表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
ベルシア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/57

第42話:ハルティアの凶行

※予定のタイトルを変更しました。


一息つけるかと思ったのも束の間、ドーザから緊急事態の連絡をうけたたきび。テレスタリアの状況はどうなっているか知るために、新しいスキルと共に事態の把握を行う。一体何が起こったのか?

「テレスタリアさんが捕まった……?!一体どういうことだ!?」


俺は突如頭の中に飛び込んできたドーザさんの悲痛な叫びに対し、思わず大声を上げていた。


ハルティアはどういう手を講じてきたんだ?


『恐らく、今回のマナ・フォールアウト事件……いえ、過去のフラーさんの件までテレスタリアさんのせいにするつもりだと推測されます』


「!!」


そこまで過去に遡って、すべての罪を彼女一人に擦り付けるつもりかよ!


腹の底からドス黒い怒りが沸き上がってくるのを感じる。


となると、こちらとしても後から言い逃れのできない決定的な「証拠」がどうしても必要になる。


「……早速、さっき獲得した【アバタートランス】を使ってドーザさんに確認してみるか!現状を直接説明してもらうのが一番手っ取り早いし」


『いえ、ドーザさんの現在の正確な周囲状況が不明ですので、不用意にこちらから話し掛けるのはお勧めできません』


「確かにそうか……。目の前にハルティア本人がいるかもしれないしな」


『一旦ゴーレムの機能を利用し、周囲のソナー感知を行ってみます』


アカシャがエア・ゴーレムの能力を利用して空気の波紋で気配の反響を立体的にマッピングしていく。


『……検出完了。ドーザさんを含め、計8名の動体を感知しました。4名が先行して歩き、残りの4名がその後を追う形で移動しています』


「ハルティアはいるか?」


『ソナーの波形データおよび過去の体躯スペックを照合。ハルティア、ならびにドーザさん、テレスタリアさんを確認いたしました』


となると、今まさに連行している最中か!?


