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ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
ベルシア編

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第57話:殺意が過ぎるギルドイベント

対応策に決定打を見いだせない冒険者達だったが、ドーザ提案が現実味を帯びてくる。


「たきびを呼ぶか、呼ばないか」


議論は白熱したが、レーヴァの驚愕の一言が流れを一変させる。

『この人、本当に聖女かよ……』


そんな心の声が、ギルドにいる全員の顔に書いてあるようだった。


「――ぷっ」


極度の緊張感に包まれたギルド内で、テレスタリアが思わず吹き出した。


一斉に、数百人の荒くれ者たちの視線が、美しい貴族令嬢へと集まる。


「あ、ごっ、ごめんなさい……っ!」


テレスタリアは慌てて両手で口を覆い、俯いた。


だが、堪えきれないのか、肩がプルプルと震えている。


「はっ!見ろよ。こんな可愛いお嬢ちゃんにも笑われてるじゃねぇか。情けねぇ」


「い、いえ!決してそんな!レーヴァさんの言葉に……」


懸命に取り繕おうとするテレスタリアの言葉を遮るように、レーヴァが被せる。


「このギルドには、ビビりの腑抜けしかいねぇのかよ!」


レーヴァが呆れ顔で鼻で笑った。


それが、導火線に火をつけた。


「はぁ!?俺はビビってなんかねぇぞ!!引退聖女!」


ガボンの一言を皮切りに、ギルド内が一気に炎上する。


「ふざけんな!スパウンごときに俺たちが怯えるわけねぇだろうが!」


「そうよ!毎日命張って生きてる私たちを舐めないでちょうだい、このおばさん!」


「ちょっと高度な回復魔法が使えるからって、調子乗ってんじゃねぇぞ、年増!」


それまで漂っていた絶望的な空気はどこへやら。


今度は凄まじい怒号と罵声が、レーヴァ一人に向けられる。


「……あぁん?」


レーヴァの目が、スッと細められた。


聖属性の魔力とは真逆の、ドス黒い殺気のようなプレッシャーが、彼女の全身から立ち上る。


「「「す、すいませんでしたぁっ!!」」」


一斉に、冒険者たちが直角に腰を折って謝罪した。


ガボンだけが舌打ちをして、なおも不遜な態度のまま腰を下ろす。


一瞬で鎮火したギルド内とは対照的に、テレスタリアの肩の震えだけは止まらなかった。


「……という事なんだが。ギルマス、呼んでもいいよな?」


完全に空気を制圧したレーヴァが振り返る。


ギルドマスターは、盛大にため息をつきながら苦笑した。


「……いいだろう。呼んでくれ。俺も、そのゴーレム使いと直接話がしたくなった」


許可が下りた。


レーヴァはテレスタリアを見て、一瞬だけ優しく微笑む。


「頼めるか?」


「はいっ!」


テレスタリアは、通信用として渡されていた小さな土人形を両手でギュッと握り締め、ギルドの外、開け放たれた扉の方へ駆け出した。


そして、人形を空に掲げ、声を張り上げた。


◆


――そんな状況になる少し前。


俺は、ギルド裏の路地で、テレスタリアの持つマッド・ゴーレムを通じ、ギルド内のやり取りに耳を傾けていた。


ただ、言葉尻までしっかり捉えているわけじゃない。


ラジオを聞き流しているような感覚だった。


いいなぁ、ギルドの中。


冒険者たちが集まって、強そうなギルドマスターが仕切って、クエストのブリーフィングをする。


まさに王道ファンタジーの光景じゃないか。


俺もこっそり中に入っちゃダメかな?


この腕輪の効果検証もかねてさ!


