第20話:ゴーレムの正しい作り方と使い方を教えてやる
※タイトルを変更しました。
「貴様ァァァ!! 死んだぞ人間!!」「それはテメーだ、このクソ鳥がァァァ!!」
グリフォンの行動に怒りを大爆発させた永灯。絶望的なレベル差の中、今、グリフォン討伐への戦闘を開始する。
俺の絶叫と同時に、俺とグリフォンの中間地点の地面から、数十体もの『マッド・ゴーレム』が土の飛沫を上げて勢いよく出現した。
全員グリフォンクラスの大きさだ。
それを見たグリフォンは、信じられないものを見たというように目を丸くした。
驚いたのか?ゴーレムを見たこともはじめてとか?それは意外だな。
と思った次の瞬間、大気を震わせて大爆笑した。
「ギャーッハハハハハハ!まさか、あのゴーレムを作るスキルか?!」
「……」
「我も昔、『ゴーレム使い』などという人間を喰うたことがあるが……そのスキルのゴミさ加減に驚き、スキル自体を捨てたわ!まさか、そんな人形遊びで我の相手になると本気で思っているのか?」
前足で地面を叩き、涙を流すほど笑いが止まらないようだ。
あいつ、獲得したスキルを捨てられるのか。便利な能力だな。
そんな分析をしている事もつゆ知らず、グリフォンは笑い続けた。
「はぁ。はぁ。久々に大笑いしたわ!!アルチャとは大道芸人のことだったとはな!貴様など、喰らう価値も無いわ!」
グリフォンは右前足を上げ
「ただ、笑わせてくれた褒美をくれてやろう。この前足一本で、虫ケラのようにひねり潰してくれるわ」
グリフォンが鼻で笑ったその瞬間だった。
グリフォンの顔面の至近距離で、光を遮るほどの白い水蒸気が、大爆音と共に吹き荒れた。
ドォン!!!
超臨界状態の熱水が一気に気化し、1,700倍へと膨張した衝撃波が奴の顔面を襲う。
そう。俺はサラマンダー・エイプの顔面に食らわせたハイドロ・バーストを使った。
もちろん、更に強力にして。
凄まじい熱風と蒸気が晴れると、驚愕と焦燥に満ちたグリフォンの顔が現れた。
なんだ!?何が起きた……!?一瞬、本能的な悪寒がして『マジックシールド』を展開したが、防がねばかなり危なかった。まさか、魔法か!?いや、あのゴミスキルは魔法を使えぬはず。別のスキルを隠し持っているのか!?
目を血走らせ、ブツブツと呟きながら俺を分析し始めるグリフォン。
『マスター』
『そうだな、冷静になられても困る』
俺は、挑発的に肩をすくめてみせた。
「独り芝居は終わったか?もう少し芸の精進しろよ。退屈だったぜ」
「貴様ぁぁぁ!」
「そんなに気になるなら、このスキルの、ゴーレムの正しい作り方と使い方を教えてやる!」
次の瞬間、グリフォンの全身を包み込むように浮かした極小のウォーター・ゴーレムたちを、一斉にハイドロ・バーストさせた。
「!!」
ドババババァァン!!!
「アーマード!」
俺は即座に土の鎧を纏い、何体かのマッド・ゴーレムを自分の前に一列に設置し、襲いかかる爆風と衝撃波をやり過ごした。
広場全体が土煙と蒸気で全く見えなくなった。
やがて、しとしとと泥の雨が降る中、土埃の向こうからグリフォンの巨体が姿を現す。
「倒せるとは思ってなかったが、無傷かよ……。」
サラマンダー・エイプをボロボロにした威力が、全く通じてないのか?
『敵の周囲に展開された、マジックシールドによるものです。しかも、先ほどとは出力が違います。極めて強固な魔力障壁です』
「やっかいだな」
グリフォンの顔から完全に余裕が消え、一瞬で消す、という意思が感じられる目つきになった。
「うざいな、貴様……」
グリフォンの周囲の空気が、キリキリと金属的な音を立てて収縮していく。
『マスター、魔法が来ます。第一階梯魔法「エアショット」と推測。しかし、グリフォンの膨大な魔力により、威力は第三階梯クラスにまで跳ね上がっている可能性大です。』
『第三階梯って、具体的にどんな威力なんだよ!?俺は魔法の常識なんて知らないぞ!』
『恐らく、最大硬度で作成したマッド・ゴーレム10体は、一瞬で貫通されます』
『なんだよそれ!ふざけてんな!』
俺は即座に最大硬化したマッド・ゴーレムを縦一列に、20体同時に展開した。
直後、ズォン!!という大砲のような重低音が響き、最初の10体のゴーレムの上半身が一瞬で木っ端微塵に吹き飛んだ。
よし、アカシャの演算通り!
