひ会いたい。」
その返事に、ミヤビはほっとしたように笑った。
その日の夜。
帰宅したユウキは、自分の両親へ電話をかけた。
「もしもし、母さん?」
『珍しいじゃない。どうしたの?』
「実は……。」
少し照れながら言葉を続ける。
「付き合っている人がいるんだ。」
電話の向こうが一瞬静かになる。
『……本当に?』
「うん。」
『お父さん! ちょっと聞いて!』
受話器の向こうから慌ただしい声が聞こえてくる。
『相手はどんな人なんだ?』
父親の声が聞こえた。
「アニメ好きで、優しくて、笑顔が素敵な人。」
『それは良かった。』
『今度連れてきなさい。』
『家族みんなで歓迎するから。』
ユウキは思わず笑った。
「ありがとう。」
一週間後。
ミヤビの実家。
大阪府内の静かな住宅街にある一軒家だった。
インターホンを押すユウキの手には、少し汗がにじんでいる。
「緊張してる?」
ミヤビが小声で聞く。
「営業より緊張する。」
「ふふっ。」
その笑顔で少し肩の力が抜けた。
玄関の扉が開く。
「いらっしゃい。」
優しそうな女性が迎えてくれた。
「母です。」
「初めまして。」
ユウキは深く頭を下げる。
「ユウキと申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます。」
続いて、穏やかな表情の父親も現れた。
「遠いところ、ありがとう。」
「こちらこそ。」
リビングでは、お茶と手作りのお菓子が並んでいた。
最初は少し緊張していた空気も、話し始めると少しずつ和らいでいく。
「営業のお仕事なんですね。」
「はい。」
「大変でしょう?」
「大変ですが、やりがいがあります。」
「ミヤビからよく聞いています。」
その言葉に、ユウキは少し驚く。
「え?」
「仕事を一生懸命頑張る人なんだって。」
ミヤビは恥ずかしそうに顔を赤くした。
「お母さん……。」
家族全員が笑う。
昼食をごちそうになり、帰る時間になった。
玄関でミヤビの父が言った。
「ユウキ君。」
「はい。」
「娘をよろしくお願いします。」
その一言には、大切な娘を思う父親の気持ちが込められていた。
ユウキは真っ直ぐ目を見て答える。
「はい。」
「これからも、ミヤビを大切にします。」
ミヤビはその言葉を聞き、少し目を潤ませた。
帰り道。
二人は駅までゆっくり歩いていた。
「今日はありがとう。」
ミヤビが言う。
「こちらこそ。」
「最初は緊張したけど、とても温かいご家族だった。」
「よかった。」
「今度は、俺の実家にも来てほしい。」
ミヤビは少し驚いたあと、嬉しそうに笑う。
「もちろん。」
そう答える声は、少し弾んでいた。
二人は手をつなぎ、桜の花びらが舞う道をゆっくり歩いていく。
恋人としてだけでなく、お互いの家族とも少しずつつながり始めた二人。
未来へ向かう道は、春の桜のように穏やかに続いていた。
次回予告 第二期 第五話「未来を語る夜」
ミヤビの両親への挨拶を終えたユウキ。二人は「将来どんな家庭を築きたいか」を初めて真剣に語り合う。子どものこと、仕事のこと、暮らしたい家のこと。少し照れながらも、同じ未来を思い描く二人の距離はさらに縮まっていく。




