何処まで本気?
「標的のエルフですが、ヴィンズという名前のエルフでした。本人の話ですが、人間の魂を喰らって不老の力を得ている化物らしいです」
「人間の魂を!?」
「はい、そのためでしょうが……通常のエルフとは違う禍々しい魔力と、とんでもない魔法を持っていました」
「どの様な魔法か?」
「地下に眠る力、具体的にはマグマその物の力で周囲を焼き尽くす魔法です」
「その様なことが可能なのか!?」
「それほどの魔法を使うということを確認したのか?」
国王陛下だけでなく、王太子も反応する。
「実際に使われました。アルフレッド殿下の密命を受けたグリッド殿が介入して来なければ、その様な魔法を使う隙を与えることはなかったと思われますが……」
「焼き尽くされてないではないか……」
自身が原因と言われたアルフレッド殿下が呟く。
「必死で抑えましたからね。そのおかげでヴィンズの逃走を阻むことが出来ませんでしたが!」
本気で反省してないな、このボンボン団長は!!
「そのおかげで、我々は人的被害皆無で任務を終えることが出来ました」
グリッドは負い目があるからか、素直に事実を報告する。
「それだけのことが可能な力を持ちながら、先にエルフを無力化出来なかったのか?」
「身体強化は【大賢者】を発動した俺と互角、剣術を研鑽してきた時間は比べものにならない。【ゾーン】では勝てないとグラティアス様が祝福を授けられた理由を実感することになりましたよ……」
「マークとの模擬戦で見せた様に、剣と魔法の両方で攻めればなんとかなったのではないか?」
どうしても、俺に落ち度があったことにしたいのか?
「リッチに魔法転送結界を教えて、レイスル王国に送り込んだのは奴らだったそうです。魔法は通じませんよ」
「「「リッチを送り込んだ!?」」」
父とエリー様には既に説明済みだが、初めて聞いた事実に王家の三人が衝撃を受ける。
「その辺りを追及したかったのですが、手負わせて追い詰めたヴィンズと俺の間に邪魔が入りました」
俺の隣でグリッドが項垂れているが、味方の生命を無用な場面で危険に晒したことは確かなので同情はしない。
部下の生命を預かる立場の人間なんだから、自身が罰される覚悟で部下を護ろうとするべきだったんだ。
「人間のことを『餌』と呼び、未知の魔法を持つエルフを生け捕りにしようとする……それがどれほど危険なことかも考えず」
俺は、怒りの表情で続ける……
「現場を知らない人間が無責任に下した密命に、盲目的に従った部隊長と無責任な密命を下した人間に問いたい、『あなた達の遊びで、どれだけの人間が生命の危機を迎えなければならないのか』と!!」
「遊びだとっ!?」
「国王陛下から、現場の指揮権を与えられた俺の邪魔をする密命を下す権限があるとでも?」
「そっ……それは……」
「正統な理由の無い『軍権』の行使、それを可能にしたのは第二王子という立場であり、国王陛下の命、即ち『勅命』よりも優先させる理由など皆無にもかかわらず、二人の企みで自軍を危険に晒した。『勅命』を奉じた将として、例え王族であろうが処断させて頂く!!」
国王陛下の制止を受けて、一旦は消していた魔力の矢が、再び俺の背後を埋め尽くした。
「殿下……いや、『謀叛人アルフレッド』、最後に言い残すことはあるか?」
「ぐっ…………」
「待てっ!!」
凍てついた空気を、国王陛下の声が切り裂く。
「愚息、アルフレッドが国民の生命を弄んだことは、国王としてではなく、愚か者を育ててしまった父親として、この儂が皆に詫びる。ここはそれで抑えて貰えんか?」
「国王陛下の命を弄んだ人間に対する処罰を、陛下自ら為されるなら、否など御座いません」
少し芝居がかってしまったが、無事に収まるかな?
これから、俺達の活動にアルフレッド殿下が絡み辛くなってくれれば、それで良いだけだし……
ボンボンの教育は、父上とエリー様にお任せで大丈夫だろう……たぶん?
「陛下、今回はアルフレッド殿下の要請を受け王国の軍事に関わりましたが、所詮は部外者としての扱いを受けることとなりました。今後、俺達【黒狼】は独自にエルフ達の動きを追いますので、御承認をお願いします」
「此度のこと、皆の不信感を増大させたのは遺憾だが、どうか許してやって貰えんか?」
「行動を伴わない言葉に信はおけません」
「初代剣聖の言葉を持ち出すか……」
かつて、平民から将軍に取り立てられた剣聖ガーランドを妬み、邪魔をする貴族達をガーランドが処断しようとした時、助命を命じた当時の国王にガーランドが答えた言葉を俺は引用させて貰った。
『口先じゃなく、行動で示してから言え!』って意味であり、スヴェインの家訓に近い言葉である。
【調律者】として、ヴェレダ達の企みと対決するためには、アルフレッド殿下の我が儘に縛られる訳にはいかないので、丁度良い機会だったことは秘密だ……
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