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ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
奈落の森編

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第6話:異世界のウサギ、やっぱり冗談抜きで強すぎる

ゴーレムマスターの詳細を把握するも、ゴミスキルと言われても仕方がない程、とにかく制限が多いスキルと分かり、予想と反して全く自分の理想のゴーレムを作れない事を知った永灯。落胆するもとりあえずできる事から確認していく。


ゴーレムマスターのスキルの検証のため、レベルアップを目標とし自分で使ったゴーレムを使って魔物討伐に向かうが、遭遇したのはある意味見慣れたウサギだった。

【固有スキル:ゴーレムマスター】

物質同士を繋ぎ合わせて「人型」にし、稼働させることができる。


≪制限≫

・他の一切の魔法が使用不可能になります。

・職業が『ゴーレム使い』に固定され、転職は不可能です。

・物質自体の形状を変化させる「変形」は不可能です。

・生物、魔力、魔法生物、魔法道具を直接ゴーレム化することは不可能です。

・既に主従関係や契約、所有権が存在する物質を直接ゴーレム化することは不可能です。


「うそ、だろ? 俺ができると思ってた事が、不可能ばかりじゃないか……」


俺が想像していたゴーレムの作り方とは全然違う。格好いい車のゴーレムを作って異世界をドライブするとか、全身に鋼鉄の鎧ゴーレムを纏って有名アメコミヒーローみたいに無双するなんて楽しげな予定は、木っ端微塵に吹き飛んだよ。


「人型限定ってなんだよ! しかも変形不可? つまり、そこら辺の岩を変形させるのは無理って事だろ」


ただの「プラモデルの組み立て」と同じって事かよ。しかも、魔法生物も魔力もダメ、契約済みもダメとか。


「世間でこのスキルが蔑まれてる理由がよく分かったわ……はぁ」


溜息しか出ない。楽できると思ってたのにこの有り様だ。ていうか、このスキルはなんでこんなに制限が多いんだよ。しかも、蔑まれているって事は、ある一定の人数はこのスキル持ちって事だろ?


『……このスキルはある神が作った弱者の……スキルなのです』


「……」


ずっと引っかかっているあの一言。やっぱりこのスキルには、何か裏があるのだろうか。


なんにせよ、絶望して座り込んでいても最悪魔物に食われるだけだ。まずはこの『物質同士を繋ぎ合わせて人型にする』という最小限のロジックをテストするしかない。なに、仕事柄無茶ぶりも多かったんだ。こんな時こそ、PDCAサイクルだろ。


「とりあえず小石でやってみよう」


俺は足元に転がっている、歪な小石をいくつか拾い集めた。


「よし、なんとなく人型になるように、と」


そして歪ではあるが、頭、体、腕、足の人型になるように並べてみる。


「こんなものか。よし、ゴーレム!」


『カチリ』


あ、脳内で何かのスイッチが嵌まる感覚。スキルが起動した感覚だ。


すると、俺の並べた小石の隙間に目に見えない結合力(リンク)が走り、小石同士が磁石のように吸い付いた感じがした。


「こいつ、動くぞ!」


体長わずか十五センチほどの、超ミニマムな小石の人形が立ち上がる。


「うおお……! 本当に動いたぞ……!【ペブルゴーレム(小石ゴーレム)】?」


頭の中に情報が流れ込んできたな。【解析・鑑定】のスキルか? それともスキルの基本仕様か? しかし──。


「ペブルゴーレムとは、そのまんまだな」


石の大きさがバラバラだからめちゃくちゃ歪だし、歩くとカチャカチャと頼りない音がするが、間違いなく俺の脳内の命令に従ってトコトコと動いている。


「……うん、かわいい!」


俺は制限の多さに落胆していたはずなのに、自分の組んだマクロが初めて動いた時のような、強烈な興奮が脳を焼いた。小さくて不格好なゴーレムだが、俺はどこか愛着が湧いて、ニヤニヤしながらしばらく動かしていた。


「よし、これならなんとか出来そうな感じがしてきた。石の大きさを整えてビルドすれば、もっとバランスが良くなるはずだ。検証するぞ!」


俺は片っ端から小石を集めて、ゴーレムを量産していった。


「今十体目だけど、うん、このペブルゴーレムくらいの大きさと重さなら、リソースの許す限りかなりの数が作れそうだ」


感覚的には1,000体くらいはいけそうかな。


「でも、作れるのはいいけど、動かせるのは一体だけなんだよな」


1,000体も作れるのに一体しか動かせないのは…。う〜ん、レベルが上がったらなんとかなりそうか? 解析・鑑定にかけても何も反応しないんだよな。


「なんにせよ、レベルアップをしないと分からないから、戦力を整えなければ」


このペブルゴーレム、さっき俺の足に攻撃させたが、あまりにも弱わすぎて戦闘には使えない。仮に1,000体同時に動かせたとしても、子供一人にも勝てるか怪しい。


「やはり、大きいやつを作るしかない!」


ふふふ、そう、やはりゴーレムは大きくなければ!


