通商破壊の疑い
「盗賊の引き渡しに感謝します。報酬、犯罪奴隷としての代金はどの様に処理されますか?」
コーラル王国との国境に設置された関所で、盗賊六人を衛兵に引き渡した。
盗賊達は犯罪奴隷となり『危険な地域での労働力』として売られていく。
その代金の内、八割が俺達に支払われる訳だ。
急ぐなら相場の七割を支払って貰うことが出来るが、特に金に困ってない俺達はギルドの口座に振り込んで貰う様に手続きして関所を通過した。
国境からコーラル王国の王都【ラース】への行程は商隊のペースで三日程度というところだ。
俺達の拠点ハルムントからレイスル王国の王都【レイスル】まででも一週間の距離があることからも、コーラル王国の領土が小国扱いされるのも納得がいく。
昔はもう少し広い領土を持った国であったが、大争乱の時代にラスガカーン帝国の侵略を受け、北方の領土はラスガカーン帝国の領土となってしまったそうだ。
「商隊として怪しまれない様に、ラースへの道程にある村に寄りますので五日かかります。御了承の程を」
「その辺はグリッドさんに任せます」
コーラル王国に入ってからは、ラスガカーン帝国の諜報員が何処にいても良い様に、お互いを『さん』付けで呼び合うことに決めた。
依頼主と護衛の冒険者の関係では、最も一般的だからだ。
「グリッドさん、お待ちしてました」
最初に寄った村の村長らしい男が、商隊を歓迎するために村の広場まで出迎えに来た。
普段から商隊を率いてコーラル王国周辺を探る任を受けているグリッドは商人として信頼されているみたいだった。
「レイスル王国の物産を手頃なお値段で売って頂ける商隊は、グリッドさんの商隊以外は殆どいませんから」
何気に村人と会話してみてもグリッドの評判は悪くない。
利が目的ではない……とはいえ、ある程度の利を得ないと怪しまれるので値段的には程々の筈だけど……
「最近、盗賊が多いので商隊も護衛を増やさざるをえず、商品の値に上乗せされてしまうんですよ……」
盗賊か……
レイスル王国との国境付近でも盗賊の襲撃があったが、そんなに強い盗賊じゃなかったけどなあ。
「何か、盗賊が増えたことに心当たりは?」
「二ヶ月前から急に増えたみたいなんですよ……」
「『みたい』ってことは、この村に被害が及ぶ様なことはないんですね?」
「村の物資は不足してましたが、被害は……」
村そのものは襲わない。
しかし、この街道を通る商隊は襲う……
王都ラース方面からこの街道を通ると、この先にあるのはレイスル王国との国境だけだ。
場所から考えると、レイスル王国の商隊を狙ってる?
その晩に、グリッドとその話をすることになった。
「では、ウォルフさんはレイスル王国からの商隊を狙った盗賊がいると判断された訳ですか?」
「レイスル王国からなのか、レイスル王国へなのかは判りかねますが、コーラル王国とレイスル王国の経済的な分断を狙っている可能性があると思ってます」
「盗賊に扮した破壊工作……ですか」
グリッドの商隊はこの二ヶ月コーラル王国への行程をとっていなかったそうだ。
そのため、最近頻発している盗賊被害には巻き込まれていなかった。
「ラースへの道程で可能な限り情報収集しながら進み、ラースで待っている諜報員の情報と精査する必要がありますね」
諜報を司る立場のグリッドも俺と同じ意見だ。
どうだ、いつも俺を『残念』扱いしやがって!
少しは見直したか?
「その話を聞けば、誰でもそう予測するよな」
てめえ、マークゥゥゥッ!!
「ほら、ウォルフもドヤ顔しないの」
お前は俺の母親か、ユリアァ!!
「いや、皆さんそうは言いますが、初対面の人間から情報を引き出すのは本当に難しいことですよ」
グリッド、もっと言ってやれぇ!
「だいたい、マークはウォルフ様よりも重要な情報を仕入れて来たんですの?」
「うっ!」
良いぞ、ホリー!!
「皆さん、落ち着いて」
グリッドが場を収めようとするが、
「ウォルフ様にケチをつけるなんて百年早いですわっ、マークの分際で!」
「お前はどうなんだよ、ホリー!」
「夫婦の手柄はどちらのものでもありませんわ!」
「「「「いつ、夫婦になったー!!」」」」
「あの……皆さんいつもこんな感じで?」
しまった。
いつものノリにグリッドが引いてる……
気まずい雰囲気の中で、情報交換会は終わった……
商隊は、翌日の昼まで村の広場で出店を構えた後、準備をして村を出た。
本来なら、夕方近くの出発なんてあり得ないところだが、夜営をすることで盗賊を誘き寄せるのも情報収集の一環ではないかと、グリッドが提案したからだ。
確かに盗賊が襲って来るなら、夜営してる商隊の方が襲い易いだろう。
『俺達なら盗賊から荷を護ることが出来るだろう』って信頼されているのが重い……
世の中に絶対はないんだから……
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