表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/64

第一期 最終話(第十三話) 「君に伝えたい、この気持ち」

挿絵(By みてみん)


一月。


 新しい年を迎えた大阪。


 難波の神社には、初詣に訪れる人々で賑わっていた。


 ユウキは境内の入口で、落ち着かない様子で腕時計を見ていた。


(……緊張する。)


 営業課長として何百人もの前でプレゼンをしてきた。


 大口契約の交渉だって成功させてきた。


 それなのに。


 今日ほど緊張した日はなかった。


「お待たせしました。」


 聞き慣れた優しい声。


 振り返ると、ミヤビが笑顔で立っていた。


 白いコートに淡いピンクのマフラー。


 クリスマスにプレゼントしたブックマーカーと同じ星形のチャームがバッグに揺れている。


「明けましておめでとうございます。」


「明けましておめでとうございます。」


 二人は自然に笑い合った。


 参拝を終え、おみくじを引く。


「私は……吉でした。」


 ミヤビが嬉しそうに見せる。


「俺は大吉です。」


「すごい!」


「今年は良いことがあるかもしれません。」


「きっとあります。」


 二人は笑いながら屋台で甘酒を買い、境内をゆっくり歩く。


 昨年の思い出を振り返りながら、穏やかな時間が流れていた。


 夕方。


 二人は自然と、初めて出会ったアニソンバー『Sirius』へ足を運んだ。


 店内には懐かしいアニメソングが流れている。


「覚えてますか?」


 ミヤビがカウンター席を見つめる。


「もちろん。」


「あの日、ここで初めて話しましたね。」


「勇気を出して声を掛けました。」


「私、最初は少し警戒してたんです。」


「ですよね。」


「でも。」


 ミヤビは笑う。


「話してみたら、同じ作品が好きで。」


「そこから全部始まりました。」


 ユウキは静かに頷いた。


 店を出ると、冬の夜風が頬をなでる。


 街にはまだ正月の賑わいが残っていた。


 歩道橋の上。


 難波の夜景が見渡せる場所で、ユウキは足を止めた。


「ミヤビさん。」


「はい。」


 心臓が速くなる。


 深呼吸を一つ。


 逃げたくなる気持ちを押さえながら、まっすぐミヤビを見つめた。


「聞いてください。」


「はい。」


「去年の俺は。」


「仕事だけの毎日でした。」


「休日は一人でアニメを見て。」


「それでも十分幸せだと思っていました。」


 少し笑う。


「でも。」


「ミヤビさんと出会って。」


「毎日連絡を取り合って。」


「一緒に映画を観て。」


「料理をして。」


「花火を見て。」


「水族館へ行って。」


「気付いたら。」


「仕事が終わるたびに。」


「一番会いたい人になっていました。」


 ミヤビの瞳が少し潤む。


「俺は。」


「ミヤビさんの笑顔が好きです。」


「一緒にアニメを語っている時間が好きです。」


「優しいところも。」


「少し天然なところも。」


「全部好きです。」


 一歩前へ進む。


「ミヤビさん。」


「俺と。」


「付き合ってください。」


 夜風だけが静かに吹いていた。


 ミヤビは何も言わず、目に涙を浮かべていた。


 少しだけ肩が震えている。


「……ずるいです。」


「え?」


「私も。」


「同じことを言おうと思ってたんです。」


 涙を拭きながら笑う。


「私も。」


「ユウキさんが好きです。」


「初めて会った日から少しずつ。」


「気付いたら。」


「ユウキさんのことばかり考えるようになっていました。」


 一歩、ユウキへ近づく。


「私でよければ。」


「よろしくお願いします。」


「恋人になってください。」


「ありがとう。」


 ユウキは心から笑った。


 ミヤビも涙を浮かべながら笑う。


 二人は自然に手を伸ばす。


 そっと手を重ねる。


 指先から伝わる温もり。


 その温もりは、これまで感じたどんな幸せよりも温かかった。


「これからよろしく。」


「はい。」


「よろしくお願いします。」


 二人は見つめ合い、笑い合う。


 周囲では冬のイルミネーションが静かに輝いていた。


 数日後。


 サークル「オタクっ子集まれ」の新年会。


「みんなに報告があります。」


 ユウキが立ち上がる。


「俺と。」


「ミヤビさんは。」


「お付き合いすることになりました。」


 一瞬の静寂。


 そして。


「おおおおーーー!!」


「やっとか!!」


「遅いよ!」


「絶対そうなると思ってた!」


 拍手と笑い声が店中に響く。


 タクミは大笑いしながら言う。


「一年待った甲斐があったな!」


 ミヤビは恥ずかしそうに笑い、ユウキも照れくさそうに頭をかいた。


 こうして、二人は恋人になった。


 けれど、これはゴールではない。


 ここから始まる。


 一緒に笑い。


 一緒に悩み。


 一緒に未来を歩いていく、本当の物語が。


第一期 完


「一人で楽しんでいたアニメは、君と見ることで、もっと好きになった。」

第二期予告「恋人になったその先へ」


恋人同士になったユウキとミヤビ。初めてのデート、初めて迎えるバレンタイン、互いの家族への紹介、少しずつ増えていく幸せな思い出。しかし、恋人になったからこそ訪れる新たな悩みや試練も待ち受けている。


笑って、支え合って、ときにはすれ違いながらも、二人は「人生のパートナー」へと近づいていく。


第二期「恋人編」、開幕。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