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ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
スタンピード編

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第88話:スタンピードの最前線

たきびがゴーレムの錬成を始めた。

疑っていた冒険者達だったが、その異常な光景に絶句する。

たきびの能力を知っているはずのドーザやレーヴァもその光景に驚きを隠せなかった。

──そして、とうとうスタンピードの防衛戦が始まる。

地平を埋め尽くす黒い波。


迎え撃つ四千の土塊が、ついに激突した。


マッド・ゴーレムの巨腕が唸りを上げる。


腰の回転を乗せた完璧なフックが、先頭を走っていた巨大な狼の群れを、まとめて殴り飛ばした。


それを皮切りにあちこちで、激しい乱戦が始まっていた。


「よしっ!」


土煙の向こうで繰り広げられる大乱戦を見つめながら、俺は拳を握りしめた。


ゴーレムたちは圧倒的な一撃を放ち続けている。


「アカシャ、敵の構成と規模はどうなってる?」


俺は眼前の光景を睨みつけながら、脳内の相棒に問いかけた。


『先陣を切っているのは、コボルト・スクラッパー、ダイアウルフの群れ。それに続いてオーク、ラーヴァ・トード、シージ・ライノなどの突進力が高い魔物が確認できます』


アカシャの声が、次々と敵の情報を網羅していく。


「レベル帯は?」


『全体的なレベルは10から30の間です。しかし、ラマ・アガール(狂響鈴)の影響により、個々の戦闘力はプラス10レベル相当だと見積もるべきかと』


「プラス10?!」


『他にも、精神干渉のせいか恐怖を感じていない可能性あがあります』


道理で、あんな無茶苦茶な突っ込み方をしてくるわけだ!


俺は、深くため息を吐いた。


自分より遥かに巨大で圧倒的な存在。


普通なら、本能的に恐怖を覚えるはずだ。


現に、俺はムルジュ・カルタ(奈落の森)の端に来た時、驚く程敵に出くわさなかった。


だが、奴らの目にはそれが一切ない。


自分達より格上であろうマッド・ゴーレムの足元に、我先にと飛びかかってくる。


それでもゴーレムたちは止まらない。


圧倒的な質量で、群がる魔物を蹴散らしていった。


乱戦の優位性を保ったまま、押し返す事ができる――そう思った矢先。


ボン!!


不意に、戦列のあちこちで局地的な炸裂音が響いた。


「なんだ!?魔法か!?」


オレンジ色の炎と爆風が巻き起こり、何体かのゴーレムが足を吹き飛ばされてバランスを崩す。


『魔法攻撃ではありません。ラーヴァ・トードです』


アカシャが即座に映像をズームして脳内に投影してくれた。


それは、赤い斑点を持つ巨大な蛙のような魔物だった。


ゴーレムの足に張り付くと、自らの体をパンパンに膨らませる。


そして、物理的な衝撃を受けた瞬間──


破裂し、強烈な爆炎を撒き散らしていたのだ。


「死ぬ時に自爆するタイプかよ!」


俺は思わず毒づいた。


奈落の森で遭遇した、あの厄介な自爆蜘蛛の記憶がフラッシュバックする。


『ラーヴァ・トードは、体内に高濃度の可燃性ガスを生成すると同時に、発火器官があります。意図的に、あるいは外部からの強い衝撃によって着火、爆発を引き起こすと考えられます』


土を圧縮して作ったゴーレムの脚部が、爆発の熱と衝撃で崩落するのが見えた。


脚を失い、動きが鈍ったゴーレム。


その隙を突いて、シージ・ライノと呼ばれる重装甲のサイが突撃して、突き飛ばす。


同時に群がる魔物たち。


集中攻撃の連携で、ゴーレムがただの土塊に戻っていった。


「連携してるのかよ!」


『驚きです!魔物同士の連携の可能性は加味していませんでした』


珍しくアカシャが上ずった声をこぼす。


ラマ・アガールの影響か!?


『恐らく。素材の影響で、通常と違う効果が追加されている可能性があります』


ノイエの角か!?厄介な事をしてくれるな!


あちこちで炸裂音が響き渡り、ゴーレムが次々と土に還っていく。


自爆蜘蛛よりはマシだが、生きるプラスチック爆弾には間違い無い。


迂闊に殴り倒すのは危険か!


即座にゴーレム達に敵かクレバスの中に投げ込むように指示を出す。


しかし、恐れを知らない爆弾ガエルは、次々と自爆してくる。


くそっ!うざ過ぎる!


