貴族の陰謀
俺とホリーは万が一エルフが早目に補給に現れる事態に備えて、コーラル王国へと戻ることになった。
「これで両家の御墨付きですわね♪」
「いや、……とりあえずの処置じゃないのか?」
「ウォルフ様は私と結婚したくないのですか!?」
「俺が貴族って立場を好きじゃないってことをホリーは知ってるだろ?」
「幸い私は二女です。リーヴァル公爵家を継ぐのは姉様と、その夫となる方ですわ!」
「エリー様は、リーヴァル公爵家が後ろ楯って言ってたじゃないか!」
「叔母様とスヴェイン伯爵がお決めになられた以上、二人の未来は約束されたってことですわ♪」
ラスガカーン帝国の工作にエルフが絡んでるってことを報告に行った筈なのに、何で俺の未来を決められてんだ?
グラディアス様からヴェレダ達の野望を潰すことを依頼されてる俺達が、結婚してレイスル王国の貴族として縛られる訳にはいかないってことくらい、ホリーは理解してくれていると思っていたんだけど……
『どうしてもって時には、俺の魔術を含めた秘密をエリー様に教える必要があるか……』
俺は諦めに近い心境で走り続けた……
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その頃、王城近くのリーヴァル公爵家屋敷では、
「エリー様、御本心をお聞かせ願えますか?」
「本心も何も、そのままの意味ですわ?」
応接室で、苦り切った表情のカイルと笑顔のエリーが向かい合って座っていた。
「スヴェイン卿、あなたの軍事顧問として誰からも非難されない実績と清廉潔白な行いは、レイスル王国の国民全ての知るところです」
「清廉潔白と評価されているかどうかは……」
「そんなあなたが『冒険者として破格の功績を挙げ続ける』勘当した息子をスヴェイン家に戻したとなれば、野心有りと讒言してくる人間は必ず出て来ます」
「仰る通りですな……」
「跡取りのラルフ君、次男のゲイン君、家を出たウォルフ君の仲は決して悪くない……と言うよりも、非常に仲が良いと聞いております」
「幸い、下の二人はラルフを立てて、自らその下に付くことを望んでおります」
「そんな兄弟の仲が貴族の陰謀の中で翻弄される状況は、レイスル王国にとっても害悪でしかありません」
「しかし、初代剣聖ガーランドの剣を体得しつつあるウォルフをスヴェイン家の外に置く訳には……」
「だからこそ、クラウディアなのです」
「?」
「あの娘はリーヴァル家の娘ではありますが、幸い二女です。外に嫁に出したところで不自然ではありません。更に本人がスヴェイン剣術の門下生であり……あの破天荒な性格は王国上層部の方々の知るところです」
「はあ……」
「ウォルフ君の力は……いずれ世界中の人々の知るところとなりましょう。そうなった時、レイスル王国とスヴェイン伯爵家の両方と繋がりを持ち続ける存在として、クラウディア以上の存在はありません」
「……」
「スヴェイン卿も、いずれウォルフ君の勘当を解いて家に戻すおつもりで勘当されたのでしょう?」
「それは……その通りですが」
「ウォルフ君が家の外で研鑽を積む……冒険者として生きる道を選んだとしても、クラウディアと一緒になれば貴族としての扱いも受けられます」
「あの……エリー様」
「何でしょうか?」
「建前は置いておいて……そろそろ御本心を……」
「あらっ、お気づきでした?」
「……」
カイルがジト目でエリーを見詰める……
「エリー様は、昔から愚息のことを気にかけてくれておりましたからな」
「あの子は『貴族っぽくない』のよねぇ、それなのに『高貴なる者達の責任』を体現しています。クラウディアはスヴェイン卿が思っているよりも『残念』な性格の娘でしょう?そんなクラウディアを制御出来る伴侶として、ウォルフ君は申し分ないですから」
「そんなところだと思いましたよ……」
「いずれ、ウォルフ君の勘当を解いてスヴェイン伯爵家に戻した時、リーヴァル公爵家との婚姻関係は、スヴェイン伯爵家にとっても良い話だと思いますが?」
「魔導師団長と剣聖をスヴェイン伯爵家が独占なんて王家が御許しになる筈がないでしょう!?」
「ウォルフ君の他に、クラウディアを制御出来る殿方がいらっしゃるとでも?」
「確かに、魔導師団長の職務を放棄して逐電する様な……いや、失礼しました……」
「それも、ウォルフ君の存在が原因ですよ?」
カイルは頭を抱える……
「制御出来ない息子と娘です。別々にしておくよりも、一緒にしておいた方が良いと思われませんか?」
「より……厄介な未来しか見えないのですが……」
「ウォルフ君の性格においての責任はスヴェイン伯爵、あなたにあるのに……他人事の様な仰り様を」
「それを仰るなら、クラウディア嬢の性格はエリー様に」
「「……」」
「不毛な争いは止めましょう」
「そうですな……」
二人は無言で手を取り合った……
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