陰謀の上級者
「それは、我がレイスル王国に協力するかどうかは胸先三寸だということか?」
「協力の種類次第でしょうね」
独自にエルフを追うと宣言した俺達に、国王陛下が疑念をぶつけて来た。
「種類とは?」
「部下の生命を使い捨てる様な命令に従うつもりはありませんので……」
国王陛下が平民の俺達に対して頭を下げられたというのに、元凶であるアルフレッド殿下は謝罪の言葉さえも口にしていない。
これでは、『二度と同じ過ちは繰り返さない』なんて言われても信用することなど出来る筈がない。
「先程申し上げましたが、俺達はレイスル王国に対し敵対するエルフの一味の討伐を目的としています。思惑の違いは有れども、目的は同一となりますので、陛下が御懸念される様な事態にはならないかと……」
「どうあっても、軍の指揮下には入らないと?」
「逆にお伺いさせて頂きますが、俺達の戦力を軍に組み入れることが可能と思われますか?」
陛下は、俺とヴィンズの戦いを実際に目にしたグリッドを問い質す。
「グリッドよ、そなたはどの様に思う?」
「畏れながら申し上げます。クラン【黒狼】の方達の戦力は我々と隔絶し過ぎており、王国軍の最精鋭部隊であろうが……彼らの足を引っ張る存在になると思われます」
『常在戦場』を旨とするスヴェイン門下生で構成された俺達のクランと比べられる部隊の方が気の毒だな。
それを理解されているから、俺達の企みにエリー様と父上が同調してくれたんだから。
「陛下、軍事顧問の立場で意見させて頂きますが、愚息達のクランを解体して軍に組み込むならば、軍の戦力は……逆に落ちると申し上げておきます」
「陛下、魔導師団も同じですわ。今のウォルフ君やクラウディアを組み込んでも、戦力の底上げどころか……ウォルフ君達の戦力を下げることになるだけでしょう」
「それは……どういう訳なのだ?」
「実戦経験の差……でしょうか?」
父上とエリー様の言葉の意味を理解しかねていた陛下の代わりに、グリッドが聞いて来た。
「その通りだ!」
父上は続ける……
「今回の件、殿下とグリッドが判断を間違えた理由もそこにある。自らの生命を賭けた実戦を続けて来た愚息達と、机上の理論だけで実戦を経験したつもりになっている者が同等に戦える筈があるまい!」
「スヴェイン卿、言葉が過ぎてないか!?」
アルフレッド殿下が反論しようとするが、
「やめんかっ!!」
国王陛下の一喝で、殿下は言葉を発することが出来なくなった。
「殿下……納得されていない様ですが、実戦を経験した者ならば、今回の殿下の様な行いはしません」
エリー様が、諭す様に語りかける。
「目の前で、かけがえのない大切な仲間の生命が……あまりに簡単に消えていくのが実戦です。それを経験した者ならば、自分の感情よりも優先するべきものが見えてくるものです」
「くっ!」
「殿下は『高貴なる者達の責任』の精神に則った行いをされたとお思いになられますか?……私には、投降した帝国兵を含めた協力者を危機に陥れた存在に対し、自身の不利益を省みず非道を質そうとするウォルフ君の行いにこそ、その精神を感じられるのですが?」
「……」
エリー様の言葉の後、沈黙の時間が流れる……
「私が間違っていた。ウォルフを含め、その場にいた者達全員に対して謝罪したい……」
ボンボンで馬鹿ではあるが……
英雄に憧れるアルフレッド殿下は自身の過ちを受け入れ、頭を下げてくれた。
まあ、怒りを露にした俺達を止めることなく、殿下の行いにこそ非があると父上、エリー様、更には国王陛下から責められたんだ。
これで気が付かないほどの馬鹿ではなかったってことだ。
これで、馬鹿王子の教育は終了だ。
後は、俺達の自由に承認を貰うだけだ!
「陛下、ウォルフ君達がレイスル王国を捨てることがないかと御心配されていると思われますが、それについては妙案が御座います」
「おお、その様な考えがあるのか?」
「リーヴァル公爵家の娘をウォルフ君に嫁がせれば、ウォルフ君は遠縁とはいえ王家と血縁を持つ存在になります」
エリー様、その話を持ち出すのか!?
父上、反対してください!!
「現状、それ以外の妙案はないかと……」
賛成してんじゃねえぇぇぇぇっっっ!!
国王陛下まで承認済みなんてことになったら、ホリーの暴走を止めることは不可能になってしまうじゃないか!!
「「良かったなー、ウォルフ」」
ラルフ兄さん、ゲイン兄さん、何で棒読みなのか説明して貰おうか!!
「剣聖の血筋が王家の血筋に……悪くないな!」
「叔母様、最高ですわ!!」
これは……
俺一人が反対出来る空気じゃないぞ……
「ウォルフ君、クラウディアを宜しくお願いしますよ」
エリー様から、トドメの一言が……
眼が笑っていない笑顔と共に、俺に向けられた……
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