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ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
スタンピード編

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第92話:激突 その2

高速回転しながら、空気を切り裂いて飛んでいく巨斧。


魔力を纏ったそれは、想像を絶する切れ味を見せた。


ラーヴァ・トードの巨体を、そこに存在すらしていないように、スッとすり抜けたのだ。


その後方にいたオークやコボルトたちの群れも、同様にすり抜けていく。


そして、ブーメランのように見事な弧を描いて旋回し、再びガボンの右手へと収まった。


直後——


ドスン、ドスンと奇妙な音が連続して響く。


ラーヴァ・トードの巨大な頭部が、胴体から滑り落ちて地面に転がったのだ。


同様に、斧の通過線上にいた魔物たちの首や胴体が、次々とズレ落ち、血の雨が降り注ぐ。


「なっ……!?」


その光景を見て、ドーザは目を見開いた。


ラーヴァ・トードは死を悟ると自爆すると聞いた。


ならば、悟らせる前に殺し切ればいい。


ドーザの脳裏にあったその推論は、乱戦においては非現実的な『理想』に過ぎないはずだった。


だが、ガボンが放った力任せの投擲と魔法の変則的な一撃。


それは、その理想が実現可能であることを証明した。


見事だ……!


ドーザは一瞬の感嘆を即座に号令へと昇華させた。


「恐れるな!今見たように、自爆の隙を与えずに即死させることは可能だ!狙うは死角からの首への一撃だ!」


「おおっ!!」


歴戦の冒険者たちであれば、あの戦斧の軌道から、攻略の糸口を掴める者は少なくないはず。


湧き上がる勇ましい声を背に受けながら、自らも迫り来る魔物の波へと身を投じた。


「けっ。ちまちまやってろってんだ」


ガボンはドーザの言葉を鼻で笑うと、再び単騎で魔物の群れの奥へと突き進んでいく。


「待て!ガボン殿!それ以上は前線を上げ過ぎだ!孤立するぞ!」


ドーザの制止も聞かず、ガボンは突き進む。


深まる土煙の中、まるで血に飢えた獣のように斧を振るい続けた。


その時だった。


「グルルルルルッ!!」


正面の土煙を突き破り、数体の影がガボンめがけて一斉に襲いかかってきた。


巨大なダイアウルフに跨がったコボルト・スクラッパー達だ。


「なめるなよ、犬っころどもが!!」


ガボンは踏み込み、斜め下から大斧を一閃する。


群がる敵の胴体をまとめて薙ぎ払う、必殺の一撃――のはずだった。


驚く事に、コボルト達は攻撃が当たる直前、騎乗していたダイアウルフの背中を強く蹴りつけた。


身軽なコボルトたちは高く跳躍し、斧の軌道を見事に躱す。


「なに!?」


ガボンが目を見開く。


だが、驚きはそれだけではなかった。


コボルトたちが跳躍したその後方から、赤黒い斑点を持つラーヴァ・トードが跳ね上がってきたのだ。


「カエル……!?」


信じられない光景だった。


コボルト達は、自らが踏み台になるかのように空中で姿勢を固定。


後ろから飛んできたラーヴァ・トードが、その背中をさらに蹴り台にしたのだ。


まるで、二段ジャンプのような軌道で防衛線を飛び越える。


ガボンの背筋に冷たい汗が流れる。


振り返って斧を投げれば、あのカエルに間に合うか!?


しかし、思考を巡らせる暇はなかった。


カエルに蹴り飛ばされたコボルト達が、刃を携えて猛スピードで降ってくる。


危機はそれだけではない。


斧を躱したダイアウルフが、牙を剥いて正面から突進してきていたのだ。


上下からの同時攻撃。


「ちぃっ!!」


ガボンは咄嗟に大斧の柄を両手で持ち上げた。


頭上に掲げて、空中からのコボルトの刃を受け止める。


そのまま体を沈め込ませ、柄の下部でダイアウルフの噛みつき突進をギリギリで防御した。


ズザザザザザッ!!


ガボンのブーツが地面を削りながら後方へと滑っていく。


しかし、ガボンの戦闘センスは伊達ではなかった。


押し込まれる圧力の中にあって、彼は既に呪文の詠唱を行っていたのだ。


「ザッド。グラ。バルドル・ヴァッシュ・キレン!(砕けぬ。折れぬ。刃も通さぬ岩となれ!)」


ガボンの体内から、爆発的な魔力が膨れ上がる。


「無の第二階梯魔法……『ソリッド・フレーム(鋼肉装甲)』!!」


元々筋骨隆々だったガボンの肉体が、ドクン、と大きく拍動した。


血管が浮き出た太い腕や胸の筋肉が、異常なほどに隆起した。


皮膚の色が赤黒い色合いへと変化していく。


剣や槍はおろか、魔物の牙すら通さないであろう、肉体硬化。


同時に、その筋肉の異常な膨張は、純粋に力の増幅を意味していた。


「オオオォォォッ!!」


ガボンは咆哮と共に体中に力を込める。


ダイアウルフの突進がピタリと止まった。


瞬時にダイアウルフの顔面を蹴り飛ばし、コボルトを薙ぎ払う。


「邪魔だ!」


凄まじい風切り音と共に、ダイアウルフとコボルトが両断された。


血と臓物が周囲に撒き散らされる。


「やっぱりすげぇ……。あいつの実力は伊達じゃない」


「ああ、B級昇格も十分有り得る腕前だろ……」


「もしかして、本当にレーヴァさんのことを……!」


後方で戦う冒険者たちは、バーサーカーのごとく暴れ回るガボンの姿に、感嘆と畏怖の声を漏らしていた。


しかし、ガボン自身には、倒した余韻に浸っている余裕はなかった。


すぐに防衛線を飛び越えたラーヴァ・トードを視界に収める。


だが、遅かった。


カエルの巨体は、すでに防壁のすぐ間近、自爆の有効範囲内まで到達してしまっていた。


「くそがっ!!」


ガボンが再び斧を投げようと右腕を振りかぶった、まさにその瞬間だった。


防壁の上から、一直線に伸びる数本の「炎の槍」が飛来した。


灼熱の槍は、正確無比な軌道でラーヴァ・トードの脳天と心臓に深々と突き刺さる。


「ギ、ゲェェ……ッ!」


断末魔の声を上げつつも、急速に膨れ上がり始めるカエルの肉体。


しかし、防壁に接触する数メートル手前で、耐えきれずに空中で爆裂した。


ドゴォォォォンッ!!


熱風と爆炎が吹き荒れるが、壁への直撃は免れた。


ガボンが忌々しげに防壁の上を睨み上げる。


そこには、杖を構え、下を見下ろしている魔導士キーニルの姿があった。


キーニルの冷ややかな視線と、ガボンの怒りに満ちた視線が空中で交錯する。


だが、言葉を交わす暇などない。


二人は無言のまま、すぐに次の標的へと向き直り、戦闘を再開した。

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる!と思っていただけましたら、気軽にブックマークや評価、応援していただけると継続の励みになります!


次回、第93話は【激突 その3】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

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