地獄の魔力制御
「本当に……ウォルフ様のスキルは魔法の常識から外れてますわね……」
魔術の試し撃ちのために転移した荒野で竜脈に干渉する魔術を試していたが、結果は俺達の想像以上のだった。
殆ど、無尽蔵に供給される魔力は俺の魔術の威力を大幅に引き上げる効果を示したのだ。
「これはヤバ過ぎだろ!」
「簡単に成功させた本人の言葉ですか!?」
クリスからも突っ込まれてしまった……
魔術に関してはともかく、俺自身は常識人だぞ?
最近、誤解が酷いと思う……
「これなら魔力欠乏症になる心配はないですね」
「エルフと戦う度になってたからなぁ……」
「特定の場所ではウォルフ様と同じ条件で戦えるかもしれませんが、ウォルフ様は場所を選ぶことなく戦えますのでその優位を活かす方法を考えないと……」
ホリーの言う通りだ。
ドゥニームの時の様に相手の土俵で戦わなければならないなら仕方ないが、条件が違えば俺が圧倒的に有利になるだろう。
逃げたヴィンズは仲間に俺のことを報告している筈だ。
それを逆手に取ることも可能だろう……
あの戦いでは魔術は殆ど使っていない。
奴らが魔法転送結界を使う以上、普通の魔法で傷を負うなんて考えてもない筈だ。
しかし、【時元牢獄】なら完全に奴らの不意を突くことが出来るだろう。
「ウォルフさん、以前に試していた太陽光を収束させる魔法は使えませんか?」
「それだっ!!」
「「キャッ!?」」
思わず身を乗り出して二人を驚かせてしまったが、クリスが口にした魔術なら、魔法転送結界に関係なくダメージを与えることが出来る筈だ。
あれは魔力で産み出した魔法ではない。
自然界の力を収束するだけのことだから、魔力を伴った攻撃と違って転送することなど出来る筈がないのだ。
早速、竜脈の魔力に干渉した俺は【大賢者】のスキルを発動させる。
「こんな感じか……」
遥か上空、雲の上に障壁を展開しながらレンズをイメージしていく……
俺達から少し離れた場所にある岩に太陽光を収束させると、一瞬で岩が溶岩に変わる。
そのまま収束した光を横に動かそうとすると、とんでもないスピードでかなりの距離を焼いていった。
「上空からの距離が長すぎて狙いを絞るのがかなり難しいな……」
「どのくらい動かすイメージだったんですの?」
「本当に僅かだったけど、あの距離を焼くことになってしまったんだよ……」
「ピンポイントしか狙えないってことですか?」
雲の上に展開したレンズ状の障壁の角度をほんの僅かに動かすだけで、地上までの距離がブレ幅を大きくしてしまう。
このままじゃ危なすぎて使うことが出来ないな……
上空で収束させた熱線を転送してみるか?
「転送用の魔方陣をレンズの近くに展開して、熱線を俺の任意の方向に転送させる方が安全だと思うから試してみる」
魔方陣に向けて収束させた熱線を、自分が展開する魔方陣へと転送させることが出来れば、ヴェレダ達の魔法転送結界の影響を受けずに攻撃出来るだろう。
転送後にどのくらいの距離を攻撃出来るのかで使用方法が変わってくる。
「ウォルフ様、その場合は転送用の結界に収束させる度合いで距離を調整出来ませんか?」
「長い距離を攻撃する時は収束させてしまう前に転送させて、転送後に収束した熱線になる様にってことですか?」
なるほど、その手が有ったのか!
「魔力量を気にしないで済むウォルフ様なら、巨大な障壁と転送の複数展開が可能ですので、調整具合さえ練習しておけば問題ないと思いますわ」
竜脈と俺を繋ぐ魔術だけなら、それほど大きく魔力を消費することはない。
そして、竜脈との繋がりさえ確立してしまえば魔力は使い放題と思われているんだな……
「魔力は確保出来るけど、竜脈から流れ込んでくる膨大な魔力を制御出来ないと自分が死にかねないんだぞ!?」
竜脈から流れ込んでくる魔力量を用途、状況に合わせて制御しながら戦うにはかなりの鍛練が必要だろう。
【大賢者】の効能である魔力制御の精密化、思考速度の限界突破が不可欠になる。
上空の障壁の調整、転送結界との距離の調整、竜脈から流れ込んでくる魔力量の制御、その上で戦闘における身体強化となれば魔術の四重展開だ……
「【時元牢獄】を使いたいだけだったのに、とんでもないことになってしまったな……」
「魔力に制限がないなんて状態では、仕方ありませんわ」
「ですよね」
確かに仕方ないよな……
それは理解出来るよ!
でも、実際やってみると洒落にならないんだ。
少しくらい愚痴ったっていいだろ!
アアアアアアアッッッ……
面倒くせー!!
馴れるしかないのか?
イチイチ考えないで出来る様になるのか?
当たり前って感じになるまで何回繰り返すんだ?
考えるな、考えたら敗けだ!
面倒くせー、面倒くせー、面倒くせー……
イメージ!
しっかりとイメージ……
こんなことを考えながら魔力制御をしてる時間は……ほんのコンマ数秒だ……
繰り返しは鍛練の基本だ。
剣でもそうやって来たじゃないか!
生きてるって疲れるよな……
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