『——お待ちください!ハルティア殿!』


ドーザさんの緊迫した声が直接聞こえてくるが、距離があるためそれ以外の周囲の音までは上手く拾えない。


「アカシャ、アバタートランスを施した上で【憑依転身】を行ったら、向こうの音や映像を直接見聞きできるか?」


『可能です』


俺はすかさずドーザさんの右肩にしがみついている小さなエア・ゴーレムへアバタートランスを施し、意識をそのまま憑依転身させた。


一瞬の浮遊感の後、視界がドーザさんの肩の上からの景色へと切り替わる。


他にも以前は感じ取れなかった、周囲の音や緊迫した空気感まで鮮明に伝わってきた。


「離してください!何の権利があってこのような真似を……!?」


両腕を二人の甲冑兵士に固められ、無造作に引きずられていくテレスタリアの姿があった。


「何の権利、だとぉ?」


その数歩前を行くハルティアが悠然と振り返る。


その顔には、隠そうともしないゲスな嘲笑が張り付いていた。


「ネデル商会……今回禁制品の魔導具を密輸していた商人共から、テレスタリア、お前が主導で密売を行っていたという証言と証拠が出てきたのだよ!」


「なっ!?嘘です!私はそのような取引など一切行っておりません!」


必死に否定するテレスタリアの声が響く。


「その理由が、我が父上、フーデルガラン・ロンブリッツの殺害である事は明白!」


「ハルティア殿!その証拠とされるものはどこにあるのですか!?」


ドーザさんが怒りを抑えきれない様子で詰め寄る。


「フン、現在は捜査の真っ最中でありここにはないが、近々開かれる審議の場には間違いなく提出できるはずだ。……しかもな、驚くべき事実はそれだけではないのだよ!」


ハルティアはこれみよがしに両手を広げ、芝居がかった大袈裟なジェスチャーで言葉を続けた。


「なんと、今から6年も前に、お前がそのネデル商会から猛毒を購入していた記録まで発見されてな……!」


「——な、何を言っているのですか!?」


あまりにも荒唐無稽な言いがかりに、顔を蒼白にして困惑するテレスタリア。


間髪を入れず、ハルティアは追い打ちをかけるようにうさんくさい悲劇の当事者を気取ってみせる。


「ああ……私もフラー母君の突然の死には心を痛めていたのだ。まさか実の娘が、病死に見せかけて実母を毒殺していたとはなぁっ!」


「違います!私はそんな恐ろしいことはしていません!それは、あなたが……っ!」


叫びにも似た声で真実を訴えようとしたテレスタリアの言葉は、最後まで紡がれることはなかった。


パン!——乾いた打擲音(ちょうちゃくおん)が響く。


ハルティアの手が、テレスタリアの頬を容赦なく叩き伏せたのだ。


「黙れ!!我がロンブリッツ家の名誉に泥を塗った恥知らずが!!」


激昂した表情で、ハルティアは見下す。


「貴様の薄汚い欲望のせいで、由緒あるロンブリッツ家にどれほどの傷がついたと思っているのだ!」


ハルティアがさらに追い打ちの平手打ちを叩き込もうと手を振り上げた、その時だった。


「おやめなさい、ハルティア」


廊下の奥から、頭のてっぺんに響くような甲高い声が聞こえてきた。


「それ以上、その者に手を上げてはいけませんよ」


ジャラジャラと過剰な宝石類を身に纏い、反吐が出る程甘ったるく、鼻につく香水の匂いを漂わせて姿を現したのは、ハルティアの実母であるフローディアだった。


「これ以上手を汚したら、次期当主となるハルティアの崇高な手が、犯罪者の娘のせいで汚れてしまうではありませんか。オーッホッホッホ!」


扇子のような高級な装飾品で口元を隠し、高らかに笑い声を上げる。


「……そうですな、母上。止めていただき感謝いたします」


ハルティアは下卑た笑みを浮かべ、振り上げた手をゆっくりと下ろした。


「それにしても、亡きフラー様も本当にお気の毒に。手塩にかけて育てた実の娘の手に掛かり、命を落とすことになるとは……」


フローディアは白々しい悲しみの表情をつくり、冷酷な瞳で地面に膝をつくテレスタリアを見下ろした。


「私は……そんなこと……やってない……っ」


テレスタリアの美しい瞳から、ポロポロと大粒の涙が溢れ落ち、床を濡らしていく。


「あらあら、今更後悔の涙かしら?なんと穢らわしい!全く反省の色のない愚かな娘ですこと」


「母上、もう参りましょう。このような犯罪者の近くにいては、母上の高貴な身まで穢れてしまいます」


「ええ、そうですね。こんな恐ろしい殺人鬼、一刻も早く神の厳正なる裁きを受けさせなければ!」


二人は嘲笑を残し、冷たくなった床から立ち上がれないテレスタリアは、兵士たちによって力なく地下へと引きずられていった。


「……外道共が!!!!」


ドーザさんが殺気立った低音で小さく呟くと、腰の剣の柄を砕き割る勢いでギリ……と力任せに握りしめた。


その顔には普段の温和な面影など一切なく、浮き出た血管から今にも沸騰した血が弾け飛び出さんばかりの、まさに鬼の形相と化していた。


「——ドーザさん、今は我慢してください」


「……!?!?」


いきなり右肩の至近距離から聞こえた俺の囁き声に、ドーザさんの身体が強張り、すぐ右肩を見た。


「俺です、たきびです。そのまま声を出さずに聞いてください。」


俺は周囲には聞こえないよう、ヒソヒソと話し始めた。


「正直に言えば、俺も今すぐにでもゴーレムを総動員してあいつらを叩き潰してやりたい。でも、今ここで感情に任せて暴れれば、逆にテレスタリアさんに着せられた冤罪を決定づけてしまう事になります。」


「そんな事をさせるわけにはいかないが…しかし!」と言わんばかりに、ドーザさんの顔が険しくなる。


「今はこのハラワタが煮えくり返るような怒りに蓋をして、後でハルティアたちに救いようの無い絶望を味わわせてやるべきです」


剣の柄を握る拳から、ギギギッと更に軋む音が聞こえる。


「後で絶対に、ドーザさん自身の手で復讐できる機会を作りますから」


ドーザさんは拳を固く握りしめたまま、微かに、だが力強く頷いてくれた。


俺は一旦憑依転身を解除し、外壁の物陰に張ったテント内の自分の肉体へと意識を戻した。


「ふぅ。よし、アカシャ……」


次の指示を出そうとした瞬間、アカシャが先回りして答える。


『ハルティア、フローディア、ならびに連行されるテレスタリアさんへ、即座にエア・ゴーレムを取り付かせました。残りのエア・ゴーレム群も、現在ハルティア屋敷内の全領域へ散開・探索を開始しております』


