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ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜  作者: 水無月 五色
スタンピード編

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第103話:飛行魔物の襲来 その1

「一体、どうなってるんだ……?」


誰かが絞り出すように呟いた。


地平線の彼方から湧き出すように現れた、飛行系の魔物の大群。


空からの強襲が加われば、防衛線が崩壊するのは火を見るより明らかだった。


防壁の上の冒険者達は、その覚悟もしていたし、力も温存していた。


しかし、戦況を見下ろしていたハンターの一人が、眉をひそめて声を上げる。


「飛行系の魔物が……足止めされてないか?」


他の冒険者たちも首を縦に振る。


「ああ、間違いない。あのスパウンが防いでいる辺りで、次々と空から落ちてるぞ!」


「ゴーレムって、空に攻撃できるのか!?」


ざわめきが波紋のように広がっていく。


キーニルは、杖を強く握り締めながら険しい表情で戦場を見つめていた。


濛濛と舞い上がる土煙のせいで、最前線で起きている事がよく見えない。


だが、ゴーレムの姿が現れる一瞬一瞬。


肩口から、一定の周期で白い煙の輪が吐き出されているのが見えた。


その直後、空を飛ぶ魔物たちが次々と内側から弾け飛び、血の雨となって地上へ降り注いでいるのだ。


「あの子……本当、わからない事ばかりだわ」


キーニルは舌を巻き、防壁を見下ろす。


ウルノラとレーヴァの常軌を逸した近接戦闘と魔法。


そこにあの少年の対空迎撃までこなしている不可解なゴーレムが、飛行魔物の足までも止めている。


戦線は、完全に持ち直した。


このままいけば、このスタンピードは持ちこたえられる。


彼女がそう思い始めた矢先だった。


「数百の飛行魔物が防衛線を突破したぞ!」


見張りの鋭い声が、防壁の上に緊張を走らせた。


生き残った飛行魔物たちが高度を上げ、ゴーレム群の迎撃範囲をすり抜けて、一直線に町を目指して飛来してきたのだ。


「焦らないで!」


キーニルが、風魔法で声を拡声して叫んだ。


「予想以上に数は少ないわ!ここで一網打尽にする!遠距離攻撃の準備!」


その凛とした声に、浮足立っていた冒険者たちが武器を構え直す。


総攻撃の準備を整えた、まさにその時だった。


「おい!ゴーレムが消えたぞ!?」


地鳴りのようなざわめきが起きた。


彼女がはっと地上に視線を戻す。


今まで最前線で鉄壁として機能していたゴーレムたち。


まるで糸の切れた操り人形のように、一斉に崩れ落ちてただの土塊へと戻ったのだ。


「あいつ、やられたのか!?」


「それとも、魔力切れか!?」


「こんな時に、何やってるんだあいつ!使えねぇ!」


冒険者たちの間に、再びパニックが伝染し始める。


だが、キーニルだけは違った。


視界を遮る砂埃のすぐ先。


彼女の鋭敏な魔力感知が、近づく異常な気配を正確に捉えていた。


……何、この魔力は!?


背筋を冷たい汗が伝う。


今までの大型魔物とは次元が違う、圧倒的で凶悪な魔力。


今回のスタンピードにおいて、最も危険な個体が間違いなくいる。


あの少年は……まさか、あれを止めるためにゴーレムを?!


……なんであれ、下に伝えないと!


キーニルは防壁の端へと駆け寄り、地上で戦うウルノラたちに向けて声を張り上げた。


「ゴーレムの壁が消失!最前線から魔物の群れが進行中!」


ドーザを含め、何人かの冒険者が驚いたようにキーニルを見上げる。


だが、すぐに交戦に引き戻された。


続けて、最も危険な魔物が迫っている事を伝えようと大きく息を吸った。


しかし、彼女はそれを無理やり飲み込んだ。


いずれ気づく者もいるだろうが、今は得策じゃない。


今の状態でこれ以上の絶望を与えれば、戦線が崩壊しかねない。


キーニルもすぐ戦闘態勢に入る。


頼むわよ、少年……。


そう思った瞬間、はっとした。


彼女は、自分が彼に期待していることに驚いたのだ。


凶悪な魔物に立ち塞がろうとしてるのは、あのスパウンだ。


勝てる見込みなど毛の先程もない。


しかし、スタンピードの進行を大幅に遅らせたあのゴーレムの錬成。


飛行系の魔物すら撃退する技術。


彼なら、あの化物をどうにかしてくれるのではないか。


なぜか、そう思ってしまうのだ。


「はあ、わけわかんない」


キーニルは自分自身に戸惑いつつも、淡い期待を胸に詠唱を始めた。


空を飛ぶ魔物は、すでに魔物の顔までわかる程迫っていた。


そんな中、再び大きなざわめきが起きた。


「なっ!?なんだあれは!?」


空を睨んでいたハンターが、引きつった声を上げた。


「魔物の上に、魔物が乗ってるぞ!」


全員の視線が上空へ集中する。


迫り来る、空飛ぶ巨大な絨毯のような魔物——スカイ・マンタ。


その平べったい背中の上に、ハイオークやトロル、ギガントロプスといった魔物が、しがみつくように騎乗していたのだ。


「違う種類の魔物同士がここまでするなんて、どうなってんだよ!?」


「ラマ・アガールの影響……だけじゃ、説明がつかないよな!?」


「間違いなく、後ろで操ってる指揮官がいるぞ!」


冒険者たちの顔に、明らかな恐怖が浮かぶ。


「ありえない…」


思わず呟いたキーニルも、背筋が凍るような感覚に襲われる。


同時に、強烈な焦燥感に駆られた。


乗っているのは間違いなく、今まで以上に強力な魔物。


もし、町の中にそいつらを投下されれば、防衛の意味がなくなってしまう。


「させないわ……!」


すでに詠唱を終えたキーニルが、杖を高く掲げて魔物へ向ける。


「火の第三階梯魔法!【フレイム・フラック(爆炎散弾)】!!」


彼女の背中にいくつもの魔法陣が浮かび上がる。


その中から超高温に圧縮された火の礫が無数に出現した。


「いけっ!!」


杖を振り下ろすと同時に、無数の火の礫が、迫り来る魔物の編隊へ向けて一斉に射出された。


魔物達の目の前で、次々に炸裂する。


すさまじい爆音の連鎖。


直後、上空に巨大な火球が咲き誇った。


魔物たちが肉体をズタズタに焼き裂かれ、そのまま地上へ落下していく。


スカイ・マンタの背中に乗っていた魔物たちも、炎に包まれながら次々と墜落してダメージを負った。


「すげぇ!複数一気に撃ち落としたぞ!」


「フレイム・フラックは制御がめちゃくちゃ難しいはずなのに……さすがはキーニルだ!」


冒険者たちが歓声を上げる。


「見とれてる暇はないわよ!」


キーニルが鋭く叱咤する。


「魔物が乗ってるスカイ・マンタを優先して狙いなさい!絶対に町の中へ入れちゃ駄目!」


その声にハッとした冒険者たちの目に、再び真剣な光が宿った。


雄叫びと共に、一斉攻撃が開始される。


空に無数の矢と魔法が色鮮やかな軌道を描く。


集中砲火を浴びた飛行魔物たちが、次々と悲鳴を上げて墜落していった。


しかし——


その濃密な弾幕を、力任せに引き裂いて突き進む巨大な影が三つあった。

ご一読いただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる!と思っていただけましたら、気軽にブックマークや評価、応援していただけると継続の励みになります!


次回、第104話は【飛行魔物の襲来 その2】(※次の話の予定タイトル)を更新予定です。

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