恐らく魔法は連続で使用できないはず。このまま残りのゴーレムを突っ込ませる!
だが、その時
――ジジジジジジッ……。
「!!」
この、空間を焼き焦がすような音!
気づいた瞬間、残り10体のゴーレムが完全に貫通され、俺の顔の左半分を覆っていたアーマードのゴーレムがバキバキと砕け散った。
「っぶな……!!」
冷や汗が背中を伝う。
『思考加速』を使ってなお、首を右に傾けるのがギリギリ限界の速度。
バイオレットホーン・ラビットのレールガンだ。
しかも、ウサギの物とは比較にならないほど巨大で、強力な弾丸。
『さすがです、マスター。あの音に気づかなければ、頭が汚ねえ花火のように……』
『はい、そこまでな。ウサギとの戦闘経験があってよかったわ』
俺は砕けた顔の鎧を再構築しながら、不敵に笑いながら右手をひらつかせた。
「おいおい、前足だけで十分って言ってなかったか?ずいぶんと色んな力を使うじゃねえか」
見るだけで命を奪われそうな憎悪を込めた目で俺を睨みつける。
おうおう、お怒りMAXじゃないの。
でも俺も同じくらいお前に頭に来てるんだよ!
俺は半笑いで
「……ああ、そうか。おじいちゃんだから、さっき自分で言ったことも忘れちゃうんだな。ごめんごめん!帰り道ならあっちだぞ?」
俺は親切そうに、森の外を指差してやった。
グリフォンの怒りが限界突破した。
「貴様ァァァァァッ!!」
大地を揺らす咆哮と共に、奴が猛然と突っ込んでくる。
立ち塞がる障害物を、全て肉体ごと粉砕するつもりの突撃だ。
それを食い止めようと構えるゴーレム達。
その姿を見ても、そんなもの全て無意味と言わんばかりに、全くスピードを落とさず突っ込んでくる。
と、ゴーレムとグリフォンがぶつかるその瞬間。
――ズドドドドドドドーン!!
「!?なっ……!?」
グリフォンが思わず叫ぶ。
突然、地面が大きく陥没し、グリフォンの巨体が地中へと真っ逆様に落下していく。
「引っかかったな!」
俺は地中に10メートルクラスの巨大なマッド・ゴーレム10体を潜ませ、地下をあらかじめ空洞化させていたのだ。
その巨大マッド・ゴーレムで地上の土を支え、地上の土を使って普通にゴーレムを作る。
そして奴がそこを通る瞬間、地下の巨大ゴーレム達が狙って地面を崩落させたのだ。
そう、古典的だが効果抜群の罠、『落とし穴』だ!
「そのままグリフォンを叩き潰せ!」
地下の巨大ゴーレムたちが、奈落の底に落ちたグリフォンへ向けて一斉に拳を振り下ろす。
ダメージを与えるには十分な力と質量だと確信した、その直後。
落とし穴の底から、天を穿つような超巨大な竜巻が巻き起こった。
「なん、だ……ッ!?」
巨大ゴーレムたちの身体が、一瞬で削り取られ、ただの土埃となって上空へ吹き飛ばされる。
『第六階梯魔法「テンペスト」です』
『第六?!俺のレベルの半分とはいえ、巨大な上にゴーレム強化も乗せてたんだぞ!?一瞬で全部消されるって、どういう威力だよ!』
『テンペストは本来、周囲の地形ごと全てを切り刻み消滅させる天災級極大魔法です。ですが自分が受けるダメージを最小限に抑えるよう、出力をコントロールして使用したと推測されます』
「抑えてあの威力なのかよ……。」
土の雨が降り注ぎ、立ち込める土埃が視界を遮る。
その奥から、大気を力任せに押し潰すような羽音が──バサ、バサと、静かに響き渡った。
濁った大気の中で、グリフォンが巨大な双翼を広げる。
その金色の瞳に宿るのは、一切の慈悲を排除した、純度の高い『殺意』そのものだ。
空の支配者が土煙を切り裂き、その巨躯を天へと舞い上がらせ、俺を見下ろしている。
「少しはダメージが通ってるといいが……。本番はこれからって所か」
俺は、再度ゴーレムの鎧を纏わせ始めた。
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次回、第21話は【猛攻撃】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。




