互角の戦い
「私の剣を受けて折れないとは、貴様もアダマンタイト製の剣を使っているのか?」
対峙したヴィンズが不思議そうな表情で聞いて来た。
「そこらの武器屋で買った、古い剣だよ!」
そう、今使っている剣は勘当された時に王都の武器屋で買った剣……ローレンスやリッチを斬った剣だ。
「ふざけてるのか?人間が造ることの出来る程度の剣で私の宝剣を受けられる筈がないだろう!」
「どこかのダンジョンで発掘された剣だ。人間以外の存在が鍛えた剣なのかもしれないな」
っていうか、アダマンタイト製の剣だと?
最硬と云われる超希少鉱物のアダマンタイト。
アダマンタイト製の剣なんて存在したのか?
それを受けられる俺の剣は一体?
『超お買い得だったのか?』
なんて考えてる場合じゃない!
剣速、重さは互角……
なら、勝負を決めるのは技しかない。
「お前達からすれば僅かな時間でしかないだろうが、人間の意地を思い知って貰おうか!」
こいつらが研鑽して来た時間と比べれば、スヴェインの剣なんて僅かな時間の研鑽だろう。
しかし、初代剣聖ガーランドから研鑽を続けて来た剣理の深さが劣っているとは思わない!
俺は眼を閉じたままで下段に剣を構える。
スヴェインの奥義の一つである『無明剣』だ。
自身の周囲に気を張り積めた結界を構築して、そこに踏み込む者に最速の一撃を加える『後の先』の極致の剣……
俺に使いきれるかどうかは判らない。
しかし、この膠着を破るためには使いきるしかない!
「フンッ、眼を閉じたままで観念したか?」
ヴィンズが魔法の詠唱を始める。
「我は求める漆黒に燃ゆる地獄の業火よ、血に飢えた竜となりて我が敵を喰らい尽くせ。『黒竜炎獄』 」
ヴィンズが放った漆黒の炎が竜を型取り俺に迫る。
生き物の様に蠢きながら迫る炎の竜に、俺は絶対零度の竜を魔術で形成してぶつける。
二匹の竜がぶつかり、凄まじい轟音と共に霧状に噴出した水蒸気が周囲を真っ白に染めた。
「貴様、無詠唱で魔法を使ったのか!?」
発現したヴィンズの魔法炎の竜に対応した絶対零度の竜。
詠唱していれば、俺は炎の竜に焼かれていた筈だった。
現実には、俺とヴィンズの中央部で二匹の竜はぶつかり合い対消滅することになった。
それは、俺の魔術が詠唱を必要としないことを如実に物語っている……
「魔法で俺に勝つつもりだったのか?」
敢えて、ヴィンズを挑発する様な台詞を選ぶ。
エルフにとって、人間を相手に魔法で負けるなんてことが許容出来る筈がない。
怒りで我を忘れてくれれば願ったりだ。
「人間ごときが……思い上がるなよっ!!」
頭に血を昇らせる作戦が上手くいったと思ったが、
「その程度で勝ったつもりか!?」
頭に血が昇ってる様に見えるが……
まだ、少し理性が残っているな。
「人間相手に剣でも、魔法でも勝てない様な『雑魚エルフ』を相手に、そんな策を弄する必要があるのか?」
エルフという種族は基本的に『自尊心』が高い。
その魔力、寿命等から、自分達を『選ばれし種族』と思っているからだ。
普段、自分達が見下している人間に互角の戦いを強いられている今の状況に『自尊心』を傷つけられてられていることだろう。
「餌の分際で……許さんぞ!!」
ヴィンズの頭には完全に血が昇った様だが、その言葉の中に不穏当な単語があった。
「お前達は人間を喰ってるのか!?」
思わず聞き返してしまった……
「貴様達、人間の魂は我等に不老をもたらすのだ。矮小な貴様達の命も我等の糧となるならば、少しは意味を持つだろう。我等に感謝するのだな!」
ドゥニームを見た時からの疑問だった、千年前と変わらない容姿と、ヴィンズから感じた禍々しい魔力……
これらは人間の魂を自身に取り込んだ結果なのか?
「ゾッとしない話だな。お前らごときに魂を喰われるなんて死んでも御免だ!」
「この私に向かって『ごとき』だとぉ……」
「耳が長いってことが、そんなに偉いのか?」
「きっ、貴様ぁぁぁぁっっっ!!」
完全に頭に血を昇らせたヴィンズが地を蹴った。
ヴィンズが冷静さを欠いた今が勝負時だ!
スキル【大賢者】の効果の一つである『思考の超高速化』のおかげでヴィンズの剣はハッキリと見えている。
身体強化の効果が互角なだけで、対応を考えるスピードは俺の方が上……の筈だ。
上段から迫るヴィンズの剣を紙一重の動きでかわし、下段に構えていた剣を逆袈裟に振るい、ヴィンズの腕を狙う。
チュインッ
手応えが皆無という訳ではなかったが、斬り落とせると思っていたヴィンズの左腕は繋がったままだった。
繋がってはいるが、深手を負わせることは出来た様だ。
「何っ、私の結界を斬り裂いて来ただとぉ!?」
リッチの結界を斬り、ヴィンズの結界も斬った。
この剣は本当に特別な力を持っているのかも……
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