第二期 第一話「恋人になって初めてのデート」
新年会で交際を報告してから、一週間。
ユウキのスマートフォンには、一つのメッセージが表示されていた。
ミヤビ
「今度の日曜日、恋人として初めてのデートをしませんか?」
その一文を見た瞬間、ユウキは思わず笑ってしまった。
(恋人として初めて、か。)
たった一言違うだけなのに、胸の高鳴りは今までとはまるで違う。
すぐに返信する。
ユウキ
「もちろん。楽しみにしてる。」
数秒後、嬉しそうなスタンプが返ってきた。
日曜日。
待ち合わせは難波駅前。
ユウキは三十分も早く到着していた。
「……早く来すぎたな。」
営業では時間厳守が当たり前。
だが今日は、それ以上に落ち着かなかった。
時計を見ていると、遠くから小さく手を振る姿が見える。
「ユウキさん!」
ミヤビだった。
アイボリーのコートに、薄いラベンダー色のマフラー。
柔らかな笑顔は、以前と変わらない。
けれど今は、「恋人」として隣に立っている。
「お待たせしました。」
「いや、俺が早く来すぎただけだから。」
「ふふっ。」
ミヤビは優しく笑った。
「なんだか照れますね。」
「そうですね。」
二人とも少し照れくさそうだった。
最初に向かったのは、大型ショッピングモール。
特に買い物の予定があるわけではない。
ただ、一緒に歩くだけで楽しい。
「このお店、新しくできたんですね。」
「雑貨屋さんみたいです。」
二人で店内を見て回る。
食器や文房具、かわいい小物。
「このマグカップ、かわいい。」
「アニメを見る時に使えそうですね。」
「それ、絶対買っちゃいます。」
何気ない会話が心地よかった。
昼食はイタリアンレストラン。
料理が運ばれてくるまでの間、ミヤビが少し恥ずかしそうに言った。
「ユウキさん。」
「はい?」
「一つお願いがあるんです。」
「何ですか?」
「二人きりの時だけでいいので……。」
一度深呼吸してから続ける。
「敬語、少し減らしませんか?」
「え?」
「恋人なのに、少し距離がある気がして。」
ユウキは少し照れながら笑う。
「そうだね。」
言い直す。
「……そうだね、ミヤビ。」
名前を呼び捨てにする勇気はまだ出ない。
それでも敬語が少し減っただけで、お互い顔が赤くなる。
「なんか恥ずかしいね。」
「うん。」
二人は顔を見合わせて笑った。
食後、映画館の前を通る。
「そういえば。」
ミヤビが笑う。
「ここで二人だけになったこと、ありましたよね。」
「あったね。」
「まだ付き合う前。」
「懐かしいな。」
あの頃は、お互いの気持ちに気づきながらも言葉にできなかった。
今は違う。
「恋人になれて、本当に良かった。」
ユウキが自然に口にすると、ミヤビは少し目を丸くした。
そして、優しく微笑む。
「私も。」
夕方。
川沿いを歩いていると、冷たい風が吹いた。
「寒い?」
ユウキが尋ねる。
「少しだけ。」
ユウキはクリスマスにもらったネイビーのマフラーを少し整えながら言う。
「これ、本当に暖かいよ。」
「よかった。」
「毎日使ってる。」
「本当?」
「うん。」
その一言だけで、ミヤビは嬉しそうに笑った。
歩いている途中、横断歩道で人の流れが一気に動き出す。
はぐれないように、ユウキは少しだけ迷ってから言った。
「ミヤビ。」
「うん?」
「手……つないでもいい?」
ミヤビは一瞬驚き、それからゆっくり頷いた。
「もちろん。」
二人はそっと手をつなぐ。
指先から伝わる温もり。
付き合う前に触れた手とは違う。
恋人としてつなぐ初めての手。
二人とも少し照れていたが、不思議と離したいとは思わなかった。
「温かいね。」
ミヤビが小さくつぶやく。
「うん。」
ユウキも優しく握り返した。
改札前。
「今日はありがとう。」
「こちらこそ。」
「恋人として初めてのデート。」
「最高だった。」
ユウキが笑うと、ミヤビも笑顔になる。
「これからも、たくさん思い出を作ろうね。」
「もちろん。」
名残惜しそうに手を離し、お互い手を振る。
その帰り道。
ユウキは自然と頬が緩んでいることに気づいた。
恋人になっても、ミヤビといる時間は変わらず心地よい。
いや、以前よりもっと大切なものになっていた。
一方、電車に揺られるミヤビも、つないだ手をそっと見つめて微笑む。
「今日のこと、一生忘れない。」
恋人として歩き始めた二人の新しい物語は、ゆっくりと、幸せに動き始めていた。
次回予告 第二期 第二話「初めてのバレンタイン」
二月。恋人になって初めて迎えるバレンタインデー。ミヤビは何日も練習を重ね、本命チョコ作りに挑戦する。一方のユウキも、ホワイトデーに向けて密かにある計画を立て始める。恋人だからこその甘くて少し照れくさい一日が始まる。




