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ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
ベルシア編

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第41話:新たな力と、青天の霹靂

知らない所で事態は目まぐるしく動いていたのだが、異世界初の酒を嗜み、少し気分転換になったたきびとドーザ。たきびの力で新たな作戦を立てるも、ハルティアの悪事を暴くための決め手を欠いていた。

「やっぱり、テレスタリアさんも動けない状態ですか?」


「恐らく、ハルティアの口から直接証言を得るのは不可能に近い。テレスタリア様も、ハルティアの屋敷深くまで間者を潜り込ませる余裕はないようだ」


「かなり厳しい状況ですね……」


俺は背もたれに深く体重を預け、天井を仰いだ。


「音声をそのまま録音できるような魔導具があれば一発なんですけどね」


「ロクオン……?」


「はい。例えば、相手の喋っている声をその場で何らかの方法で記録して、後からいつでもそのまま再生できるような道具です」


「なに……!?もしそのような代物が存在するなら、言い逃れなど一切不可能な決定打になるではないか!」


ドーザさんが身を乗り出し、興奮気味に目を輝かせる。


「しかし……私の知る限り、そのような都合の良い魔導具は聞いたことがないな。古代のアーティファクトでも探せばあるいは、というレベルか」


前世ではスマホ一台でできることが、この世界では伝説のアーティファクト扱いかぁ


「……ともかく、できる限りの証拠集めから始めましょう。ドーザさんは今日、このまま何事もなかったかのようにハルティアの屋敷へ戻ってください」


「例の潜入作戦だな。分かった。本当に俺は、いつも通り屋敷で過ごしていればいいのだな?」


「はい、問題ありません。そしてもし緊急の事態が起きたら、迷わず右肩のエア・ゴーレムに向かって話しかけてください」


ふと自分の右肩へ不安そうに視線を送るドーザさんの姿が、少しだけシュールで面白い。


「理解した。任せておけ」


俺たちは残りの酒を一気に飲み干すと、店を後にした。


「ではな、たきび殿。……くれぐれも気をつけるのだぞ」


「ドーザさんも」


ハルティアの屋敷へと戻っていくドーザさんの背中を見送る。


その背中に、驚くほど大量の『エア・ゴーレム』たちがワラワラとしがみついているのが見えて、思わず「キモいな」と言いそうになったが、これで新たな一歩は踏み出せた。


「さて……これで少し時間ができたな。ここ数日怒涛の展開続きだったから、ちょっと横になって休みたいな」


スパウンの印を押された俺は宿屋にすら泊めてもらえず、マナ・フォールアウト事件後は、焼け落ちた教会の破片の陰で寂しく野宿したばかりだ。


「とはいえ、この街中でテントを張ったら悪目立ちするし、変な噂が広まりそうだしなぁ」


『街の外郭であれば、咎める者もおりません』


「ああ、確かに外壁の周囲には露天生活をしている人たちが大勢いたな」


何らかの事情で街へ入れなかったり、貧民街から溢れ出た人々が外壁の周りに身を寄せ合って生活していたのだ。


「少し離れた場所なら問題ないか」


俺は身体を伸ばしながら、街の城門へと向かった。


「おやおや〜?この街から出ていくのかい、スパウンくん?」


「街に居づらくなったんだろ。まあ、お前の居場所なんて最初からこの街のどこにも無いけどな!」


クスクスと意地悪く笑う門番の二人組。


街に入るとき、俺の手に容赦なく不快な印を押してきた奴らだ。


「……外に出る許可を」


「喜んで!できるなら二度とこの街に戻ってくるなよ〜!」


『マスター、ハイドロゲン・ゴーレムの生成許可を。あの二名を分子レベルで消去します』


また物騒な事を!


俺のために怒ってくれるのは嬉しいけど、その爆発で外壁まで吹き飛ばしちゃうよ〜?


そして「マナ・フォールアウトの犯人だ」って騒がれちゃうよ〜?


アカシャを軽くたしなめて、俺は煽りを完全に無視し、門を抜けて外壁の周囲をぐるりと見渡した。


「……思っていた以上に大勢いるな」


『町の騎士団が定期的に景観維持の名目で対応してるようですが、完全なイタチごっこのようですね』


「小さい子も結構いるな…。」


この世界の過酷な現実を直視すると気が滅入る。


しかし、冷酷かも知れないが、この現状に俺が何かを意見しようとか、行動しようとかは一切思わない。


今の俺には自分の手元にある問題だけで精一杯だ。


俺は外壁に沿ってしばらく歩き、人通りが完全に途切れた物陰のスペースを見つけると、そこにテントを素早く設営してキャンピングチェアに深く腰掛けた。


「あ゛あ゛あ゛〜〜っ!久しぶりに羽を伸ばせる〜〜っ!」


誰もいないのを見計らい、思う存分大声を張り上げる。


『お疲れ様です、マスター』


「アカシャもね。お疲れ様」


とりあえず少し水でも飲んで休息したら、テントの中で横になろう。


『マスター。お寛ぎのところ大変恐縮なのですが』


「な〜に〜?今日はもう一歩も動かないよ〜」


すっかりダメ人間に成り果てた返答をする俺。


『レベル、およびスキルレベルの上昇が確認されました』


「……なんですって?」


一瞬で全身の疲労が吹き飛んだ。


「ステータスをみせて!」


俺の呼びかけに応じ、視界の隅に青白いウィンドウが浮かび上がる。


【対象】:たきび

【年齢】:15歳

【レベル】:95

【職業】:ゴーレム使い

【状態】:正常

【詳細】:空神ワラン・バイアミによって転生させて貰った転生者。

【スキル】

アカシャ:レベル1

インベントリ:レベル5

ゴーレムマスター:レベル8

【ステータス】

HP:1806

MP:0

【派生スキル】

危険察知

気配隠蔽

認識阻害

並列思考

思考加速

自律制御

ゴーレム強化

憑依転身

感覚共有(!)

