↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
ベルシア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/113

第56話:聖女の一言は階梯魔法を超える

混迷するギルド内で発覚する、高ランク冒険者たちへの過剰な派遣依頼。それが一体何もを意味するものなのか。様々な情報がますます冒険者達を惑わせる。そんな中レーヴァとドーザの提案が益々ギルド内を混沌のるつぼに引き込むのだった。

「マリエラ、シレルはどうした!?」


ギルドマスターがマリエラに問う。


「えっ?副ギルド長なら、ギルドマスターから帝都の冒険者ギルドへ親書を届けるよう頼まれたと言って、二日前に出張に行きましたが……!」


ギルドマスターの顔から、みるみる血の気が引いていく。


「俺は、そんな命令は出していない。あいつには、ナディの身辺調査を極秘に頼んでいたはずだ……」


「そんな……!じゃあ、副ギルド長も最初から敵とグルだったってことですか!?」


マリエラも青ざめる。


「恐らく『デア・ドゥペル』の一員か、金で買われて手を貸したか……。くそ!」


ギルドマスターの拳が軋む。


「……だが、今この件を追及している時間はない。後回しだ」


ギルドマスターは頭を振り、レーヴァへ向き直った。


「すまない、脱線した。で、その呼びたい加勢とは誰なんだ?」


「名は、たきび。最近この町に来た、ゴーレム使いだ」


――その瞬間。


ギルド内の空気が、凍りついた。


次の瞬間には、想像していた以上の敵意が爆発する。


「聖女さんよぉ、頭湧いてんのか!?よりによって、『スパウン』をここに呼ぶだと!?」


ガボンが勢いよく立ち上がり、怒号を飛ばす。


「そうだ、レーヴァさん!一体何を考えてるんだ!」


「待てよ……以前スパウンが、魔力爆弾を止めたとか噂になってたな。そいつか?」


「へぇ。それなら大丈夫か?」


「大丈夫なわけねぇだろ!あんな不吉な疫病神を、このギルドに入れるなんて冗談じゃねぇ!」


「そういや、ナディと話してたのを広場の噴水で見たって奴、いたよな?」


「じゃあ、あいつも今回の一件に関わってるんじゃないのか?」


「決まってる!スパウンなんて処刑しちまえ!」


口々に飛び交う怒声。


中には露骨な敵意を剥き出しにする者もいれば、周囲の空気に引っ張られるように不安を口にする者もいる。


だが、その根底にあるものは同じだった。


――邪神の落し子を、このギルドへ入れるな。


ギルドの空気は、完全にたきびへの憎悪で満たされていた。


ギルドマスターも深く眉間に皺を寄せる。


「レーヴァさん。仮に、そのゴーレム使いをここに呼び寄せたとして、彼に何をさせるつもりだ?」


「壁の穴を、塞がせる」


「……はぁ!?」


冒険者たちが一斉に目を丸くする。


「壁を塞がせるだって?スパウンに、そんな事ができるわけねぇだろうが!」


「本職の土魔法使いですら強度が足りないと躊躇してるんだぞ?ゴーレム使いのスキルごときで、どうやって壁になるんだよ!」


「あんな、ガキが蹴飛ばしても崩れるような脆い土人形で、スタンピードの魔物を防ぐだと?馬鹿も休み休み言え!聖女さんよ!」


ガボンは完全に呆れ果て、大げさに肩をすくめた。


「レーヴァさん。悪いが、俺もそれは受け入れがたい。錬金術師ならともかく、魔力が少ないゴーレム使いが、防壁の代わりになるような代物を生み出せるとは思えない」


ギルドマスターも首を振る。


戦々恐々とする中、今度はドーザが進み出た。


「私も、彼をここに呼びたい理由がある」


一斉に、正気を疑うような視線がドーザへ集まった。


「これを見てほしい」


ドーザは、腰に下げていた、厳重な封印の魔法陣が描かれた皮袋を取り出した。


「これは、逃走する間際にノリアが残していった物だ」


「なんだ、それは?」


ドーザが慎重に袋の口を開けた瞬間――。


空気が重く沈み込むほどの、禍々しくも極めて高密度な魔力がフロア全体へ放出された。


「うわっ!?」


「ひぃっ!」


最前列にいた冒険者たちが、反射的に後ろへ飛び退く。


ドーザが袋の中に手を入れ、取り出したのは――


粉々に砕け散った、黒銀の『ラマ・アガール(狂響鈴)』の破片だった。


「あんた!なんて物持ってくるのよ!」


キーニルが悲鳴のように叫ぶ。


「おい!その異常な魔力……まさか、ラマ・アガールの残骸か!?」


「呪いの塊じゃないか!いかれてるのか!」


怯える冒険者たちをよそに、ギルドマスターが冷静に問う。


「ドーザ殿。それと、彼を呼ぶ理由がどう結びつくのだ?」


「そうだ!説明しろ!」


同調した声がいくつも上がる。


ドーザは周囲を見渡し、先ほどの土魔法使いと、見物していた錬金術師風の男へ視線を向けた。


「貴殿は土魔法使いでしたな。この鈴の破片の莫大な残存魔力を利用して、強力な土のゴーレムを錬成し、魔物と戦わせる事はできるだろうか?」


「え?ああ……いや、難しいだろうな」


男は顔を歪める。


「土魔法によるゴーレムの強さは、術者自身の魔力容量と出力に依存する。この鈴の魔力を、なんらかの方法で俺自身の魔力として利用できるなら別だが……そんな事をすれば俺の体は……」


