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第二期 第三話 「初めてのホワイトデー」

挿絵(By みてみん)


三月。


 少しずつ春の気配が感じられる大阪。


 会社の休憩室でコーヒーを飲んでいたユウキは、スマートフォンに保存してある一枚の写真を見つめていた。


 それは、バレンタインの日にミヤビからもらった手作りチョコレートの写真だった。


「……そろそろホワイトデーか。」


 今年は今までとは違う。


 恋人になって初めて迎えるホワイトデー。


 だからこそ、中途半端なお返しにはしたくなかった。


 その日の夜。


 サークル「オタクっ子集まれ」の定例会。


 食事を楽しみながら、ユウキはタクミたちへ相談していた。


「ホワイトデーのお返しか。」


 タクミは腕を組む。


「アクセサリー?」


 リクが言う。


「花束もいいんじゃない?」


 ユイも提案する。


 しかし、ユウキは首を横に振った。


「もちろんプレゼントも渡したい。」


「でも……。」


「物だけじゃなくて、思い出も贈りたいんだ。」


 その言葉に、みんなが笑顔になる。


「それなら旅行だな。」


 タクミが言った。


「旅行?」


「一泊二日くらいで温泉とか。」


 その一言で、ユウキの中にひらめきが生まれた。


(それだ。)


 一週間後。


 ホワイトデー当日。


 難波駅で待ち合わせをしたミヤビは、小さく首をかしげた。


「今日はどこへ行くんですか?」


「着いてからのお楽しみ。」


「秘密なんですね。」


「うん。」


 ユウキは少し照れながら笑った。


 二人が乗った電車は、大阪を離れ、自然豊かな温泉街へ向かっていた。


 窓の外には山々が広がる。


「旅行なんて久しぶりです。」


 ミヤビが嬉しそうに景色を眺める。


「俺も。」


「二人で来られて嬉しい。」


 その一言に、ミヤビの頬が少し赤く染まった。


 温泉街へ到着すると、石畳の道には昔ながらの町並みが続いていた。


「雰囲気が素敵。」


「ゆっくり歩こう。」


 二人は食べ歩きを楽しみながら温泉街を散策する。


 温泉まんじゅう。


 コロッケ。


 地元のジェラート。


 どれも美味しく、自然と笑顔になる。


「ユウキ。」


 ミヤビが初めて名前を呼び捨てにした。


「……え?」


「あっ、ごめん!」


「違う。」


 ユウキは少し照れながら笑う。


「嬉しかった。」


 ミヤビも照れ笑いを浮かべる。


「じゃあ……これから二人きりの時だけ。」


「うん。」


「私も敬語をやめるね。」


 少しずつ縮まっていく距離が心地よかった。


 夕方。


 二人は旅館へチェックインした。


 部屋の窓からは静かな山並みが見える。


「落ち着くね。」


「うん。」


 夕食まで少し時間があったため、それぞれ温泉へ向かった。


 湯上がりにロビーで待ち合わせると、ミヤビが柔らかく微笑んだ。


「気持ちよかった。」


「疲れが全部取れたよ。」


 夕食は地元の食材を使った会席料理だった。


「美味しい。」


「幸せ。」


 二人はゆっくりと食事を楽しむ。


 仕事の話。


 アニメの話。


 サークルのみんなの話。


 そして、将来の話。


「こうして旅行できるのって嬉しいね。」


 ミヤビが言う。


「これからも毎年行きたい。」


「約束。」


「約束。」


 二人は笑い合った。


 食後。


 旅館の庭を散歩する。


 夜空には満天の星が広がっていた。


「綺麗……。」


 ミヤビが空を見上げる。


 ユウキはポケットから小さな箱を取り出した。


「ホワイトデーのお返し。」


「え?」


「開けてみて。」


 ミヤビがゆっくり箱を開く。


 中には、小さな桜の花をモチーフにしたシルバーのネックレスが入っていた。


「すごく綺麗……。」


「春になっても身につけられるように選んだ。」


 ミヤビは目を潤ませながら笑う。


「ありがとう。」


「大切にする。」


「つけてもいい?」


「もちろん。」


 ミヤビがネックレスをつけようとすると、留め具がうまく留まらない。


「手伝うよ。」


 ユウキは後ろへ回り、慎重に留め具を留めた。


「はい。」


「ありがとう。」


 少しだけ近づいた距離に、お互い照れ笑いを浮かべる。


 翌朝。


 旅館をチェックアウトし、帰りの駅へ向かう。


「今回の旅行、本当に嬉しかった。」


 ミヤビが言う。


「俺も。」


「プレゼントももちろん嬉しい。」


「でも、一番のプレゼントは。」


 ユウキが首をかしげる。


「一緒に過ごした時間。」


 その言葉に、ユウキは優しく笑った。


「俺も同じ気持ちだよ。」


 二人は手をつなぎながら、春の風が吹く道をゆっくり歩いていった。


 ホワイトデーの旅行は、二人にとって忘れられない思い出となり、恋人としての絆をさらに深めていくのだった。

次回予告 第二期 第四話「初めての両親への報告」


交際から数か月が経ち、ミヤビは「そろそろ両親にユウキのことを話したい」と決意する。一方のユウキも、自分の家族へミヤビを紹介することを考え始める。恋人から人生のパートナーへ――二人の関係は、新たな一歩を踏み出そうとしていた。

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