俺は右手首にあるドーザさんに貰った腕輪に触れた。


『今回は状況が良くないため、ダメです。ギルド内には看破系のスキルや、魔力探知に長けた高ランクの冒険者が数名確認できます。外で待機するのが賢明です』


ちぇっ。


まあ、アカシャの言う通りなんだけどさ。


「じゃあ、ここにじっと隠れていても仕方ないから、少し散歩してきてもいいか?小腹も空いたし」


『許可します』


俺は気配隠蔽と認識阻害のスキルを解き、路地を抜けて大通りへと歩き出した。


ワンチャン、いくつか出店に人が残っていて、串焼きでも買えるかな……なんて淡い期待を抱いていたが、やはり通りには人の気配がまったくなかった。


遠くから、家財道具を荷車に積んで走る音や、混乱したようなざわめきが聞こえてくる。


無理もない。


騎士団が外壁の損壊やスタンピードの危機を町の人々に触れ回っているのだろう。


「残っている人は、逃げ遅れた老人か、この町以外で生きていけないと思っている人たちだけかな……」


ふと見ると、路地の入り口で、杖をついた腰の曲がったおばあさんが、何も持たずに立ち止まっていた。


俺は駆け寄って声をかける。


「おばあさん!逃げないんですか?」


「ん?ああ……足も目も悪くてな。今から逃げたところで、たかが知れてるよ。それに、ずっとこの町で生きてきたからねぇ……。あんた、冒険者かい?」


「いえ、俺は最近この町に来たばかりです。少し用があって」


「こんな大変な時に来なさるなんてねぇ。……運がない。あんたも、できるだけ早く逃げなされ」


おばあさんは、皺くちゃの手で俺の腕を優しく叩いた。


「ありがとうございます。でも、おばあさんも諦めないで、頑丈な地下室かどこかに隠れてくださいね」


俺はおばあさんと別れ、さらに歩みを進める。


やがて、見覚えのある広場の噴水へとたどり着いた。


水音だけが、虚しく響いている。


俺は噴水の縁に腰を下ろし、ここで会ったナディのことを考えていた。


結局、ナディとは剣を交えることになってしまったな。


ノリアの言葉に揺らいでいた、彼女の瞳。


あいつは、心底今の理不尽な世界を憎み、同時に深く傷ついていた。


彼女が背負わされた業は、俺が想像するよりも遥かに重いんだろう。


だが、やり方に納得がいかない。


「この狂った事態が収束したら、もう一度、あいつとちゃんと話せるかな…」


そうつぶやいたその時――。


俺の脳内に、鼓膜を揺らすような爆音が直接響き渡った。


『たきびさん!どこにいますか!?』


俺は弾かれたように腰を上げた。


「い、今、噴水の所にいます」


『……お話、聞いていらっしゃいましたか?』


「え……あ……はい」


『ああ……聞いていませんでしたねぇ?』


からかい上手なテレスタリアさんが出てるよ!


かわいいから許すけど!


「すみません!ちょっと考え事をしていて」


『とにかく、ギルドの中へ来てください!許可は取りました!』


「え!?俺、ギルドの中に入れるんですか!?」


『はい!急いでください!』


やったぜ!念願のギルド内だ!


俺はグッ!と拳を握りしめて、走り出した。


ついに王道ファンタジーの醍醐味、ギルド入場イベントにありつけたぞ!


『…ニュービーが来やがったぜ』


『あんなヒョロガリ、使えるのかよ』


『ちっ、あの受付嬢、俺が狙ってるのにあいつに頭下げやがって。うざいな』


なんていう、テンプレみたいなやっかみを言われちゃうのかな!?


――と、ついさっきまでウキウキしていた自分を、俺は全力で殴ってやりたい。


なぜなら今、俺はとんでもない殺意の波の中に放り込まれているからだ。


ギルドに着いた瞬間から、数百人の荒くれ者たちの敵意を突きつけられた。


物理的な重さすら感じるほどの、凄まじい敵意だった。


ねえ?


殺意、エグくない?


俺、そんなに悪い事した?


『……このような状況になることは、容易に予想できたはずですが』


アカシャの呆れたような思念が、脳内に響く。


いや、まあ、なんか陰口叩かれるかな~くらいには思ってたけどさ……。


『……はぁ』


うわっ!脳内でため息つかれた!


「お前が、たきびか?」


ギルドの奥から、大木のような体躯を持つ男が、低く威厳のある声を響かせた。


その存在感だけで、ギルド内のざわめきがピタリと止む。


「はい」


俺は短く返事をした。


彼がギルドマスターか。


それにしても、体がやばくないか!?


俺が錬成した強化ゴーレムよりも一回りデカく、岩のように頑強に見えるぞ。


「お前を呼んだのは、ドーザ殿の質問に答えてもらうためだ」


ギルドマスターの鋭い眼光が、俺を射抜く。


「時間がない。手短に答えてくれ」


俺は静かに頷き、ドーザさんの方へ視線を向けた。


その手には、厳重な封印の魔法陣が描かれた皮袋が握られている。


ドーザさんが口を開いた。


「たきび殿。先ほど、ノリアからこれを回収した」


ドーザさんが、皮袋をゆっくりと掲げる。


「この中身について、聞きたいことがある」


俺は皮袋を開け、視線を落とした。


その瞬間、周りにいた冒険者との間に、更に空間が空く。


「……これって、狂響鈴……ラマ・アガールの残骸ですか?」


ギルド内に、少しざわめきが走った。


「分かるのか?」


「はい。なんとなく……」


ギルドマスターが身を乗り出す。


「ならば話は早い。ドーザ殿が聞きたいのは、その残存魔力についてだ」


俺は黙って頷いた。


ドーザさんが、すかさず口を開いた。


「では、たきび殿。率直に聞こう」

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる! と思っていただけましたらブックマークや評価応援していただけると嬉しいです。


次回、第58話は【逆襲のテレスタリア】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

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