第98話:対空砲付きゴーレム
最前線を守るたきびだが、飛行系の魔物の襲来の対応策を考えていたなかった。
そんな中、レベルアップして新たなスキルを獲得し、光明を見出す。
そのスキルはリム・アームズ。
それは、以前レベルダウンした時に手放したスキルだった。
「アカシャ!今前線で壁になっているゴーレム達の肩から、それぞれ巨大な腕を二本、【リム・アームズ】で前方上空に向けて生やしてくれ!中は空洞の筒状にして」
『了解しました』
ズズズズズッ……!!
土煙を上げる最前線。
約千体のゴーレム達の肩から、巨大な土の腕が一斉に二本ずつ伸びていく。
斜め上に伸びるそれは、まるで飛行系の魔物を捕まえるようにも見える。
見た目は異様を通り越して少し不気味だが、今はそんな事を気にしている余裕はない。
「よし。次はその砲身の中にエア・ゴーレムを生成して、スケーリングで限界まで圧縮してくれ」
『圧縮済みです』
「OK!砲身内ギリギリで丸まったマッド・ゴーレムを錬成して弾にして!」
『完了。ですが、このままでは圧縮した空気が発射時に漏れ出し、威力が著しく低下する可能性があります』
「ああ、やっぱり空気が抜けちゃうか。砲身と弾の間に隙間ができるとは思ってたけど……」
前世の知識をフル回転させる。
どうすれば空気の漏れを防ぎ、威力をロスなく伝えられるか。
「……そうだ。エア・ゴーレムをタクティカル・シェルで纏わせて、サボットの代わりにしよう!」
『……なるほど。それなら砲身の内径に合わせやすいですね。圧縮した空気の爆発的なエネルギーを100%弾丸に届けられます』
「ナイスアイデアだろ!」
アカシャに認められるのは嬉しいな!
『完了しました。簡易的ではありますが、空気圧を利用したキャノン砲の完成です』
脳内に展開された三次元の設計図に、ピタリとピースがはまった感覚がする。
これで上空の敵を迎撃する準備は整った。
「アカシャ、魔物が飛んでいる高度はどれくらいだ?」
『おおよそ50メートルから100メートルほどと推測されます』
「奴らを確実に撃ち落とすのに、どれぐらいの空気圧縮が必要だ?」
『弾丸をマスターの拳ほどの大きさと仮定し、対象までの距離を計算。約100気圧の圧力が必要と考えられます』
100気圧…って想像がつかないな。
前世の車のタイヤがだいたい2〜3気圧程度だったはず。
「それ、どれぐらいの威力になるんだ?」
『弾丸はほぼ音速に達します。おそらく、命中した通常の飛行魔物は衝撃波で内部から破裂する威力です』
「えっ!?貫通して風穴が開くんじゃなくて?」
『はい。着弾時の運動エネルギーの衝撃で、水風船のように破裂します』
「やばいな、それ……。ちなみに、これを200気圧まで上げたらどうなる?」
『推測ではありますが、ドラゴンの強固な鱗であってもかなりのダメージを与えられるかと』
「マジか!」
テンションが跳ね上がった俺に対し、アカシャの声は冷静だった。
『ただし、200気圧での発射と同時に強烈な衝撃波が発生し、周囲の味方や地形に被害が出る可能性があります。また、ゴーレムの砲身自体も摩擦熱と圧力に耐えきれず、撃った瞬間に自壊する確率が高まります』
「……それは困るな。よし、100気圧で行こう!」
方針は決まった。
後は運用方法だ。
地上戦をしながら二千門の対空砲を制御するのは、正直厳しい。
敵の動きを予測し、エイムを合わせ、装填し、発射する。
この果てしないマルチタスクをこなすには…うん。やっぱりアカシャしかいないな。
「アカシャ。攻撃対象のロックオン、弾の装填、発射から再装填までの全動作を任せてもいいか?」
『かしこまりました。マスターのリソースを限界ギリギリまで使用しますが、よろしいですか?』
「……お手柔らかに頼むぜ」
額にじわりと嫌な汗をかく。
だが、なんとか迎撃の形は整った。
「来やがれ!」
不気味な風切り音が、上空から急速に近づいてくる。
土煙を切り裂いて現れたのは、空を埋め尽くすほどの黒い編隊だった。
『ブラッド・ストリクス、アーマード・ヴェスパ、スカイ・マンタ、ウインド・ドレイク等が多数!さらに上空にワイバーンを数体確認!』
ワイバーン以外、全然知らない魔物ばっかりだな!
『射程に入りました。迎撃を開始します』
「一番強いやつらから優先的に倒してくれ!」
『了解しました』
飛行する魔物たちが、地上のゴーレム達を目掛けて一斉に急降下してくる。
地上からはハイ・オーク達の突撃、上空からは飛行魔物の急降下。
完全に統率された、恐るべき立体交差のダブルアタックだ。
だが。
バババババァァァァァンッッ!!!
空気が張り裂けるような甲高い破裂音が、戦場のあちこちで連続して鳴り響いた。
千体のゴーレムの両肩から、音速の土弾が次々と撃ち出される。
圧縮空気が解放された瞬間の白煙が、砲口からリング状に広がった。
「ギギャァァッ!」
「ピィィィィッ!」
空中で着弾の衝撃を受けた魔物たちから、叫び声が上がる。
アカシャの予測通り、次々と内側から風船のように破裂していった。
血肉の雨が、空から降りそそぐ。
地上戦も、ゴーレムが格闘を続け戦線を維持していた。
しかし、嬉しさの反面、俺の負荷も想像以上だった。
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次回、第99話は【スタンピードの最強個体】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。