「素材、素材、と」


周りを見渡したが、俺が理想とする「格好いい騎士の形」にジャストフィットするような素材は都合よく見つかるわけもなく……。


「ん〜、形状を変えられないなら……最初から形が自由になる素材を使うしかないな。──『土』だな!」


俺は地面の泥や土を、必死に手で捏ねて積み上げ、自分より遥かに大きい二メートルほどの歪なドロ人形を成形した。


「はぁ……はぁ。やっと出来たぞ!」


うん、某人気ゲームのどろにんぎょうのまんまだな。でも自由に形を作れるのはいいな!


「よし! ゴーレム!」


ズウゥン……! 土の巨人が、ゆっくりと大鎌のような腕を持ち上げて駆動した。


「おお! おお! よっしゃ! 成功だ!」と感動したのも束の間、


「がっ、はっ!」


急な頭痛と倦怠感! これは派生スキルを試した時に出た症状だ。


「くぅっ……きつい……!」


脳のメモリをゴリゴリと削られているような感覚だ。自分の手足を動かすのにも不自由する感じ。どうやら、現在のレベル(レベル1)では、この二メートルのマッドゴーレム(土ゴーレム)を一体維持して操作するのが限界のようだ。


時間は……五分くらいか。これが俺自身のレベルのせいなのか、スキルの熟練度のせいなのかは今の時点ではわからない。


「そうなると、やはり──」


このゴーレムを使って魔物を倒し、まずはレベルアップを狙う。それしか生き残る道はない。懸念点として、ゴーレムで倒した分の経験値的なものが俺のレベルアップの糧にならない場合だが……。


「とにかく、やるしかない」


俺は魔物との戦いに備えて、マッドゴーレムのさらに細かい部分をテストしていった。その結果、以下のような事がわかった。


・大きさが変わっても、俺の考えた動きとゴーレムの動きはディレイ無く、ノータイムで同期できる。

・素材を集めなくても、直接地面から作れる。

・土の中に含まれるものは、そのまま土と認識され素材になるらしい。

・そのせいか強度などは土よりは硬く感じる。

・五十メートルくらい離れても動かせるが、それ以上はラグが発生する。

・他のスキルと併用可能。

・おおよそ五分経過すると、俺自身の精神力が厳しくなる。

・破壊された部位を再生させる度に、精神力を削られる。


これが、レベルアップをした時にどう変わるのかが焦点だ。


攻撃力もペブルゴーレムとは比較にならず、感覚的に大人三人分の力はありそうだ。優秀!


「よし、回復もしたし、行くか」


俺はゆっくりと場所を移動し始めた。そして、感覚的に二十分程歩いたところで、かなり遠くではあるが、


ガサッ。


という音が聞こえた。その瞬間、


「う……あ、あ……」


全身に強烈な不快感が走る。これは……危険察知! あまりの精神的負荷に、吐き気すら込み上げてくる。とにかく隠れないと! あそこがいい!


背の高い謎の草が生い茂る場所があって本当に助かった。ただ、こんな心臓がバクバク言うような警戒マックスの精神状態で、果たしてゴーレムをまともに扱えるのだろうか。


「すぅ〜、はぁ〜……」


深呼吸をする。一度この強烈なプレッシャーを経験してるからか、なんとか理性を立て直せそうだ。しかしこの仕様、どうにかならないのかよ! くそ、落ち着け!


「どこだ、どこにいる?」


俺は茂みの隙間から、約三十メートル先にある少し開けた場所をじっと凝視した。すると、そいつが俺の視界に飛び込んできた。


「う、さぎ……か?」


体長は地球のウサギとさほど変わらない感じがする。だが、あきらかに雰囲気がおかしい。その両目が、不気味なほど鮮やかな「紫色」に妖しく光ってる。


俺は知っている。ラノベやアニメの定番だ。『異世界のウサギは初心者殺し(めちゃくちゃ強い)』というお約束を。ただ、お願いだからそうであっては欲しくない。できるなら、このゴーレムでサクッと倒せるやつであってくれ。


生唾を飲み込みながら、俺は解析・鑑定の視線をウサギに飛ばした。


【対象】:バイオレットホーン・ラビット

【ステータス】:レベル 102

「──っ!? ひゃ、ひゃく……!?」


叫びそうになる口を、両手でとっさに抑え込む。レベル100超え!? なんだその化け物! 異世界のウサギ、やっぱり冗談抜きで強すぎんだろ!


