緊急の報告
グリッド達と尋問で引き出した情報を精査した結果、俺達が得た情報と大差無いことが解った。
問題になったのは、グリッドの部下達が担当した中に虚偽の情報を提供した兵士がいたことだった。
「宣言した以上、処断するより他の選択肢は……」
「二十五人……全員を処断するのか?」
「処断しなければ我々は甘いと判断されて、捕虜の逃亡や反乱の温床をつくることになる……」
「処断したところで、不安に駆られた兵士の暴走の危険性はあるぞ?」
「ウォルフさん、ここからは我々諜報員の仕事です。あなた方の協力は助かりましたが……この先の責任は全て私『グリッド』が負わせて頂きます」
グリッドは俺達に見せたくない決断をしたのだろう。
そこで、俺はグリッドに提案する。
「兵士達の情報通りなら、エルフが次に現れるのは六日後だ。それまでに王都に戻ってアルフレッド殿下と今後の相談をしたい。マーク達三人は護衛として残しておくので、俺とホリーが商隊を離れることは可能か?」
「エルフを待つと言われるのですね?」
「それを含めて殿下と相談したい」
「解りました。残った捕虜の扱いを含めてアルに報告をお願いします」
レイスル王国で保護をするとの約束で、情報提供させたのは現場の判断でしかない。
これにアルフレッド殿下の御墨付きを取り付ける必要があるってことだ。
「エルフまで係わっているなら、緊急の報告が必要ね」
「解りました。商隊の護衛と捕虜の監視が任務ですね」
「ホリーと二人で行くのか?」
マーク達に事情を説明したところ、予想に反してあっさりと了承してくれた。
「王城との繋ぎはホリーが一番だからな」
「お任せください。リーヴァル公爵家の名を使ってでも会談を取り付けてみせますわ!」
「なるべく早く戻る。後は頼んだ!」
身体強化を使ったホリーと二人でレイスル王国に向けて駆け出す。
俺達が本気で走れば王都まで二日ってところだろう。
エルフが係わっている諜報戦なので、念のために転移は使わないことにした。
エルフの魔法に関しての知識は俺達の想像以上だったことをドゥニームの一件で知ったからだ。
翌日の夕方に、俺達はレイスル城の門前に着いた。
「クラウディア=リーヴァルです。アルフレッド殿下に至急取り次いで頂けますか!?」
「はっ、はい!」
汗にまみれたホリーの鬼気迫る表情から緊急性を察した衛兵が城内へと駆けていった。
近衛師団長の本部は王城内にある。
殿下が執務中だとしても城内にいるだろうと王城に来たが、予想通り城内にいるみたいだな。
取り次ぎにいった衛兵は程無くして帰って来た。
「リーヴァル様、こちらへどうぞ」
衛兵が先導して案内して行くが……
この方向は近衛師団本部じゃないような……
「お二人をお連れしました!」
衛兵が案内した先は会議室だった。
ってことは……
「緊急性のある事態が興ったか!?」
国王陛下、王太子殿下、第二王子殿下、軍事顧問、魔導師団長、宰相……上層部が勢揃いしてやがる!
「「失礼します!」」
「儀礼的な挨拶は不要だ。何があった?」
会議室に入室した俺達に国王陛下が声をかける。
「我が国から、コーラル王国へ向かう商隊を『盗賊』の仕業に見せかけて襲うために、ラスガカーン帝国が八十人編成の部隊をコーラル王国領内に展開していました」
「ラスガカーン帝国の軍で間違いないのか!?」
「ウォルフ、正確な情報なのだろうな!?」
国王陛下に続いて、軍事顧問の父カイルが確認してくる。
軍事顧問の立場からすると、ラスガカーン帝国の軍が侵略行為に動いた事実が大きいのだろう。
「生き残った敵兵を捕虜にして、グリッド殿達と尋問しましたので間違いないと思われます」
「スヴェイン卿、グリッドが尋問したなら間違いないと思われます」
「殿下直属の諜報部隊を率いる方でしたな……それよりも、八十人編成の軍を捕虜にしたと言ったか?」
「はい、捕虜は五十人以上となります」
「お前達五人の他は、グリッドが率いる諜報部隊数名の戦力ではなかったのか!?」
普通に考えて、八十人の正規軍を相手にした俺達が無傷で報告に戻ってるのは変だろうけど、
「ホリーが先制の魔法攻撃で半数近くの敵の戦力を奪いましたので、後は混乱に乗じて突貫しただけです」
「「「「クラウディアが!?」」」」
国王陛下、王太子殿下、アルフレッド殿下、エリー様が一斉に驚愕の表情になった。
「クラウディア、あなたどんな魔法を使ったのですか?」
「ウォルフ様に教えて頂いた魔法ですわ!」
ホリー、要らんこと言ってんじゃねえ!
会議室の視線が俺に集中する……
「また、お前か……ウォルフ」
アルフレッド殿下がため息混じりに言う。
『また』ってなんだよ!
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