今度こそ、古代竜に会いに行こう
馬鹿王子の教育って名目で、アルフレッド殿下に仕返しをしようと協力をお願いした父上とエリー様は、それを利用した策謀で俺を嵌めたって気がするんだが……
何を言っているのか解らん?
俺だってそうなんだよ!!
ハルムントの拠点に帰った俺はマークに愚痴っていた。
「これで私とウォルフ様はレイスル王国が認めた夫婦ですわ。寝室も一緒にしなくては!」
と、宣うホリーをなんとか宥めた俺に同情したマークを相手に愚痴っていたのだ……
「何でこんなことに……」
「そろそろ、諦めて現実を受け入れたらどうだ?」
「昔から、ユリアの尻に敷かれてるお前に相談した俺が馬鹿だったよ……」
「お前、ユリアに聞かれたら!?」
「ウォルフ~、そんな風に見てたんだ~」
何故……いつの間に居たんだユリア!?
静かな怒りを露にしたユリアと、俺は関係ないって態度のマークに挟まれた俺に救世主が現れた。
「ユリアは自覚がないにも程がありますわね」
「ホリー、失礼なこと言わないでよ!」
「私はウォルフ様の仰ることなら、あなたの様に暴力で覆すことはしませんわ」
「それは、あなたがドMだからでしょ!!」
何気に……凄い話になって来たな……
言い争うユリアとホリー……その横でオロオロしてるクリスを残して、俺はマークと気配を消して逃げ出した。
「試してみないとわからないんだけど、【大賢者】を使えば古代竜のところに転移出来るかもしれないな」
翌日、朝食時にふと思い付いた。
「そんなこと出来るのか?」
「なんとなく……出来る気がするんだよな」
「『なんとなく』って……転移よ?」
「転移の魔法すらなんとなく……ですか」
「ウォルフ様に不可能は御座いませんわよ!」
転移の魔法は、魔法陣を付与した魔石が展開する結界と、自分が展開した結界を繋げることで発動している。
それも考えてみれば不条理なことなんだよなぁ……
もしかすると、【神仙術】のスキルの効果が不条理すらも可能とさせているのではないのだろうか?
古代竜と初めて会った時、古代竜は俺を転送させて自身の元に呼び寄せた。
現在の俺は、古代竜と同じ魔力操作の精度を持っているとグラディアス様から聞いている。
なら、【神仙術】の効果も期待値に入れて考えれば、古代竜と同じ様に任意の場所から任意の場所へと転移、転送も可能ではないだろうか……
俺は、その考えを説明した。
「理屈としては……確かにって思うんだが……」
「幻想種って言われてる古代竜と同じことが出来るかもって、人間じゃないわね」
「ウォルフ様と凡人を一緒にしないでくださいます?」
「凡人って域じゃない気が……」
「ヴィンズが使った魔法もエルフの魔法の中に無かった魔法だと思う。それも含めて古代竜に聞きたいことがあるから、とりあえず試してみる」
自分一人で行くと告げた俺に、全員が反対したが……
「もし、失敗した時に一緒に全滅なんてことになったら助けてくれる人間がいないってことだろ?」
と、説得して引いて貰った。
ホリーだけは、
「夫婦は生きるも死ぬも一緒ですわ!!」
と、譲ろうとしなかったが、万一の時に魔法でなんとか出来るのはホリーだけだからと説得した。
『集中したいから』という理由で自分の部屋から転移しようと試みた俺の前にはホリーが座っていた。
万一の時に対処を考えるとしても、状況を把握してないとどうにもならないと言われたからだ……
【竜の巣】の最下層……
古代竜の強大な魔力と存在感……
あの時見た、周囲の光景……
【大賢者】を発動した俺は、出来るだけリアルにイメージしていく。
そこに繋がる魔方陣の結界……
ずれていた焦点がピタリと合ったような感覚!
「ウォルフ様!?」
その一瞬を逃さず転移した俺の目の前には、驚いた様子がない古代竜の姿があった。
『もう少し、早く訪れると思っていたのだが?』
「俺がここに来るとわかっていたのか?」
『あのエルフ達とお前が接触したことは知っている』
「あれほどの力を持っているとは……正直思ってなかった」
『自分の力を過信したか?』
「そんなことはない……とは、言えないな……」
『奴らは我を恐れ、人間の中に紛れて自身の存在を隠し続けている。我が奴らを殲滅しようとすれば、人間の国がいくつか消えることになるだろう』
バルガナーン大森林で討伐した土竜と違い、俺の目の前にいるのは正真正銘の幻想種である古代竜だ。
土竜に代表される亜竜種は、普通の生物としては最強クラスの力を持つが、その生態も普通の生物でしかない。
つまり、食事をして……繁殖により増殖していく。
しかし、幻想種と呼ばれる存在は自然発生した究極の個体と言われている。
親となる個体は存在せず、超高濃度魔力の集合体である身体は食事も必要としない。
これが【神に選ばれし存在】とされる所以である。
『それを承知でここに来たのであろう。お前の手には負えないと泣きを入れに来たか?』
御挨拶だな……
敢えて、挑発的な物言いをして来たか……
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