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第一期 第十二話 「クリスマスイブの約束」

挿絵(By みてみん)


十二月二十四日。


 大阪・難波の街は、色とりどりのイルミネーションに包まれていた。


 ビルの壁には光のツリー。


 公園には大きなクリスマスツリー。


 どこからか流れるクリスマスソング。


 街を歩く恋人たちの笑顔が、冬の寒ささえ温かく感じさせていた。


 そんな中、ユウキは待ち合わせ場所へ向かっていた。


 今日はサークル「オタクっ子集まれ」のクリスマスパーティーの日だった。


 会場となったレストランでは、すでにメンバーが集まっていた。


「メリークリスマス!」


「乾杯!」


 シャンパングラスではなく、ソフトドリンクやジュースで乾杯する。


 いつものようにアニメの話で盛り上がり、笑い声が絶えない。


「来年の冬アニメ、期待作多いよね!」


「劇場版も楽しみ!」


「みんなで観に行こう!」


 ユウキも自然と笑っていた。


 数か月前までは、一人でアニメを楽しんでいた自分が、今ではこんな仲間たちに囲まれている。


 その中心には、いつもミヤビがいた。


 パーティーの後半。


 恒例になったプレゼント交換が始まる。


「せーの!」


 音楽が流れ、小さな袋が順番に回っていく。


 音楽が止まり、それぞれが手元のプレゼントを開けた。


「おっ!」


 ユウキが受け取ったのは、アニメの名台詞がデザインされたマグカップだった。


「課長、それ俺が選びました!」


 タクミが笑う。


「ありがとう。」


 会場はまた笑いに包まれた。


 パーティーが終わり、みんなが帰り支度を始める。


「また来年!」


「良いお年を!」


 一人、また一人と駅へ向かっていく。


 気づけば、残ったのはユウキとミヤビだけだった。


 レストランを出ると、冷たい冬の空気が頬をなでる。


「イルミネーション、少し見ていきませんか?」


 ユウキが尋ねる。


「はい。」


 二人はゆっくりと歩き始めた。


 川沿いの遊歩道。


 木々には無数のLEDが灯り、幻想的な景色が広がっている。


「綺麗ですね。」


「そうですね。」


 二人は並んで歩く。


 言葉は少ない。


 それでも、不思議と気まずくはなかった。


 大きなクリスマスツリーの前で足を止める。


 ツリーの光がミヤビの横顔を優しく照らしていた。


 ユウキは静かに口を開く。


「ミヤビさん。」


「はい。」


「少しだけ、話したいことがあります。」


 ミヤビは真っ直ぐユウキを見る。


「実は……。」


 ユウキは一度深呼吸をした。


「この一年、本当に楽しかったです。」


「私もです。」


「仕事だけだった毎日が変わりました。」


「アニメを語れる仲間ができて。」


「笑うことが増えて。」


「休日が楽しみになって。」


 そして。


「その全部に、ミヤビさんがいました。」


 ミヤビの瞳が少し潤む。


 しかしユウキは、そこで言葉を止めた。


 少しだけ笑う。


「……でも。」


「今日じゃない。」


「え?」


「ちゃんと気持ちを伝えるなら、中途半端にはしたくないんです。」


 ミヤビは少し驚いたあと、優しく笑った。


「ユウキさんらしいですね。」


「だから。」


 ユウキはポケットから小さな箱を取り出した。


「これは。」


「クリスマスプレゼントです。」


 ミヤビがゆっくり開ける。


 中には、小さな星をモチーフにしたシルバーのブックマーカーが入っていた。


 本好きでもあるミヤビのために選んだものだった。


「きれい……。」


「いつも本を読んでるって言ってましたよね。」


「覚えててくれたんですか。」


「もちろん。」


 ミヤビは大切そうに胸の前で箱を抱えた。


「ありがとうございます。」


 しばらくイルミネーションを眺めたあと、ミヤビも小さな紙袋を差し出した。


「私からも。」


「え?」


「メリークリスマス。」


 中には、手編みのネイビーのマフラーが入っていた。


「編んだんですか?」


「少しずつ。」


「仕事のあとに。」


 ユウキは驚きながらマフラーを手に取る。


 温かさだけではない。


 時間をかけて作ってくれた気持ちが伝わってくる。


「ありがとう。」


「似合うといいな。」


「大切にします。」


 帰り道。


 駅へ向かう途中。


「ユウキさん。」


「はい。」


「来年も、一緒にいろんな場所へ行きたいです。」


「もちろん。」


「約束ですよ?」


「約束です。」


 二人は笑い合った。


 その笑顔は、初めてアニソンバーで出会った頃とは比べものにならないほど自然だった。


 帰宅したユウキは、首に巻いたマフラーを鏡で見つめる。


(もう決めよう。)


 来年最初のデートで。


 自分の気持ちを伝える。


 そう心に決めた。


 一方、ミヤビもブックマーカーをお気に入りの小説へ挟み、そっとページを閉じる。


「来年は……。」


 頬を少し赤く染めながら微笑む。


「きっと。」


 その願いは、ユウキと同じだった。


 恋人になるまで、あと少し。


 冬のイルミネーションは、二人の未来を祝福するように静かに輝いていた。

次回予告 第一期最終話「君に伝えたい、この気持ち」


新しい年を迎えたユウキとミヤビ。初詣の帰り、二人は初めて出会ったアニソンバーを訪れる。そこでユウキは、この一年間胸の中で育て続けてきた想いを、ついにミヤビへ伝えることを決意する。そしてミヤビもまた、自分の答えを胸に、ユウキの言葉を待っていた。二人の物語が、大きく動き出す第一期最終話。

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