エルフの驚異は……
「納得出来かねる事態には、お前が必ず絡んでいるな」
『納得出来かねる』って言いたい気持ちは解らないでもないが、本当にヤバいところは隠してるぞ!
俺にしか使えない魔法じゃないってことなんだから、普通にホリーを褒めて終われよ!
「それよりも、その捕虜から聞き出した情報の話を……」
「一人で一軍を無力化出来るなんて重要な話が『それよりも』なのか?」
「俺達は『自慢』したくて、ここに来た訳じゃないんですよ。ラスガカーン帝国軍の補給線について……」
「当然、お前もクラウディアと同じか、それ以上の魔法を使えるということだな?」
クソボンボン、話を聞けよ!
「殿下、それは後で確認すればいいでしょう。それで、ウォルフ君が報告したいことは何ですか?」
エリー様が空気を読んでボンボンを抑えてくれた。
「ラスガカーン帝国軍の補給、略奪した物資の回収を担っていたのはエルフ一人です」
「エルフ……異空間収納ですか?」
「そうです。つまり、ラスガカーン帝国が軍を動かす時に補給線は必要ないってことになります」
「ウォルフ、それは本当か!?」
「四日後が補給の日になっているみたいですので、そこで確認することをグリッド殿と考えています」
軍事顧問である父は、補給線を必要としない軍の存在のヤバさを理解してくれたみたいだ。
「ウォルフ、君は軍の物資がどれ程の物か理解しているのか?」
「殿下、俺達はバルガナーン大森林でエルフと遭遇しています。その時に、異空間収納についても話を聞きました。エルフの異空間収納の容量は無限です」
「無限の収納なんて話自体が眉唾なんだがな」
ああっ、このボンボンは俺をイライラさせるな!
「アル兄様は『アホ』ですの?」
ホッ……ホリー、いくらお前でもそれは不味い。
「エルフの魔法について何の知識もない状態で、実際にエルフと逢ったウォルフ様の話を信じないなんて」
「「「「「「……」」」」」」
「クラウディア、言葉を選びなさい」
沈黙の中……エリー様がホリーに注意する。
「殿下の仰ることが例えそういったものだとしても『言葉遣い』には気をつけないといけませんよ、クラウディア」
エリー様、フォローどころかトドメですよ……それは!
ほら、アルフレッド殿下が涙目で震えてる……
「殿下、エルフの異空間収納について魔導師の間ではウォルフ君の報告通りと結論付けられてますのよ?」
「エリー様が仰るなら、間違いないのでしょう」
ほお、このボンボンは俺が言っても信用出来ないが、エリー様が仰ることなら無条件に信じるってのか!
『ウォルフ様、お顔に出てますわよ』
おっと、ホリーが指摘してくれなかったらヤバかった!
「とにかく、今回のラスガカーン帝国の動きの裏にはエルフが存在している可能性が高いです」
「エルフが関与することが、それほど危険なのか?」
「アルフレッド殿下は、エルフは異空間収納くらいしか役に立たないとお考えでしょうか?」
「歴史上、エルフが人間の国家間の争いに係わりを持ったことなど無いではないか!?」
「昨日まで無かったから今日以降も無い……とお考えで?」
「では、エルフ一人に何が出来ると言うのだ!?」
「冒険者ギルドに報告を上げてますが、トガチ村近辺で小規模な通商破壊を行っていたエルフを討伐してます」
「エルフが通商破壊だと!?」
「ウォルフ、それは何時のことだ!?」
国王陛下と父が凄い剣幕で反応した。
「アルフレッド殿下からコーラル王国の諜報を依頼される五日ほど前です。その報告をするためにハルムントのギルドに行った時、殿下から呼び出しだと言われましたので……」
「あの時、なぜそれを報告しなかった?」
「未だ調査中ですので、討伐したエルフの目的が今回のコーラル王国での出来事と繋がるのかすら解っておりません」
『お前がヒトの話を聞かないからだよ、ボンボン!』
内心そう思ったけど、それを口に出来る筈ないよな……
「エルフを討伐したというお話ですが、そのエルフは一人で通商破壊を行っていたのですか?」
「そのエルフは次元ごと切り裂く魔法を使って、私の左腕も斬り飛ばしましたのよ、叔母様」
「クラウディア、あなた怪我なんてしてないじゃない」
「ウォルフ様が治療してくれたのですわ!」
だから、黙ってろホリー!!
俺の魔術を国家の上層部に教えるなー!!
「ちょっと、左腕を見せてみなさいク、ラウディア!」
ほら、エリー様が食い付いてしまった……
「傷痕すら残ってないなんて……」
「ウォルフ様の『愛』が奇跡を起こしたんですのよ!」
ホリー、お前本当に魔導師団長なのか?
何処の世界に『愛』なんて要素を魔法の概念にブチ込む魔導師がいるんだよ!
「ウォルフ君、説明して貰えますか?」
未知の魔法の存在を前に、真剣な表情のエリー様からことの顛末の説明を求められた。
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