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ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
奈落の森編

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第25話:レベルダウンの先に

※予定タイトルを変更しました。


激しいグリフォン戦の決着の後、ダメージで倒れてしまった永灯。夢の中なのか、別次元のどこかなのか、真っ暗な空間の中で、永灯は自分の転生させてくれた自称神と会い、ワラン・バイアミという名前を教えて貰う。結局聞きたい事は聞けず、目が覚める永灯。


これから永灯はどうするつもりなのか。

『ここはどこなんだろう?』


どこまでも深く、暗い空間。


だが、不思議と冷たさや恐怖は感じない。


不思議な温もりと安心感に満ちた世界。


『俺はどうしたんだっけ……。そうだ。熊みたいな魔物に襲われて、死んで、転生して……』


散らばっていた意識の断片が、急速にひとつへと収束していく。


「そうだ! 俺はあの格上のグリフォンと戦って、勝ったんだ! あの子の仇を……俺たちの場所を守り抜いたんだ!」


命を削るようなギリギリの死闘だった。


200以上もレベルが離れた怪物相手に、一歩も引かずに勝ち取った勝利だ。


胸の奥から、こみ上げてくる強い達成感と安堵。


「……で、ここはどこだ?」


思考が現実に戻ると同時に、ふと素朴な疑問が口をついて出た。


『永灯さん』


「!?」


暗闇の静寂を破り、頭の中に直接届く穏やかな声。


どこかで聞いたことがある、懐かしくも高潔な響き。


『永灯さん』


声のする方――暗闇の彼方に振り向くと、ぽつんと小さな光の玉が浮かんでいた。


「もしかして……自称神様!?」


俺は思わずその光に向かって駆け出した。


だが、いくら足を前へ動かしても、まるでトレッドミルの上にいるかのように光との距離が縮まらない。


くそっ! 言いたい事が山ほどあるんだ!


「なんでこんな危険な森に放り出したんだよ!」


大声を張り上げた俺の言葉を遮るように、光の玉から柔らかな声が届く。


「今は時間がありません。私の名前はワラン。空神のワラン・バイアミ」


「ワラン・バイアミ……?」


「永灯さん、空の教会、もしくは空の神殿でお待ちしております。それまでどうかご無事で――」


「ちょっと待ってくれ! 話はまだ――!」


伸ばした俺の手が、空を切る。


光が遥か遠くへと高速で遠のき、世界が急激に白く反転していった。


「――待って!」


目を開けると、視界に飛び込んできたのは見慣れたテントの天井だ。


伸ばした右手は、何もない空間を虚しく掴んでいた。


『目を覚まされたようで本当に良かったです、マスター』


脳内にダイレクトに響く、無機質ながらもどこか心底ホッとしたような声。


「あれ、アカシャ……俺は……」


『グリフォンとの決死戦において肉体と精神の限界を超過し、卒倒されました。かれこれ3日間、意識を失っていました』


「3日も!?」


思わず叫んで首を振る。


そうだ、俺はグリフォンとの超絶怒涛の死闘を制した直後、全身の緊張が切れて倒れ込んだんだ。


「……あ」


『マスター?』


「俺が意識を失う直前……誰かの足を見たような気がしたんだ。」


『ワラン様です』


「ワラン……?」


『はい。空神ワラン・バイアミ様です』


「……空の神様!」


ハッと目が大きく見開いた。


さっきの夢のような空間で会った自称神様のことだ!