「……だめだ、勝てない」


あんな化け物、今の俺じゃ到底無理だ。逃げよう。


俺はゆっくりと後ずさりし始めた。派生スキルの【気配隠蔽】【認識阻害】をマックスまで稼働させる。カサリと音が鳴らないよう、周囲の風が吹いて草が揺れるタイミングに合わせて同時に足を動かす。これなら騙せるはずだ。


少しずつ、少しずつ。


「ふぅ〜……」


心臓の音がうるさい。時間が永遠のように感じるのに、あまり距離が離れていない。相手が全然気づいていないのが本当にラッキーだ。


──相手が気づいていない、か。


俺はふと足を止めた。


ウサギであの強さなら、この森で一番弱いのは恐らく俺と考えていい。大岩の場所にいた時から、危険察知のアラートが全く止まないのがその証拠だ。


……この森で生き抜くためには、絶対に情報が必要だ。そのためには、いつか戦闘経験を積まなければならない。幸い、今の俺には自分自身じゃなく、身代わりになってくれるゴーレムで戦えるアドバンテージがある。


……そのために、ここに来たんだろ。腹をくくるぞ、俺。


幸運にも相手はまだ俺の存在に全く気づいていない。あのウサギの近くでマッドゴーレムを静かに生成して不意を突けば、もしかしたら……。


やるしかない……! 不意打ち(初撃)で決める! まずは、もう一度解析・鑑定だ。


あいつまでの距離は?──二八・四三メートル。

風向きは?──北東三・二四メートル。


ラッキーだ。完全に奴の背後を取れる。


周囲のゴーレム生成できる素材は?──土、小石。


よし! やるぞ!


まずは、囮としてペブルゴーレムを俺とウサギの中間辺りに静かに生成し、歩かせる。


「ガサ、ガサ」


わざとらしい足音が響く。風で揺れる草の音とは明らかに違うその音に、バイオレットホーン・ラビットの耳がピクリと動き、音のした方を警戒して見つめた。──今だ!


俺はペブルゴーレムから意識を切り離し、ウサギの斜め後ろの死角にあたる場所に、マッドゴーレムを一気に生成した。


ゴーレムに気づいたのか、ウサギがハッと振り返ろうとする。だが、もう遅い!


「叩き潰せ!」


俺の命令と同時に、一撃でねじ伏せるために右腕を肥大化させた泥の巨人が動く。歪ではあるが、中に石を巻き込ませたその拳は、ウサギを叩き潰すには十分すぎる重量に見えた。


その拳が、ウサギの脳天に確実に叩きつけられた──そう確信した、その瞬間だった。


──ボンッ!!


「……え?」


凄まじい衝撃音が響き渡り、俺の作ったゴーレムの腕から頭部にかけてが『一瞬で爆散』した。


何が起こった? 俺のゴーレムの拳は、確かに当たったはずなのに!


土の体が崩れ落ち、その向こう側に見えたウサギの姿を見て、俺は息を呑んだ。


「額に、穴……? なんだよ、あれは!?」


普通のウサギだったはずの額に、ぽっかりと痛々しい穴が空いている。理由がわからない。俺はすかさず鑑定を飛ばした。


【対象】:バイオレットホーン・ラビット

隠していた角を射出したために額に穴が空いています。


角を銃弾みたいに音速で飛ばしたっていうのか!? 確かに名前に『ホーン』がついているから、ただのウサギにしては違和感があったが、まさかそんな攻撃方法を……!


驚愕する俺の目の前で、ウサギの額の穴が徐々に塞がっていくのが見える。


「さ、再生してるのか……!?」


とんでもないスピードだ。治癒魔法か何かか、それとも元々そういう異常な生態の個体なのか。


「あの威力の一撃を、何発も撃てるのかよ……無理だ。勝ち筋が全く見えない……」


俺が戦慄している間も、ウサギは角の再生を待っているのかその場から動かず、紫色の目をぎょろぎょろと動かして周囲を見回している。まるで、『真犯人』を探しているかのように。


駄目だ、恐怖で身体が震えはじめた。危険察知のアラートが脳内でマックスを指している。バレたら確実に死ぬ。動くな。息を止めろ。


ウサギはしばらくその禍々しい目で周囲を見渡していたが、やがて何事も無かったように草叢の向こうへと去っていった。


脳内の危険察知がようやく緩んだ瞬間、俺はプライドも何もかもを投げ捨てて、一目散に反対方向へ走り出した。


背後に残る圧倒的な死の気配に涙目になりながら、俺はただひたすらに、奈落の森の奥へと逃げ帰るしかなかったんだ。

ご一読いただきありがとうございます。


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次回、第7話は【ジャイアント・キリングしてやる!】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

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