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ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
ベルシア編

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第75話:最後の強がり

恐ろしい程の魔法の連射を耐え抜き、反撃に転じるドーザと騎士達。


しかし、咆哮により、硬直状態になった騎士達が、レギオンの一撃により動かなくなってしまう。


怒りを爆発させたドーザは驚異的な動きを見せる。

鬼の形相と化したドーザは、砕け散る石畳を蹴って跳躍した。


「おおおおおおおっ!!」


一瞬の交錯。


大剣の刃が空気を切り裂き、薙ぎ払いを終えたレギオンの左肘を根元から両断する。


ズチャァッ!


粘り気のある音と共に、巨大な腕が床へ転がり落ちた。


ドーザは着地と同時に強烈な踏み込みで軸を切り替え、再度、右膝の関節へと突進する。


「沈めぇっ!」


深々と深部まで刃を叩き込む。


肉と骨を断ち切る確かな手応え。


ズズゥゥン!


右足の支えを完全に失い、レギオンの巨体が四つん這いに崩れ落ちた。


体表に浮かぶ無数の眼球が、敵の姿を探してせわしなく蠢く。


だが、死角から肉薄するドーザの速度が勝った。


レギオンが敵を捉えた時には、すでに彼は上空へと躍り出ていた。


立ち上る魔力を大剣に束ね、首筋へ向けて垂直に落下する。


——首を叩き落とす!


「くらえぇぇぇっ!!」


渾身の自重を乗せた一撃。


──ガキンッ!!


肉を断つ手応えではない。


硬質度の高い鉱石に叩きつけたような強烈な反動が、ドーザの腕を痺れさせた。


「な……に……!?」


刃の先で起きていたのは、正気を疑う光景だった。


体表に散らばっていた無数の口が、首元へとなだれ込むように移動し、一列に並んだ強固な歯で大剣の刃を噛み留めていたのだ。


「バカな……口を移動させた……!?」


常識を逸脱した肉体変化に、脳が一瞬の硬直を起こす。


「くそっ、この!」


体重をかけて押し込もうとするが、大剣は万力に締め上げられたようにピクリとも動かない。


ギゴゴゴ……。


剣を噛み留めたまま、四つん這いの巨体がゆっくりと起き上がり始めた。


「しまった──!」


剣から手を離すのがコンマ数秒遅れた。


空中に取り残されたドーザの視界で、レギオンの巨大な右拳が弓のように絞り込まれる。


「くっ……!」


両腕を交差させ、全魔力を防御へと集中させる。


ボッ──!!


爆裂魔法を至近距離で叩き込まれたかのような衝撃波。


腕の骨に亀裂が入る不吉な音が響き、内臓が激しく押し潰される。


弾丸と化したドーザの身体はホールを一直線に横切り、背後の壁へと激突した。


ボゴォォォンッ!!


「ぐぁ、はぁっ……!」


肺から空気が吐き出され、口から鮮血が噴き出す。


全身の骨が砕け散ったかのような激痛。


ドクン、ドクンと、己の脈動だけが異常な大きさで耳奥に響いていた。


「ヒュー……ヒュー……」


気道に血が絡み、息を吸うたびに不気味な笛鳴りが漏れる。


視界は赤く霞み、意識の糸が今にも切れかけていた。


それでも、ドーザは砕けた壁に手をつき、這い上がるようにして体を起こそうと足掻く。


ズル、ズル……。


引きずるような死の足音が近づいてくる。


レギオンは切り落とされた左腕を拾い上げ、切断面から溢れ出る赤黒い肉芽で腕を接合しながら、着実に歩み寄っていた。


「ぐっ……がはっ……」


再び血を吐き出しながらも、膝を押し立てる。


目の前で立ち止まったレギオンは、首元で噛み留めていたドーザの大剣を、ペッと雑に吐き捨てた。


ガラン……と火花を散らし、主を失った大剣が転がる。


「ガ…………ゲ……」


全身の口が不規則に開閉し、くぐもった嗤い声を奏で始めた。


もう一度その剣を拾って向かってこい、とでも嘲笑うかのように。


「なめるなよ……化け物め……」


血走った眼で巨躯を睨みつけ、口元の血も拭わずに、よろよろと立ち上がる。


震える足は限界を超えていた。


それでも落ちていた大剣を拾い上げ、震える両手で無理やり上段に構え直す。


その惨めな抗いを見て、レギオンは嘲笑をさらに激しく鳴らした。


再生したばかりの巨大な左腕を大きく引き絞り、巨体の全質量を乗せた一撃を放とうとする。


──だが、ドーザの心は、不思議なほど静かだった。


この体では避けることも、防ぐこともできない。


死を悟った極限の境地が、思考のノイズを削ぎ落としていく。


テレスタリアは……無事にギルドへ着いただろうか。


夜道で泣いてなどいまいか。


いや、あの子は強い。


きっと異変を報せてくれているはずだ。


妹の死の真相を探るため、そして残された姪を守るため、素性を隠して護衛騎士となった。


妹を守れなかった後悔は、今でも心を燻らせている。


だが、テレスタリアだけは守り抜くことができた。


あの子なら、きっとこれからも前を向いて生きていける。


きっと……フラーも許してくれるはずだ。


「こい!その腕ごと真っ二つにしてやる!」


騎士としての意地が絞り出させた、最後の強がり。



風を切り裂き、巨大な拳が振り下ろされる。


妹よ……今、そっちへ行く。


ドーザが静かに目を細めた、その瞬間だった。


バンッッ!!!


侯爵邸の重厚な正面扉が、木っ端微塵に吹き飛ぶ暴風がホールを駆け抜けた。


「……!?」


レギオンは硬直し、体表にある眼球が一斉に扉へ向く。


「……何をしてんだ、お前ぇ!!」


大気を震わせるほどの激怒を孕んだ、少年の叫び。


次の瞬間──レギオンの側面に、それと同等以上の質量を持つ漆黒の巨人が、空間を跳躍したかのように錬成された。


怒気によって限界まで補強された超重量の拳が、無防備なレギオンの頭部へ向けて一直線に叩き込まれる。


メキャァァァッ!!


肉と骨が砕け散る不快な惨響。


だが、その拳はその抵抗すら力ずくで押し潰し、顔面を破壊しながら突き進む。


至近距離で戦艦の主砲を撃ち込まれたかのような衝撃波が吹き荒れ、数トンあるレギオンの巨体が、信じられない速度で横方向へ弾き飛んだ。


ドゴォォォォンッ!!


ホールの分厚い石壁を打ち破り、レギオンは隣室の壁、さらにその奥の壁まで三枚連続で貫通し、ようやく瓦礫の底に沈んだ。


もうもうと立ち込める粉塵の中。


ドーザの目の前には、審議場で見たあの規格外の巨大ゴーレムが、静かに佇んでいた。


胸のつかえが取れたように、ドーザは深く息を吐き出し、静かに目を閉じた。


その口角は、確かに少しだけ上がっていた。


「ドーザさん!」


聞き慣れた少年の声とともに、焦りを含んだ足音が駆け寄ってきた。

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる! と思っていただけましたらブックマークや評価応援していただけると嬉しいです。


次回、第76話は【レギオン対ゴーレム】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

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