尋問
グリッド本人、グリッドの部下達、俺達の三組に分けて尋問は始められた。
ホリーが張った遮音結界の中で行われる尋問では臨機応変な辻褄合わせが出来ないってこと、他方の証言と食い違いが有れば、そのグループは徹底抗戦の意思有りとして降伏を認めずこの場で処断することを宣言した上での尋問だ。
「クリス、マーク、ユリアは捕虜の見張りを頼む」
捕虜の尋問は綺麗事ではない世界だ。
そんなことは貴族籍に連なる者が負うべき心身的負担だと考えた俺は、ホリーと二人で尋問することにした。
当然、三人からの反発は凄かったがここは譲れない。
普段、貴族として様々な特権や権利を享受している人間が責任を負うべき時だと説明した。
現在の俺は貴族籍から外れているとはいえ、勘当されるまではスヴェインの子息として育った以上、この辺りについての教育は当然受けている。
「ここで嘘の証言をした場合は処断させて貰う。当然、理解していると思うが盗賊として処断される以上、遺された家族は盗賊の身内という扱いを受けることになるだろう」
国家が正式に『軍』を『盗賊』として派遣したなんて認める筈はない。
対外的な目を鑑みて、軍の一部の部隊が勝手に犯罪行為を行っていたと答えるだろう。
遺された家族は『国家に殉じた軍人』の家族ではなく、『国家に恥をかかせた犯罪者』の家族として扱われる。
軍人は上からの命令を絶対厳守を求められる。
個人の判断で勝手な動きをする兵士がいれば、部隊全体の動きを妨げ、軍の弱体化に直結するからだ。
今、捕虜となっている兵士達も上からの命令に従って盗賊を騙った通商破壊を行っていたのは解っている。
しかし、彼らに殺された商隊員の家族からすれば到底赦される行為ではない。
ここまでを簡単に説明した後、俺は問う。
「君達を派遣した国家は何処か?」
「……」
「答えないなら嘘の証言をしたと判断して、外で待っている部下達も証言の有無に関係なく一緒に処断する」
「捕虜に対する扱いは協定で……」
「君達は『盗賊』だ。協定で守られるべき『軍』の捕虜ではないんじゃないのか?」
「そっ、それは……」
「見た目で『若僧』と判断しているのかな?気の毒だけど俺達は貴族籍に連なる者だ。君達、国家の敵となる者を処断するのは俺達に課せられた義務でしかない」
感情を面に出さず、淡々と告げる。
「捕虜として『いずれは帰ることの出来る未来』を選ぶか、国家に対する忠誠を通したつもりで『盗賊として処断される未来』を遺族込みで選ぶかは、君達の自由だ」
俺達もグリッドも、出来れば拷問といった手段は選びたくはないので、この様な尋問の型を採った。
そこに『甘い憶測』を持ち込ませないために、冷淡な態度は崩さない。
『甘い憶測』を彼らが選んだ場合には、彼らを待つ未来が絶望的なものに変わってしまうからだ。
自分が国家に忠誠を示したところで、他の二ヶ所で尋問されている同僚が喋ってしまえば何の意味もない。
自分の後に尋問を受ける部下が喋っても同じだ。
部下全員とその家族を人質に捕られた状況で選ぶことの出来る選択は一つしかない。
そこに誘導する……
「君達が帰国出来たところで、待っている未来は『家族を含めた口封じ』だ」
「………」
「家族の無事と、君達の安全を確保出来る手段は一つしかない。情報を正確に提供するなら、レイスル王国で名を変えて生きて行くことが出来る環境を用意しよう。家族と離れることにはなってしまうが、『命令に殉じて全滅した』兵士の家族に対する扱いはそれなりにはなるだろう」
それぞれの家族を含む連帯責任の重さは兵士の口を開くことになった。
『ラスガカーン帝国所属の軍』、『この街道を通る商隊の殲滅と物資の略奪』、ここまでは予測通りだったが、補給の面で疑問が出て来た。
八十人の部隊が隠密行動で他国に潜伏している訳だ。
当然、補給線を確保出来る任務ではないのだが、夜営地に用意されていた物資が少な過ぎるのだ。
「定期的に、不気味なエルフが異空間収納で我々の物資を運んで来るんだ。その時に略奪した物資を持って帰った」
エルフは排他的な性格をしているので、人間社会に深く係わることは非常に稀だ。
異空間収納を使えるエルフなんて更に考え辛い……
今回の様に、補給線を無視した軍の動きを可能とする訳で……国家の重要機密に係わる立場となってしまうからだ。
排他的な性格と、人間よりも上位種との価値観から、人間の国家に深く関わった事例も皆無だ。
そのエルフが係わっている?
「そのエルフの名前は?」
「我々に名乗ることはなかったです。『皇帝の遣い』と名乗っていましたので……」
もしかすると……ヴェレダの一味はラスガカーン帝国と係わりを持っているのか?
ドゥニームも場所は違うが通商破壊らしき行動をとっていた……
ヴェレダは世界樹の守護者の地位を狙っていた筈だ。
奴らの狙いは?
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