クラン強化計画発動
荒野で魔力操作の鍛練を始めて一週間……
魔術の四重展開も繰り返していればなんとかなって来るもんなんだな……
「ウォルフさん、目付きが良くないですよ?」
昨日の晩、クリスに言われた一言だ。
だいぶ追い詰められてたからなぁ……
今日からは実戦を想定した鍛練に入る。
ホリーが放つ【魔力矢乱舞】を避けたり、防いだりしながら、クリスが放つ氷の矢を熱線で溶かす練習だ。
複数でランダムに生成される魔力の矢が俺を狙う。
可能な限り身体強化で避けながら、障壁を展開して直撃しそうな矢を防ぐ。同時に上空では太陽光の収束と転送用魔方陣の展開、クリスが放つ氷の魔法を警戒しながら魔力を制御し続ける。
放たれた氷塊に向けて収束させた熱線を放つ。
「まさか、一回で成功させるなんて……」
「ウォルフ様、これなら実戦で使えますわね!」
狙いをつけることは思考の超高速化のおかげで簡単だったが、そこに到るまでの魔力制御は未だに不安が残る。
「悪いんだけど、もう少し付き合って貰えるかな?」
「「勿論です(わ)」」
二人も魔力が許す限り付き合うと言ってくれたので、そのまま鍛練を続けることにした。
避けられた時に相手が距離をとると想定して、複数の転送結界を展開しておけば離れた距離でもタイムロスの少ない攻撃をすることが可能だろう。
とにかく魔力制御だ!
これからの戦いで勝敗を左右することは間違いないと判断した以上、魔力制御の鍛練に集中するべきなんだ。
ホリーの魔力が限界に来た俺達は拠点に帰って休むことにしたが、俺は再び荒野に戻って鍛練した。
拠点の庭で剣の鍛練を続けていたマークとユリアに触発されたからだ。
二人はエルフとの戦いで足手まといになりたくないと、剣術に磨きをかけるために厳しい鍛練を繰り返していた。
「剣の道が一朝一夕にいかないのは仕方ないが……ウォルフ、お前のスキルはどうなってるんだ!?」
ホリーから魔術の進展具合を聞いたマークとユリアが晩飯後に噛み付いて来た。
剣、魔術共にとんでもなくレベルアップしてしまった俺に納得がいかないんだろうな……
「ふざけんなっ、お前が努力と工夫を続けて来たことは納得してんだよ。色んな要素が重なって努力が開花したことは良い、納得出来ないのは……イメージすることが実現していく不条理になんだよ!」
「それは、私も同じですわマーク。魔導師団の研究して来た魔法では説明出来ない魔法ばかりですから」
「魔力制御するのも、かなり大変なんだぞ!?」
「俺達にもっと魔力が有れば、お前だけに負担をかけずに済むと思うと……悔しいんだ、俺は!」
マークの意外な本音に驚いた……
そんな風に考えてたんだ。
スヴェイン家を勘当された俺を見放すことなく、通常通りに接してくれていたマークとユリアに対して感謝することは有っても、負担だなんて考えたこともなかった……
「マーク、俺はお前達を頼りにして来たぞ。ヴィンズとの戦いも、お前達が周りの人間を安全に誘導してくれると信じていたから戦えたんだ」
そう、あの時周囲に気を使う余裕がなかった俺は、マーク達を信じていたからこそ戦いに集中出来たんだ。
足手まといどころか、頼りにしていたんだ!
それをマーク達に説明していく。
集団戦において役割分担が勝敗を分けることはクランの全員が理解しているので納得はしてくれたが、
「お前だけに危険を押し付けて、安全なところから支援しか出来ないってのは……情けないんだ……」
頭で理解しても、仲間が危険な状況で手を貸せない状況では感情的に難しいんだろう。
「本当は……実現出来れば教えるつもりだったんだけど、竜脈から引き出した魔力をみんなに送り込む魔術も考えているんだ。そうなると、今以上に多重の魔術を展開する必要があるから……俺の魔力制御を鍛える必要があるんだけど」
竜脈から引き出した魔力を俺だけが使う必要はない。
膨大な魔力をクラン全員で扱えるなら、ホリーとクリスの魔法は勿論、マークとユリアの身体強化、障壁も確実にレベルアップして使うことが出来る。
但し、流れ込む魔力量が多過ぎれば……制御不能となった魔力が皆の身体を壊してしまう危険がある。
それを防ぐためにも、俺の魔力制御のレベルアップが必須となる。
「「「「エエエエエエエッッッ!?」」」」
「まだ可能性の段階だぞ!?」
四人の反応に対して冷静に突っ込みを入れる。
「ウォルフ、明日からは俺達も協力するぞ!」
「そうね、ホリーとクリスだけじゃなく私達も攻撃に加わるから頑張って!」
「ウォルフさん、明日も頑張りましょうね!」
マーク、ユリア、クリスが前のめりになってキラキラとした眼を向けてくる。
「お、おう」
戸惑いながら答えた俺の横でホリーが呟く……
『邪魔者が増えますわね……私の幸せを邪魔するならマークとユリアには地獄を見せて差し上げますわ』
怖すぎるぞ、ホリー……
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