スキル共有

スケーリング

インターセプト

タクティカル・シェル

シフトチェンジ

オートインテリジェンス

マルチマテリアル

エーテルドライブ

オーナーシップ・トランスファー

リム・アームズ

【加護】

ワラン・バイアミの加護


おお! 新しいスキルが二つに……進化が一つか!


「進化条件は今回もやっぱりレベルダウン?」


『そのようです』


思考内でアカシャの涼やかな声が響く。


今回も選択制か…。


「とりあえず、新しいスキルの詳細を教えて」


『承知いたしました。まず【オーナーシップ・トランスファー】は、マスターが作成したゴーレムの制御権および所有権を、他者へ永久に譲渡する契約スキルです』


俺の所有から、まったく違う人の所有になるって事ね。


『譲渡先に切り替わるため、能力値の参照先がすべて譲渡先のスペックに依存するようになります。その際、譲渡前の形態や付与したスキルは残りますが、稼働などに必要なエネルギーは譲渡先のマスターが補う形となります』


「じゃあ、仮にエーテルドライブを付けたゴーレムを譲渡した場合はどうなる?」


『恐らく、新しいマスターが負担するエネルギーは無くなるでしょう。しかし、そのマスターが死亡した場合は、ゴーレムも活動を永久に停止するか、あるいは自壊します』


「良かった!そこ、気になってたんだよね!」


新しいマスターが死んだ後、勝手に暴走して動き続けたりしたら、色々と洒落にならない問題が起きるからな。


『次に【リム・アームズ】ですが、これはゴーレムで身体の一部分のみを作り出すスキルです。腕だけ、足だけといった部分的な生成が可能になります』


「おお!! 空気中に手だけ生やす事もできるのか!?」


『可能ですが、何も無い空間に作った瞬間落下するので、壊れたり、稼働させることはできません。その場に制止させたり、動かすには、必ず人間や人型の構造物に接している必要があります』


接している必要がある、か。


「例えば、俺の背中に直接生やして動かすような事は?」


『可能です』


なるほど! 今までは腕二本、足二本の人型だったのが、背中から腕を6本追加して「千手観音」みたいな異形のゴーレムを作ることもできるわけだ。


他にもいろいろと応用が効きそうだし、これはかなり便利かもしれないな!


「で、一番の問題は【感覚共有】の進化か」


『感覚共有を進化させると、【アバタートランス】というスキルへと変化します。従来の感覚共有は、主にゴーレム側の感覚を一方的に受信・共有するものでした。それがスキル保持者主体に切り替え可能となり、双方向の干渉が行えるようになります』


「マジかよ! じゃあ、ドーザさんの肩にいる小さなエア・ゴーレムに俺の声を喋らせたり、視点や動きを完璧に同調させたりできるようになったりするって事か!?」


『はい。さらにゴーレムの操作精度が劇的に向上し、繊細な動きなどもよりスムーズな連動が可能になります』


「これは今の状況を考えると、一番必要なスキルかもな」


ハルティアの不正を暴くにも、陰で動くにも、遠隔での情報伝達や情報収集の精度向上は喉から手が出るほど欲しい。


『いかがいたしますか?』


「どのスキルも面白そうだけど、今の差し迫った状況を考えると、今回も進化を優先させるよ」


『良い判断だと評価します。それでは進化を行いますか?』


「よろしく!」


『進化を開始します』


直後、俺の身体の中心あたりで、温かく巨大な熱量が膨れ上がった。


それはじわじわと全身の血流を巡り、数秒後にはすーっと霧が晴れるように消えていった。


『進化を完了いたしました』


スキルを確認すると、確かに感覚共有がアバタートランスに変化している。


同時に、ゴーレムマスターのレベルはワンダウンし7に、オーナーシップ・トランスファーとリム・アームズのスキルは消えていた。


「よし、早速検証といきますか!」


『少しは休まなくていいのですか?』


「検証が終わったらちゃんと休むって!」


『……筋金入りの検証厨ですね』


俺はアカシャの氷の刃のような冷ややかなツッコミを無言で躱す。


そして実験用の小さなエア・ゴーレムを作り出そうとした——まさにその時だった。


脳内に直接、ドーザさんの緊迫した叫びが飛び込んできたのだ。


『——緊急事態だ! テレスタリア様が……捕まった!!』


「えっ!?」


俺は思わず息を呑んだ。

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる! と思っていただけましたらブックマークや評価応援していただけると嬉しいです。


次回、第42話は【ハルティアの凶行】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

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