「やっぱり本物だったのか! ていうか『時間が無い』とか言っていきなり消えるし、本当になんなんだよ!」


『直接お会いになられたのですね』


文句を垂れる俺に対し、アカシャは至極冷静なトーンで返してくる。


「ん? まあ、夢の中みたいな暗い空間だけどな。光の玉みたいな姿だったけど、直感で『あの神様だ』って感じたんだよ」


『マスターに強力な加護が定着したからでしょう』


「加護?」


『はい。ステータスをご確認ください』


アカシャが俺の脳内へウィンドウのようにステータスを展開した。


【対象】:篝永灯かがり えいと

【精神年齢】:50歳

【レベル】:94

【職業】:ゴーレム使い

【状態】:正常


空神ワラン・バイアミによって転生させて貰った転生者。


【スキル】

・アカシャ:レベル1

・インベントリ:レベル4

・ゴーレムマスター:レベル7


【ステータス】

HP:1578

MP:0


【派生スキル】

危険察知

気配隠蔽

認識阻害

並列思考

思考加速

自律制御

ゴーレム強化

憑依転身

感覚共有

スキル共有

スケーリング

インターセプト

アーマード(!)

シフトチェンジ

オートインテリジェンス

マルチマテリアル

エーテルドライブ


【加護】

空神ワラン・バイアミの加護


「お! 前まで謎の記号化されてた文字が、ちゃんと読めるようになってる!」


『マスターが神の真名『ワラン・バイアミ』を正しく認知したことで、情報開示のロックが解除されたと推測します。』


「なるほどな。で、この加護って具体的にどんな効果なんだ?」


『基本ステータス全体の底上げ、自己治癒能力の亢進、および運気パラメーターの上昇です』


「大分ざっくりしてるけど、要するに全体的な能力向上だな」


『はい。その加護による恩恵が無ければ、マスターの損傷した肉体は修復不可能な領域でした』


「死んでたって事か!?」


『はい』


ワラン様に会わなかったら、本当に二度目の人生も終わってたって事か…。


聞きたい事は山ほどあるが、二度も命を助けて貰ったワラン様には感謝しておこう。


俺は前世式に手を合わせた。


「よし! 新しいスキルが追加されてるみたいだな! 解析頼む!」


『かしこまりました。解析結果を提示します』


アカシャの淡々とした解説が始まる。


『まず1つ目、派生スキル【マルチマテリアル】。これは従来の『1つのゴーレムにつき単一の素材』という物理制限を解除する能力です。複数の異なる物理的性質を持つ物質を結合させ、単一のゴーレムとして構築可能となります』


「なん……だと!?」


思わず跳ね起きた。


今までは「土」なら「土」、「空気」なら「空気」でしかゴーレムを作れなかった。


だが、これが解禁されたらどうなる!?


関節部に空気を組み込んだ可動軸を作り動きをスムーズにできるし、腕部には「超高圧ジェット」の射出口を内蔵した多層構造ゴーレムも作れるって事か!?


何より男のロマン、ロケットパンチを搭載したゴーレムすら現実的になるんじゃないのか、これ!


俺の顔が自然と醜くニヤけていく。


『……マスター、大変品のない表情をされています』


「失敬な! 男の夢と無限の可能性に感動しているのだよ、アカシャくん!」


『……はぁ。では次へ進みます。2つ目の派生スキル【エーテルドライブ】について』


呆れ気味の溜め息を吐きつつ、アカシャが説明を続ける。


今日もアカシャは通常運転で何よりだ。


『これは大気中および環境中に無尽蔵に存在する環境魔力やエネルギーを捕捉し、マスターの精神エネルギーのバッテリーとして直接変換・代替利用するスキルです。これにより、マスターの精神的疲労を劇的に軽減し、本来のキャパシティを超える高負荷なゴーレム運用が可能となります』


「嘘……だろ……!?」


衝撃で声が裏返った。


外部エネルギーがどれくらい使えるかにもよるけど、供給され続ける事ができるなら、実質的に操縦コストがタダになるようなものだ。


完全自動化された巨大ゴーレム軍団の常時稼働すら夢ではない!


