第4話:なんでゴーレム作れないの?!
無事、異世界転生をした矢先、とんでもない不安と焦りに押しつぶされそうになる永灯。一体何が起こったのか?ここはどこなのか?
今、想像もしなかったサバイバルが始まろうとしている。
俺は今、不安と「すぐこの森から離れたい」という気持ちに押しつぶされそうになっている。無事に転生したというのに……。
狭間の世界で自称神との感動的な別れをした後、気がつくと俺は森の中にいた。
ここが異世界か? ぱっと見、普通の日本の森の中にいる感じだ。えっと、近くの街は──
とその瞬間、俺は強烈な悪寒と焦燥感に襲われ、吐きそうになった。
「なん、だ……っ!?」
毒か!? 実は空気が合わないとか!?
とにかくここにいてはまずい気がする! どうしてもここから離れなければ!
俺は無我夢中で森の中を駆け、偶然見つけた大岩の影に身を潜めて、今に至る。
どうなってんだ!? さっきよりは楽になったが、焦りや不安が消えない。とりあえず深呼吸だ。
「すぅ〜、はぁ〜……」
少し落ち着いてきた。一体なんなんだ? 街の近くの森に転生する予定だったはずだよな。確か、スキル選びに難航していた時──
◆
「スキルが全然決まらない……ところで、どこに転生する予定なんだ?」
「どこがいいですか?」
「え!? 決めていいの!?」
「はい」
「じゃあ、街がすぐ見える森の中で」
「……キャンプの続きですか?」
「正解!」
「わかりました」
◆
という話だったはずだ。ところが、周りを見渡しても街らしいものは見えず、ただ鬱蒼とした森が広がっている。結構走ったはずなのに。
「ふぅ。今なら少し冷静になれそうだ。1つずつ確認していこう」
まず身体に異常はなさそうだ。変な発疹も出ていないし、手に力も入るようになってきた。吐き気もない。うん、大丈夫だ。次は周りの環境だな。
まず、今隠れているこの岩。手触りは日本の岩と全然変わらない。やはり同じ構成なのかな。でも……
「コッ、コッ」
拳で弾いた感じ、俺の知っている岩より凄く硬そうだ。同じ構成でも硬度が違うのかな。次は近くの木だ。
「ゴッ!」
あ……痛っ、これは硬い。地球の木と全然違う。
「ようやく異世界の実感が湧いてきたわ」
しかし、この不安と焦燥感はなんだ。確かに状況は予定と違うし、水や食料の問題はあるが、それ以前の「本能的な恐怖」を感じる。こんな時、鑑定でもあれば──
「あ」
そうだったぁ!! 俺、スキルを持ってるじゃないか! あまりのパニックで完全に失念していた。よし、自分に向かって──
「【解析・鑑定】」
うお! 情報が頭の中に流れ込んでくる!目の前にスクリーンが出るわけじゃないが、脳内での処理感覚はそれと一緒だ。レベルとか、本当にゲームみたいだな。俺が理解しやすいように最適化されている感じがする。
「……あれ?!」
【危険察知】【気配隠蔽】【認識阻害】のスキルが生えてる! なんでだ!?確か質問した時、スキルは3つが限界で、それ以上は肉体に異常をきたして死ぬって……!
「俺、死んじゃうの!? まさか今までの不安と焦燥感って、容量オーバーの予兆か!?」
まずいまずいまずい! どうしたらいいのこれ? 爆死待ったなし!?
焦るな俺、鑑定で回避方法を探れるか!?
「……は、派生スキル?」
よし、うまくログが流れ込んできた!
【ゴーレムマスター】の派生スキル。スキル自体にも熟練度があり、一定の条件で派生スキルが発生することがある。この場合、スキル上限枠には抵触しない、らしい。なるほど、サブルーチンみたいなものか。副次的なスキルは上限に含まれないのね。
「……良かったぁ! てか、これくらい教えてくれよ神様! 心臓に悪すぎるわ!」
おっと、思わず口に出してしまった。もし次に神様に会ったら文句の1つでも言ってやろう。でも、レベルが上がるとスキルが増える可能性があるのはありがたいな!
「じゃあ、この不安と焦燥感の原因は……」
【危険察知】、これだな。恐らく何かしらの脅威を検知したってことだろう。やばい魔物でも近くにいたのだろうか。なんにせよ、森で過ごすには最高に助かるスキルだ。
「とすると、危険察知はパッシブスキルっぽいな。【気配隠蔽】と【認識阻害】はアクティブスキルか。アクティベートするにはどうしたらいいんだ?」
心の中で念じればいいのかな? オン!
