巨大な蜘蛛
「討伐を優先するか、この魔物の能力を調べるか……どちらにする?」
とりあえず、みんなに相談してみた。
「何を言ってるの、ウォルフ?」
「簡単に討伐出来る様に聞こえるんですが……」
「方法があるなら、討伐した方が良いけどなぁ……」
「この坑道の中で魔物の主導での戦闘は危険ですわね。ウォルフ様、お願いしてよろしいですか?」
ホリーだけは、俺の意図を理解してくれているな。
「ウォルフ一人にやらせるつもりか、ホリー?」
マークがホリーを問い詰めようとするが、
「ウォルフ様なら簡単なことって忘れたのですか?」
「ここなら、俺達以外に誰もいないからな」
そう、時間停止結界で魔物の時間を止めれば、討伐することは簡単な作業でしかない。
他人の眼がある所で使う訳にはいかないが、俺達しかいない坑道の中で遠慮する必要はないのだ。
「「「あぁ、そういうことね……」」」
三人も理解してくれたみたいだ。
「常識から外れ過ぎて……頭が追い付かねぇ……」
「私もよ、マーク……」
「初めて見ることが出来るんですね」
「じゃあ、行ってくる!」
スキル【大賢者】を発動した俺は身体強化を使い、坑道の曲がり角まで跳んだ後、その先の天井に貼り付いた蜘蛛型の魔物に向けて時間停止結界を展開した。
「終わったぞ、見に来るか?」
天井に貼り付いた大きな蜘蛛が、八つの赤く光る眼でこちらを凝視している姿はかなりシュールだ。
「うわっ、グロいな」
「虫型の魔物は、見た目が苦手なのよ……」
「こんなに大きな魔物の魔力なのに、全く感じなかったんですね……」
「資料でも見たことがない魔物ですわね……」
ホリーが見たっていう資料は魔導師団の資料だろう。
国家の中枢機関である魔導師団の資料にもないってことは、ドゥニームが手を加えた新種の可能性が高いな。
やはり、この坑道に何かあるってことか……
「トドメを刺すか?」
「生かしておくことは可能なんですか?」
「余程、瀕死にした状態じゃないと拘束することは不可能だろうし、能力すら解らないなら処分した方が良いな」
「勿体無いですが、マークの言う通りですわね」
結局、時間停止結界の中で蜘蛛型の魔物は首と脚を切り落として収納袋に収納した。
その際、女性陣は自分の収納袋に入れることを拒否したので、マークの収納袋を使うことになった。
虫型の魔物は見た目がグロいもんなぁ……
「蜘蛛型の魔物なら、もう一匹いる可能性が高いな」
「大抵は、ツガイでいますからね」
「勘弁してよ……」
「蜘蛛は雌の方が大型ですから、もう一匹は更に大型って可能性が高いですわね……」
「イヤァァァッ!」
珍しく、ユリアが悲鳴をあげているな。
そこまで蜘蛛が苦手だったのか……
「奥に隠れたのが雌だったんだろうな」
「その雌を守るために、ここで罠を張っていたんですね」
「私はいつも通り、後衛で良いわね!」
ユリアが編成について主張するのは珍しい。
本音は帰りたいんだろうが、冒険者のプライドが許さないんだろう……
「編成はいつも通りで行こう」
おっ、マーク優しいな。
蜘蛛と同じで雌の方が立場が強いのか?
そこからも、慎重に坑道を進み続ける……
当然、周囲に採掘の跡がないかを見落とさない様に、岩肌への注意も怠らない。
「この先にいるな……」
マークが魔物の気配を感じ取った。
「さっきの雄よりも魔力反応が大きいですわね」
「マークとユリアみたいなもんだろ?」
「ちょっと、どういう意味よ、ウォルフ!」
しまった、つい本音が……
「こいつを討伐した後で、ゆっくりと説明して貰えるんだよな、ウォルフ?」
「そうね、ゆっくりと説明して貰いましょう……」
ヤバい、ユリアが本気で怒ってる……
クリス、ホリー、何とかユリアを宥めてくれ!
何で距離をとってるんだよ!
「さっきの雄と同じ様に討伐してしまうか?」
魔物を前にしてるんだ。
このまま、なし崩しに誤魔化してしまおう……
「あのエルフが関与した魔物なら、その方が安全だな」
「そうね、ウォルフお願い」
さっきの雄を討伐した時と同じ方法で雌を結界内に閉じ込めるってことに決まった。
身体強化を使った俺は、魔力反応に向かい一気に距離を詰める……
魔力探索の反応が大きかったのも納得だ。
その体躯は雄の倍以上は大きかった。
ほぼ隙間なく坑道を埋め尽くす体躯と赤く光る眼が、薄暗い坑道の奥から獲物を狙っている……
だから、どうしたって感じではあるんだけど……
時間停止結界を展開して巨大な蜘蛛の動きを止めた俺は、後方で待機している四人に声をかける。
「結界に閉じ込めたから、一緒に分析してくれ」
狭い坑道を埋め尽くす巨体の魔物と戦うなんて判断をする訳ないが、新種の魔物は分析しておく必要がある。
気持ち悪いから、一人で分析するのが嫌だって訳じゃないぞ!
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