「破格すぎるだろ……グリフォン撃破のご褒美にしては豪華すぎないか!?」


『マスター、口角が上がりすぎています』


「おっと、いかんいかん。自重せねば」


顔を揉んで表情を整える。


しかし、心の中では踊り狂いたい気分だ。


『そしてもう1点。既存の派生スキル【アーマード】に進化の予兆が確認されています』


「え?」


見ると、ステータスの【アーマード】の横に、確かにピコピコと「(!)」のマークが点滅していた。


「これが進化のサインか? アカシャの時はこんなマーク出なかったよな?」


『私の場合は特殊な変化でしたので。こちらは派生スキルの純粋な機能拡張における仕様と考えられます』


「なるほど。で、解析結果は?」


『全身を覆う重装甲化ではなく、必要部位のみを選択的に局所装甲化する上位スキル【タクティカル・シェル】への進化が可能です』


「マジで!?」


今までの【アーマード】は、全身をフルプレートアーマーで包み込む大掛かりなものだった。


防御力は高いが、動きや視界が制限される事もあり、精神力のリソースを無駄に食う。


局所的な防護で済む場面でも全身を固めなければならないという、物理的効率の悪さが課題だったのだ。


それが部位ごとの局所装着に進化するなら、利便性はとんでもなく跳ね上がる!


「迷う必要もない! 即進化だろ!」


『ただし、進化の実行条件として【ゴーレムマスター】のスキルレベルを1つ消費する必要があります』


「……は? マジで?」


『マジです』


「え、じゃあゴーレムマスターのレベルが7から6に下がるってこと? それだと、さっきの【マルチマテリアル】と【エーテルドライブ】の2つの新スキルは即座に取得できなくなるんじゃ……」


『その通りです。レベル7で開放されたスキルは当然取得不可となる可能性が高く、新スキルの取得は次のレベルアップまで保留となる事が予測されます。』


「うわ……出たよ、悪趣味な選択地獄……!」


頭を抱えた。


「仮に進化を保留して、レベル8になった時に進化させることはできる?」


『解析不能です。この進化機会が失われるリスクを否定できません』


「仮に今進化させて、再度レベル7になったら新スキルはちゃんと取れるのか?」


『こちらも解析不能です。レベルダウンによるスキルツリーの挙動は前例がありません』


「おいおいおい……片方が永久に取れなくなったら泣くぞ俺は……」


苦渋の決断を迫られる。


物理的な利便性や総合戦闘力で考えれば、間違いなく【マルチマテリアル】や【エーテルドライブ】を取得した方が圧倒的に強い。


だが……もしこの進化チャンスを逃したら?