男は目をつぶり、首を横に振った。


「では……そちらの錬金術師殿はどうだろうか?」


分厚いローブを着た錬金術師の男は、血色の悪い顔を撫でながら少し考え込んだ。


「……理論上は、可能だ」


おおっ!と歓声が上がる。


「これほどの魔力密度があれば、ゴーレムの『核(コア)』として十分すぎる。私なら、恐らくBランク……いや、Aランクの魔物にも匹敵するゴーレムを作り出せる可能性はあるが……」


「す、凄いじゃないか!それなら防衛戦の切り札になるぞ!」


「ああ!雑魚を俺たちで凌いで、強力なボス級の魔物はそいつに任せれば勝機がある!」


「いや、雑魚自体がBランク揃いだったら結局終わりだろ……」


楽観と悲観が再び入り乱れる。


そのとき、別の若い錬金術師が冷や水を浴びせた。


「無理だ」


皆の視線が彼に向かう。


「全てにおいて、時間がなさすぎるんだ」


再び、ギルド内が静まり返る。


「俺たち錬金術師は、確かに強力なゴーレムを作れる。だが、魔導士の土魔法とは錬成の工程が全く違うんだ」


顔色の悪い錬金術師が頷き、その理由を説明し始めた。


「まず、強靭な『素材』が必要だ。このレベルの魔力を核にするのなら、自壊を防ぐために全身の骨格や外装を最低でも『ミスリル』以上の金属で構築する必要がある。しかも大量にな」


「はぁ!?ミスリルだって!?」


「そんな希少金属、おいそれと手に入るわけがないだろ」


ドーザが問い返す。


「仮に、材料が全て揃っていたとして……完成までにどれくらいの時間が?」


「……恐らく、俺のレベルだと急いでも二週間。ヘタをすれば一ヶ月はかかる」


「そんなにかよ!完全にスタンピードに間に合わねぇじゃないか!」


「でも、錬金術師のミスリルゴーレムは本当に強いんだぜ……一度見たことがあるが、城壁を簡単にぶち抜いてたよ」


「今回はそれ以前の問題だろ……」


ギルド内の落胆の色が、一層濃くなる。


そこで、ドーザは核心を突いた。


「では――ゴーレム使いならどうだろう?」


一瞬、場が凍りついたように固まる。


「もし……ゴーレム使いのスキルが、この魔力を利用できるとしたら?」


突拍子もないドーザの一言が、冒険者たちをあり得ない想像へと引き込んだ。


「馬鹿な。そんな美味い話があるかよ!」


「土人形の強さは、術者の魔力依存だろ?魔力が少ないスパウンじゃ、この核を制御できずに自爆するだけだ」


「いや、待てよ。ゴーレム使いの生成は魔法じゃなく『固有スキル』だぞ。どちらかと言えば、錬金術に近いアプローチなんじゃないか?」


「だとしたら、もしかして……」


誰も答えを出せない。


「いや、でも……」


「そもそも、そんな使い方ができるのか?」


「本人に聞かなきゃ分からんだろ」


ざわめきが広がり、やがて一つの結論へと収束していく。


「これを直接聞くためにも、たきび殿をここに呼びたいのだ。どうだろうか?」


ドーザの問いかけに、ギルド内は一瞬静まり返り――


直後、爆発的な反発が起きた。


「目を覚ませよおまえら!不可能に決まってんだろが!!」


ガボンが顔を真っ赤にして叫ぶと、大勢がそれに同調する。


「そうだ!スパウンなんて、何もできやしねぇ!できないどころか、足手まといになって俺たちを呪い殺すに決まってる!」


「絶対に呼ぶな!」


「俺は……あいつがナディと一緒にいたって話のほうが気になる。そんな奴を信用できるのか?」


疑いを口にする冒険者もいる。


そんな中、キーニルが冷めた声で言った。


「私は、聞いてみてもいいと思うわ。使える手駒なら使う。それで勝機があるなら、私はこの防衛戦に参加してもいいわよ」


数人が頷いた。


ほとんどは藁にもすがる思いか、興味本位なのだろう。


ギルドマスターは、眉間に皺を寄せて目を閉じ、腕を組んだ。


すると。


「――お前らさぁ」


気だるげな声が響いた。


レーヴァだった。


「たかがスパウン一人がこのギルドに来るってだけで、そんなにビビり散らして……よくそれで冒険者やってますって言えるな。お前ら、本当にキ○タマついてんのか?」


彼女の発した言葉の威力は、どんな階梯魔法より強力に、その場の雰囲気を破壊し、時間を停止させた。

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる! と思っていただけましたらブックマークや評価応援していただけると嬉しいです。


次回、第57話は【アウェイの招集】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。