クラン【黒狼】の価値?
「噂に聞いてた以上の戦闘力ですね!」
グリッドが興奮気味に話しかけて来る。
捕らえた盗賊達は両手を後ろ手に縛った状態で、荷馬車から引っ張られて歩いている。
荷馬車からの縄はそれぞれの首に巻き付ける様に繋げているので、逃げようとしたり、歩かない等の抵抗をすればそこで死ぬことになる。
このまま、コーラル王国との国境にある関所まで連れていき、罪人として警備隊に引き渡すまでは逃げられる訳にはいかない。
逃げ出した盗賊は仲間と合流して、再び通行人や商隊を襲うからだ。
捕らえられた盗賊は犯罪奴隷として、命の危険が付き纏う仕事に従事する未来が待ち受けているが、こいつらのために人生を狂わされた一般人のことを考えると同情なんて気持ちは湧いてこない。
「予定外に目立ってしまいますが、依頼を達成した冒険者をギルドが疑うこともないでしょうし……」
そうだった!
俺達は目立つ訳にはいかない立場だ。
苦笑いしているグリッドも、あの状況で護衛しないといけない俺達の立場は理解している。
それよりも、想定以上だった俺達の戦闘力に対する興味の方が勝ってるんだろう。
「正直な所、初めて【黒狼】の皆さんと宿でお会いした時は、『アルも何を考えてるんだ?』と考えてしまいましたが、スヴェイン剣術の手練れのクランっていうのが……ここまで凄まじいものとは思ってもみませんでした」
「盗賊が相手ですから……」
正規に剣を修めた訳でもない素人相手なのに、そこまで言われると逆に疑いたくなる……
「アルフレッド殿下なら、同じことが出来るでしょう?」
「稽古と実戦では違うでしょう」
アルフレッド殿下はスヴェインの道場に通っている訳ではないが、父カイルが王城で剣の手解きをしているので、スヴェインの剣を使える筈だ。
「アル自身は実戦を経験している訳ではありませんからね。私達でも実戦と稽古がどれ程違うのかくらいは解ります」
諜報を生業としてるグリッドは、生命の危機となる経験をしているだろう。
その眼で見たアルフレッド殿下の剣は、稽古の域を出ない綺麗な剣に見えるってことかな?
「実戦経験ってことなら冒険者なら当然のことですから、これで目立ってしまうことはないと思いますよ」
「そうだったら良いんですが……」
商隊の護衛依頼なんて珍しくもないありふれた物なのに、そこまで警戒しないといけないのか?
冒険者の数をケチった商隊が盗賊に抗えずに被害にあったという話はよく聞くが、普通は商隊の規模に合わせて冒険者の数を用意している筈だ。
「アルから聞いてた通りですね……」
「何のことでしょうか?」
「リッチ討伐を個人で成し遂げた後、報奨前に黙って立ち去ってしまったと聞いていますが、それだけの偉業を当然のことと考えていらっしゃるのでは?」
「報奨?」
「王都の危機を未然に防いだのです、国家から報奨を求めるのが普通でしょう。受勲、更には爵位すら望めるほどの功ですよ」
「爵位なんてそんなに軽いものではないでしょう。騎士団、魔導師団、冒険者ギルドと協力した討伐隊の中で冒険者として当たり前のことをしただけで、ギルドから冒険者ランクの昇格をして貰いましたよ?」
「私達はあなたの行方を探し回ったんですよ。スヴェイン伯爵から『既に勘当された者とはいえ、スヴェインの系譜に連なる者が国家の危機に対し尽力するのは当然であり、いかなる報奨も無用』と王に進言されたことで任を解かれましたが」
そんなことがあったのか?
あの時、俺は冒険者ギルドからの討伐隊に参加してたから、ギルドに報告して終わりって思ってたんだけど?
「あなたが近衛師団への誘いを断った後、アルは、スヴェイン伯爵やエリー魔導師団長から『あの者は爵位や報奨に興味を示さないでしょう』と聞かされたと言ってました。その上で、『自身の価値に対し無自覚極まりないアホなので扱いには気をつけておけ』と私に命じましたよ……」
あのクソボンボン!
ろくに話したこともない俺のことを『アホ』だとぉ!
「アルフレッド殿下はウォルフのことを『正確に理解』してらっしゃるな!」
「流石に近衛師団を率いてる方ですね」
マーク、ユリア、お前らは元上司を持ち上げ過ぎだ!
クリスも苦笑いしてんじゃねぇよ!
「アル兄様は勘違いしてますわ。そこがウォルフ様の価値であり魅力ってことが解ってないアル兄様こそが『アホ』ですわね!」
「クラウディア様……」
「グリッド、私はホリーですわ。お間違え無きよう!」
『魅力』云々はともかく……
ホリー、お前だけは俺の味方だ!
「まっ、まあ……そういった訳ですので」
と言ってグリッドは俺達から離れていった。
「マーク、他人事みたいな顔をしてるけど、お前らは俺と同類だってことを忘れてんじゃねえよ!」
「俺達は『常識人』だ。一緒にするな!」
俺は『魔術』以外は『至って普通』の人間だ。
何で、こんな扱いを受けているんだ……?
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