「……?」
感覚的には発動している感じはあるが、比較対象がいないとわからないな。一応、MPの消費量も見ておくか。
「……おお! 減ってない! 便利じゃないか!」
スキル様々だな。じゃあ、どれくらい維持できるんだろう。しばらくオンにしてベンチマークしてみるか。色々考えたいこともあるし。
---(10分後)---
「……だっるい」
脳内で秒数を数えて、600を過ぎたあたりで猛烈なダルさが襲ってきた。ざっくり10分くらい使うと、一気に倦怠感が出てくる感じか。多分20分も続けたら動けなくなるな。
「アクティブスキルを使うと、精神力みたいなのが削られるのか」
鑑定しても「精神力ゲージ」のようなものは無い。これは感覚的な部分で管理するしかないってことか。とりあえず一旦オフにして回復を待とう。
---(さらに数分後)---
「うん。体調が良くなった。今は大体、使用時間の半分くらい休めばほぼ元に戻りそうだな」
2つのスキルを同時使用してたから、1スキルだったら20分くらいと仮定しとこう。俺のレベルか、【ゴーレムマスター】のレベルが上がれば限界時間も伸びるかな? これも要検証だ。
しかし、ゴーレムマスターという生産・使役系のスキルなのに、シーフ系やアサシン系のスキルが派生するって、なんなんだろこのシステム? 今のところ違和感しかないけど……。
「ま、今は深く考えている場合じゃないか」
よし切り替えていこう! 次は【インベントリ】だ。
「インベントリ」
……よし! 使い方は想像通り。マ〇クラのアイテムスロットみたいに最適化されている感じだな。容量は…今は大体1000㎥くらいか。少し大きめの2階建ての一軒家がすっぽり入るくらいかな。そして──
「おお! キャンプギアが入ってる!」
自称神様にお願いしておいて正解だった!特典は使い切ったからダメかと思っていたが、お金や食料なんかは持たせてくれる予定だったのでキャンプ道具もOKにしてくれたんだよな。
「まだ買ったばかりのD〇Dのトンネル型テント、まさか異世界に持ってこられるとは!」
ソロキャンプの予定だったが、長期滞在を見据えて、グループキャンプ用の大型ギアで揃えていたんだよね!
「早速設営したいけど……最後のメインスキルを検証してからだ!」
そう! この世界で楽して生きていくという最大の目的のために、魔法をすべて捨てて手に入れたこのスキル!幸いここは誰もいない。雰囲気を出すために、あえて厨二っぽくやってみようじゃないか。ふふふ。素材は目の前の大岩だ。いくぞ!
「世界を創りし大地を紡ぐ理よ! 万物の神が織りなす衣を脱ぎ捨て、我が覇道の盾となれ! 今ここに顕現せよ、ロック・ゴーレム!」
…………。
…………。
…………。
うん、これはきっと厨二ワードを並べても作れない仕様だな。でも、やっぱり1回はやりたかったんだから仕方ないじゃないか。さあ、ここからが本番だ。
岩が想像したゴーレムに変形するところを、明確にイメージすることが重要──って、どっかのラノベに書いてあったから実行してみよう。形は、あの国民的RPGの「どろにんぎょう」か「ゴーレム」のやつにするか。……よし!
「クリエイト・ゴーレム!」
…………。
「ゴーレムマスター・アクティベート!」
…………。
「ゴーレムマスター、オン!」
…………。
「いでよ! ゴーレム!」
…………。
「……全然ゴーレム現れない!!」
まてまてまて! なんでゴーレムが作れないの!?岩が砕けて変形して、ガガガッと組み上がるとかじゃないの!? ちゃんと3Dで想像してるよ!?
「カモン! ゴーレム!……」
駄目だ! スキルが発動している手応えが一切ない!これは、俺が想像しているスキルと使い方が根本的に違うのか!?まずいぞ、解明に1年とかかかるようなら完全に詰む! くそ、思い出せ。神様はなんて言ってた?
◆
『……名前の通り、ゴーレムを作る事に特化したスキルです。あらゆる物質からゴーレムを作り出す事ができます』
◆
岩という「物質」からゴーレムを作る。ロジックは間違っていないはずだ。何が違うのか全くわからない……駄目だ、鑑定でもっと詳細を!
「……! なんだ、これ……」
俺は目、いや、頭の中に表示された「あり得ないメッセージ」を疑った。
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次回、第5話は【邪神のスキル持ちは生かしておけない】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。




