【調律者】の役目?
温泉を満喫した後、俺達はトガチ村を散策していた。
「温泉があるってこと以外は普通の田舎だな……」
「それが、どうかしたのか?」
「この村に来る商隊を襲った意味を考えてたんだ」
散策している範囲を観る限り、わざわざ商隊を襲って通商破壊をする意味は無い様に思える。
なら、ドゥニームの目的は何だったのか……
「トガチ村は特産品も特に無い筈ですわ」
「近くにダンジョンがある訳でもないですし……」
「鉱山の村だったのは、昔の話よねぇ……」
温泉がある村って認識だったトガチ村が、昔は鉱山の村だったのか?
「ユリア、鉱山はどのくらい前まで採掘してたんだ?」
「私達が産まれる前の話よ。村の人に聞かないと詳しいことは解らないわよ」
宿に戻った俺達は、宿の経営者から話を聞いた。
貴重な温泉を所有している村人なら、昔から村の有力者だった可能性が高いと予想した通り、宿の経営者夫婦の先祖はトガチ村を開拓した一員だったそうだ。
「なら、鉱山で採掘していたのは普通の鉄だけですか?」
「そう聞いてます。まあ、貴重な鉱物を採掘出来ていたなら、この村はもっと豊かになってたでしょう」
「その鉱山はどの辺りに?」
「村の北の山で採掘していたそうですよ。その辺りに坑道が幾らか残ってますが、崩落の危険がありますので近寄らないで下さいね」
再び、温泉を満喫した俺達を待っていたのは、宿が用意してくれた鍋料理だった。
季節は初夏なので面食らったが、山岳地域の夜はかなり涼しいので鍋料理も美味しかった。
たぶん、この村の名物料理なんだよな?
手抜きじゃないよな?
美味しかったから、突っ込まないけど……
「明日、坑道の様子を見に行こうと思うんだけど……」
休養のために温泉に来たので、遠慮勝ちに提案してみた。
「なら、私も一緒に行きますわ!」
「私も行きます!」
ホリーとクリスは即答した。
マークとユリアは顔を見合わせて苦笑いしながら答える。
「どうせ気になって仕方ないんだろう?」
「私達も気になってたから一緒に行きますよ」
せっかくの休養なのに申し訳ないな……
「あら、マークとユリアは別行動でも大丈夫ですわよ?」
「お前らみたいな子供だけで行かせられるか!」
「保護者がいないとホリーが暴走しますからね」
俺に気を使わせないために軽口を叩いてくれてる……
と思ったら、こいつらマジで言い争いを始めやがった。
「誰が子供ですの、マーク!?」
「そうやってムキになる所がお子様なんだよ!」
「マークさんも、ホリーさんも落ち着いて下さい!」
結局、クリスとユリアが大人で、マークとホリーがお子様なんだよな……
翌朝、俺達はトガチ村を出て北にある鉱山跡を目指す。
「ウォルフ、何が気になってるの?」
「エルフは魔法の触媒に鉱石を使うことがあるんだ。ドゥニームの魔法はエルフの魔法としても異常な部類だったから、もしかしてって思ったんだ」
「魔石の様な使い方をするんですの?」
「魔石は『自分の魔力を温存する』か、『魔力量の底上げ』って使い方だけど、特殊な鉱物は特定の魔法の発現を後押しすることがあるんだ」
「特殊な鉱物が……?」
ホリーは魔導師の家系で育ったので、魔法に関しては貪欲に知識を求めてくる。
いつも、こうだったら知的な令嬢なんだけど……
「エルフのユニーク魔法だよ。異空間収納みたいな時空魔法は人間の魔法では不可能だろ?」
「空間魔法すら不可能って云われてますわね……」
「エルフですら時空魔法は扱い切れてないのに、ドゥニームは次元に干渉する魔法を使ってたんだ。ヴェレダを超えたって言ってた意味は、ヴェレダ達も使えない魔法ってことだと思う」
「もし、特殊な鉱物があったらどうするんですか?」
「どうとも……仕様がないな」
「「「「ハアッ!?」」」」
「だって、どのくらい埋蔵量が有るのかすら解らないし、そこをずっと見張ってる訳にもいかないだろ?」
「じゃあ、何のために確認するんですか?」
「原因が解れば、古代竜かグラディアス様がなんとかしてくれるんじゃないかな?」
「丸投げかよ!」
「【調律者】である俺は、自分の意志で生きていけって古代竜から言われたんだ。なら、後は【調停者】の仕事ってことで良いんじゃないか?」
そう、古代竜グラノスは『【調律者】である俺の思うままに生きた結果として世界は変わる』って言ってたんだ。
そこに『責任』なんて文字は無い!
「まあ、ウォルフらしいわね……」
「グラディアス様も人選を間違えたんじゃないか?」
マーク、その意見には同意するぞ!
せっかく、伯爵家から解放されたんだ。
俺は自由気ままに冒険者として生きて行きたい!
「グラディアス様からの依頼をクランで受けたと言ってましたよね。ウォルフさん、真面目に考えてるんですね!」
ゴメン、クリス……それ忘れてた。
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