面倒くさがりな性格
「うわっ……」
「これは……キツいですわね……」
「「……」」
巨大な蜘蛛がこちらを凝視している姿はグロい……
小さな虫なら気持ち悪いと思ったりしないが、それを『超ドアップ』で見れば鳥肌ものだ。
今の状態は、まさしくその状態だ……
「これをバラして収納袋に突っ込むのか?」
そう言いたくなる気持ちは解る!
俺も気持ち悪い!
「じゃあ任せたぞ、ウォルフ」
……だよね。
結界の中で動けるのは俺だけなんだから……
番犬ならぬ番蜘蛛を討伐した後は、特に魔物に遭遇することなく坑道の探索を進めることが出来た。
この坑道に魔物が入って来ても、あの蜘蛛達の餌になってしまったということは想像に難くない。
そこまでして守る必要があるものが存在するってことか?
「鉱石じゃなく……竜脈に干渉してたのか?」
坑道の最深部には、魔法陣を画いた広い空間が存在していた。
非常に強力な結界の中にある魔法陣の中心部では、魔石が鈍い光を放ち続けている……
「竜脈に干渉ですか?」
「エルフの魔力は人間と比べると膨大だけど、ドゥニームの魔法の様に次元に干渉出来るほどじゃない筈なんだ」
「では、足りない魔力を竜脈から補給して……あの魔法を使っていたんですの?」
「一定の範囲内に限定されるけど、竜脈からの膨大な魔力を自身の魔力として使うための魔法陣だな……」
ドゥニームはヴェレダ達と別行動で、この魔法陣の研究と実験をしていたのか?
竜脈は太さに差はあるが、世界中に張り巡らされた存在である以上、この地域に拘る必要はない筈だ……
敢えてこの地域、人気の少ない田舎を選んだ理由とは?
「……様、ウォルフ様!?」
「ん?」
「何か、お気付きになりましたか?」
ホリーの声が、考え込んで自分の世界に入ってた俺を現実に引き戻した。
「考えるほど解らなくなるって感じかな……」
「この魔法陣はどうされますか?」
「ヤバいってことだけは確実だから、消そう」
グラディアス様が警戒する魔法の根幹であろう魔法陣を放って置く訳にもいかないだろう。
ヴェレダ達と関係がある可能性もある限り、他の選択肢はあり得ない……
魔法陣を結界ごと粉砕した後、俺達はトガチ村へと帰ることになった。
探索の成果としては微妙だったが、ドゥニームの意図が解らない以上は想像の域を出ないのだ……
「ギルドには、新種の魔物を報告するだけか?」
「色んな意味で、あの魔法陣を公にしたくないんだ」
『ドゥニームがヴェレダ達と袂を別っていた場合、あの魔法陣の存在をヴェレダ達に知られない方が良い……』
そう考えた俺は坑道最深部を、結界で守られた魔法陣ごと粉砕して埋め尽くした。
ドゥニームとヴェレダ達が袂を別ってなかったとしても、俺達の名前を公にして、奴らから警戒されることは避けたい。
「坑道を探索した理由が不明瞭な状態で、新種の魔物を討伐って不自然じゃないか?」
「坑道外に雄が出て来てたってことじゃ駄目か?」
「証人がいる訳じゃないから……疑っても追及は出来ないでしょうね……」
「この件はここで終わろう!」
「ウォルフ、面倒くさくなったんだろ?」
「考え過ぎても仕方ないだろ?」
そう、推測の域を出ない以上は、考え過ぎるほど良い結果にはならないと思う。
決して、マークが言う様に『面倒くさくなった』って訳ではないのだ!
「はいはい、そうね」
ユリアの奴……信じてないな。
「ウォルフ、お前それだけの力を手に入れたんだ、野望みたいなものは無いのか?」
「野望ってなんだよ?」
「今のお前は国の軍隊すら蹂躙出来る力を持ってるんだ。普通なら権力を求めるだろ?」
「からかってるのか?」
「古来、建国ってのは力で成し遂げてんだ。それだけの力を持ってるお前に聞くのは当たり前だろ?」
「何で、そんな面倒くさいことしないといけないんだ」
俺の性格を知ってる筈のマークの疑問か?
伯爵家から解放されて喜んでる俺の性格を知ってるから、一緒にクランを立ち上げただろうに。
「いや、グラディアス様が【調律者】とやらにお前を選んだ理由が解った気がしてな」
「どんな理由だよ?」
ニヤニヤした顔のマーク……
「それでも……スヴェインの血筋と【大賢者】のスキルは危険過ぎるとマークは言いたいんでしょう」
ユリアはマークの発言の意図が解っているみたいだな?
「ウォルフ様、貴族の全てがスヴェイン伯爵の様に高潔な精神をお持ちではないということですわ」
「ああ、そういうことね……」
要は、俺のスキルを含めた戦闘力を知られたら、必ず利用しようとする奴らが出て来るってことだ!
ギルドから独立したクランである現状は、秘密の保持を自分達で考えないといけないってことを伝えてくれたんだ。
本当に面倒くさい話だ……
お読み頂きありがとうございます。
拙作をブックマークに加えて頂いた方々ありがとうございます。
皆様のPV、評価、ブックマークを励みに更新させて頂いています。
よろしければ、評価、ブックマークをお願いいたします。