防壁に張り付かれでもしたら……!


「アカシャ!あの自爆ガエル、防壁を破壊できるか!?」


『十分可能な威力です』


体から血の気が引いていく。


俺はすぐに通信用のエア・ゴーレムを使い、思念を飛ばした。


「ドーザさん!レーヴァさん!聞こえますか!」


『聞こえるぞ!』


『おう!』


脳内に、二人の声が届く。


「魔物の群れの中に、ラーヴァ・トードがいます!赤い斑点を持った巨大な蛙です!」


『やっぱりそうか!』


レーヴァさんが叫ぶ。


『魔法攻撃かとも思ったが、カエルの姿を見た時にもしかして!と、思ったんだよ!』


「知ってるなら話が早い!あいつら強力な自爆攻撃をしてきます!」


『自爆だと!?』


ドーザさんの声が跳ね上がる。


「もし、突破するやつがいたら最優先で撃破して下さい!壁が破壊される可能性があります!」


『わかった、後方の部隊に遠距離から処理させるよう手配する!』


「もう一つ!」


ドーザさんの返答に被せるように続ける。


「魔物同士、連携してきます!」


『連携だと!?』


ドーザさんとレーヴァさんの耳をつんざくような声が脳内に響く。


「恐らくラマ・アガールの影響かと。近接は特に気をつけて!通常より強くなってる事も周知して下さい!」


『わ、わかった!ギルドマスターにも伝えておく!』


『お前も巻き込まれるなよ、たきび!』


レーヴァさんとドーザさんの鋭い声。


「ありがとうございます!」


俺は少しだけ息を吐き、胸の中の重みを吐き出した。


通信を切り、俺は再び戦場へと意識を集中させた。


「やられたゴーレムの分は、質で取り返す!」


俺は脳内のリソース管理画面を開くような感覚で、【ゴーレム強化】の割り当てを変更した。


現在、マッド・ゴーレムは一体あたり「ステータス40倍」で錬成している。


空きが出る度、生き残っているゴーレムたち再分配していく。


倍率を50倍、いや60倍まで引き上げてやる!


ズズズズズッ……!!


生き残ったゴーレムたちの表面が、黒光りするほどに硬く圧縮されていく。


「よし、これなら持ち堪えられるはず!」


爆風をものともせずに、進撃を再開した。


数と質量のぶつかり合い。


ゴーレムの剛腕がシージ・ライノの角を叩き折り、踏み下ろされた巨大な足がオークの群れを平らにしていく。


魔物たちも、さすがに絶対的な物理の壁を前にして足を止めざるを得なくなっている。


だが、それでも完璧な防衛ラインとはいかなかった。


「クソッ、抜けられた!」


ゴーレム同士の隙間を縫うようにして、連携して後方へと走り抜けていくのが見えた。


『マスター。防衛線を突破した個体が約300以上。後方へ向かっています』


カエルもいったか!?


『十数体確認』


俺は眉間に皺を寄せる。


だが、振り返ることはしなかった。


後ろには、ギルドマスターや凄腕の重騎士、聖女そして冒険者たちが控えている。


俺は自分の仕事に集中するだけだ。


再度、戦場に意識を飛ばした——その時だった。


ズゥン……。


今までとは明らかに質の違う、重く不気味な振動が大地を伝わってきた。


『警告。前方の砂煙の奥より、高密度の魔力反応を複数検知』


アカシャの声のトーンが、一段階冷たくなった。


「何が来る?!」


『トロル、ハイ・オーク、ギガントロプス等の上位種を確認。レベルは60相当と推測』


砂煙が晴れかけたその奥から、ゴーレムと同じ大きさの筋骨隆々の化け物たちが姿を現した。


丸太のような金棒を引きずるトロル。


戦士の鎧を身に纏うハイ・オークの部隊。


大きさが桁違いのギガントロプス。


「レベル60相当の武装集団かよ……」


これまでの雑魚とは訳が違う、純粋な暴力の塊。


しかも、鈴の影響でステータスが底上げされている状態ときた。


『更に飛行タイプの魔物も確認。急速に接近しています』


「これからが本番、ってところか!」


俺は大きく息を吐く。


呼応するように、ゴーレムたちの赤い眼光が、さらに強烈な輝きを放った。

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる!と思っていただけましたら、気軽にブックマークや評価、応援していただけると継続の励みになります!


次回、第89話は【防壁の上からの戦い その1】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

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