ふと、俺は自分の右腕に目をやった。


握り込もうと力を入れるが、筋肉がピクリと痙攣するだけで、指先が上手く動かない。


グリフォン戦で至近距離で水素爆発を放った代償だ。


右腕の末梢神経と筋組織、皮膚が思った以上に深刻なダメージを受けている。


瀕死を回復させたワラン様の加護の恩恵を持ってしても、運動機能の完全回復には程遠い。


『マスター……やはりその右腕は……』


アカシャの痛々しそうな声。


「ん? ああ、まあ正直なところ、感覚が鈍くて力が入りづらくてね」


『……申し訳ございません。私がもっと完璧なサポートを行っていれば……』


「おいおい、また自分を責めてるのか? 言っただろ、これは俺自身の作戦で、俺が納得して受けて立った結果だ。お前が謝る必要なんてどこにもない」


アカシャはずっと気にしてるようなんだよな。


俺がこの腕をかばうたびに、アカシャは心の中で小さな傷を深めていくのだろうか…。


「――よし、決めた! 【アーマード】を進化させる!」


『よろしいのですか!? 演算上、新スキルを取得して外部操作に特化する方が、マスターの生存確率は高くなると試算されます』


「いいんだよ。取れる選択肢があるなら、その場で確実に回収するのがゲーマーの矜持ってものだ!」


『……』


「それにさ、レベルアップすれば新スキルが取れる可能性は高いじゃない。進化の機会の方が獲得優先度は高いと、俺のゲーム脳が言ってるのだ!」


『……承諾いたしました。ではゴーレムマスターのレベルを1消費し、【アーマード】を【タクティカル・シェル】へ進化させます。よろしいですか?』


「了!」


その瞬間、胸の奥から温かいエネルギーが膨れ上がり、スッと抜けていく感覚があった。


アカシャが進化した時の気絶に比べれば、拍子抜けするほど軽い感触だ。


『処理完了。【アーマード】は【タクティカル・シェル】へと正常に進化移行しました』


「よし、早速試してみるか!」


俺は不自由な右腕を持ち上げ、意識を集中させた。


「【タクティカル・シェル】発動!」


一瞬で足元の土壌から精密な土が引き寄せられ、右腕の表面を覆っていく。


腕全体を固めるのではなく、指先、手首から肘、上腕にかけての主要な筋肉と骨格に沿うように、しなやかで強固な土の複合装甲が形成された。


「うおぉぉぉっ! かっけぇぇぇ! 見ろよアカシャ!」


ブンッ、ブンッ!と右腕を振ってみる。


力が入らなかった右腕が、土の外骨格パワードスーツに補助されて、以前以上のパワーと精度で完璧に駆動している!


「凄いわこれ! ゴーレム強化が直接乗ってるから、怪我する前より動きが滑らかだぞ! 完全なパワードアーマーだ!」


傷んだ神経に代わり、ゴーレムマスターのスキルでの精神同調が物理的な動作を肩代わりしている。


調子に乗った俺は、右腕を顔の前に突き出し、ニヤリと悪役のような笑みを浮かべた。


「くっ……アカシャ、俺から離れろ! 俺のこの右腕に封印されし破壊の衝動が……世界を滅ぼしてしまう前に絶ち切るのだ……!」


『マスターの現発言およびポージング、一言一句漏らさず永続記録データへアーカイブ保存いたしました』


「……ごめんなさい。今すぐ消去してください何でもしますから」


ガックリと肩を落とす俺。


『マスター』


「ん?」


『……いえ、なんでもありません』


だが、脳内のアカシャの気配が、どこか柔らかく笑っているような温かさに包まれているのを感じた。


罪悪感を抱いていたアカシャの心が、少しでも軽くなったのなら……それだけでこの選択は大正解だ。


「さて! これからの予定だが」


俺は久しぶりにコットを降り、テントの外へ出て、両足でしっかりと大地を踏み締めた。


3日も寝ていたとは思えない程、体は軽かった。


そのままハイバックチェアに座り、ペブル・ゴーレムを作り出す。


「まず、この大岩拠点周辺にスタレーニの畑を作ろうと思う」


『以前仰っていた、異世界農園計画ですね』


「そうそう。で、今後のロードマップだけど……」


俺の指示に従い、小型の書記用ペブル・ゴーレムが足元の整地された地面に枝でサッサッと文字や図を描いていく。


「こんな感じでどうだろう?大体2ヶ月くらいかなと思ってるんだけどさ。」


『時間の見積りが少し甘い気もしますが、マスターの努力次第、といったところでしょうか』


「だな〜。スローライフでのんびり暮らすためにも、今は汗を流して頑張らねば!」


『のんびり生きるために死ぬほど働くというのは、論理的に矛盾していますね』


「それな」


俺はくすりと笑う。


そのままハイバックチェアから勢いよく立ち上がり、グリフォン戦ですっかり開けた森から見える澄み渡る大空を見上げた。


「よし! それじゃあ『空の神殿訪問計画』、始動しますか!」


俺はこれから始まる拠点作りに向けて、歩きながらストレッチをした。


「あ、気になってたんだけどさ、よくあの戦いでこのテント大丈夫だったなって。加護のおかげ?」


『私が戦闘前に収納しました』


「さっすが〜」

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる! と思っていただけましたらブックマークや評価応援していただけると嬉しいです。


次回、第26話:【町へ】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

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