「さすがだな!助かる」


『お褒めに預かり光栄です』


俺は即座に、ハルティアの服に張り付いたエア・ゴーレムへアバタートランスおよび憑依転身を行った。


「おい、その犯罪者を今すぐ地下牢へぶち込んでおけ!それと、お前達はこの事を広めろ」


兵士へそう吐き捨てると、ハルティアとフローディアは執務室へと入っていき、重厚な扉を閉めた。


「ふふふ……見事にうまくいきましたね、母上」


「ええ、さすがは私の自慢の息子、ハルティアです。これで邪魔者はすべて排除できますね。後は…」


ハルティアがニヤリと笑みを浮かべ外を見る。


「クロードが上手くやってくれるでしょう。我々の計画は完璧です」


二人の醜悪でどす黒い笑い声が、豪華な部屋の中に醜く響き渡っていた。


俺は再び憑依転身を解除し、肉体に戻りながらアカシャへ呼びかけようとする。


「アカシャ、さっき言ってたクロードという奴とネデル商会の……」


『現在、屋敷内および周辺領域において「クロード」なる人物の捜索を進行中。同時に、ネデル商会の内部拠点についても捜索範囲を広げています』


「優秀すぎんか……本当に頭が上がらないよ」


『本日二度目のお褒めの言葉、誠にありがとうございます』


そのクロードという謎の人物の手がかりさえ掴めれば、一気に状況をひっくり返せるかもしれない。


そう思考を巡らせていた、まさにその矢先だった。


『……マスター。屋敷内、北東に位置する特定個室にて、配置していたエア・ゴーレム一体の反応が途絶、消失いたしました』


「!……なんだって!?何らかの事故か!?」


『いいえ。外部、あるいは何らかの干渉攻撃による物理的破壊と推測』


「マジかよ……!不可視に近いエア・ゴーレムの存在を見抜いて攻撃できる奴が、あの屋敷の中にいるのか!?」


「アカシャ、その消失した部屋の正確な座標は取れるか?」


『はい。空間座標の特定は完了しております』


「もう一度、その座標内に新しいエア・ゴーレムを生成してくれ!」


『かしこまりました』


部屋の空間にゴーレムが再生成された瞬間、俺は間髪を入れずに憑依転身を強行した。


(おや……?またどこかの無礼なドブネズミが、私の部屋へ忍び込んできたようですな。仕事の最中だというのに…)


視界が開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、姿勢よく椅子に座り、机の上で何やら筆を動かしている白髪混じりの初老の男だった。


上着を見るに、この屋敷の執事長のような人物だろうか。


男がこちらを認識した次の瞬間、俺の動体視力すら置き去りにするような「何か」が猛烈な速度でこちらへ迫ってくるのを察知した。


俺は反射的に憑依転身を緊急解除した。


「——っあぶねえええ!!」


テントの中で跳ね起きた。


あの男……一体どんな知覚能力や技術を使っているのかは知らないが、間違いなくゴーレムの存在を高精度で察知して正確に狙撃してきやがる!


『マスター、いかがなさいますか?』


不可視に近いゴーレムを攻撃できるやつがいる事自体、やっかいだ。


「……もう一度、まったく同じ座標にエア・ゴーレムを作ってくれ」


『かしこまりました』


エア・ゴーレムが生成されたそのコンマ数秒の瞬間、俺はアバタートランスと憑依転身ではなく、自分の肉体そのものをゴーレムの位置と入れ替える空間跳躍スキル【シフトチェンジ】を発動した。


視界が歪み、一瞬にして先ほどの北東の部屋へと俺自身の身体が躍り出る。


「しつこいですね……」


一言洩らした執事らしき男は殺気を放ちながら、先ほどゴーレムの気配がした方向を見た。


その直後。


「!?!?」


その鋭い眼光が、驚愕によって大きく見開かれた。


漂う微小な気配を再度叩き潰そうとしたその場所に、先ほどまで存在しなかった一人の少年——俺自身が堂々と立っていたからだ。


「……事前に私へのご面会の約束はお取りいただいておりますでしょうか、お客様?」


執事らしき男は一瞬で動揺を押し殺すと、貼りついたような冷徹な顔になった。


「生憎、予約を取らせて貰えない身分でね」


俺は右手の甲を見せる。


「ほほう。あなたが噂の…。確かに私に会う事は一生無い方だ……それでは、不法侵入者としてご退場いただきましょうか」


その男は無駄のない洗練された動作で椅子から立ち上がり、机の前に悠然と歩いてくると、細く長い息を吐きながら、低く身を構え、全身から尋常ではない威圧感を放ち始める。


俺も【タクティカル・シェル】を展開させ、パキパキと音を鳴らしながら身体を強靭な装甲で覆いつつ、ゴーレムを一体、作り出した。

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる! と思っていただけましたらブックマークや評価応援していただけると嬉しいです。


次回、第43話は【対人戦の行方】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