やっと、温泉旅行
残りのトガチ村までの道程は平和だった……
「ドゥニームはヴェレダを敵視してたし、完全に別行動してたんだろうな」
「今までに奪った荷は何処に行ったんでしょう?」
「多分、異空間収納だと思う」
「ってことは、ウォルフが討伐してしまったから、二度と戻って来ない訳だ」
「マーク、あの状況で他に方法があったか?」
「そんな物よりも、私の方がウォルフ様にとって大事だってことですわ!」
「その優しさがウォルフさんですよね」
「今のはマークが悪いわね……」
ふっふっふっ、今回は俺の勝ちだな、マーク!
女性陣三人を味方につけて、イケメンに完全勝利だ。
特に魔物に襲われることもなく、トガチ村に着いた商隊は村の人達から熱烈な歓迎を受けていた。
「余程、物資が不足していたんですね……」
「入って来る物資もですが、出荷も滞ってたんでしょうね。村の経済は売ることも含まれてますから」
クリスとユリアは商隊の様子を感慨深げに見守っている。
マークはギルドに報告に向かった。
そしてホリーは、あれから俺にくっついたままだ……
「ウォルフ様、ハルムントに帰ったら直ぐにここに転移致しましょう!」
「ホリー……まだ依頼の途中だから離れて貰えるか?」
「ウォルフ様は私のことが大事じゃないんですか!?」
誰か……なんとかしてくれ。
帰りの行程も特に問題なく、商隊は無事にハルムントに着いた。
いくら護衛を付けるといっても、毎回魔物や盗賊に襲われてたら、商隊なんて出す商人がいる訳ない。
特に何も無いのが普通なんだ。
決して俺達が楽して稼いだって訳ではない!
ギルドに向かった俺達は、ギルド長へ報告に行く。
「無事に帰って来てくれたか!」
「あんな化け物相手の依頼を出した人が言うことですか?」
ギルド長に罪は無い……
解ってはいるが、つい皮肉が出てしまった。
「君達が『化け物』扱いするほどの相手だったのか?」
「この世界……次元ごと斬ってくる相手でしたよ……」
「次元?」
収納袋の収納先となる空間を例えにして、ギルド長に次元の概念を説明する。
「それでは、どんな硬さの物でも切れるのか?」
「この世界ごと裂いてしまいますので、硬さなんて概念すら当て嵌まらないでしょうね」
俺は続ける……
「一応、素材解体場にエルフの遺体も届けていますが、異空間収納を使ってたと思われますので、所持品から身元や目的を探るのは難しいと思いますよ」
「異空間収納を使えると判断した理由は?」
「俺達を襲って来た場所ですが、岩山が連なる山岳部ですので……物資の保管等は考え辛いって判断です」
「あの近辺に建物を用意することは、確かに無理だろうな」
「そういった事情で、これまでに略奪された荷はエルフの異空間収納の中で永遠に取り出すことが出来ません」
「それほどに危険な相手だったのなら、そんなことは問題にもならん。よく討伐してくれた、ありがとう!」
これ以上厄介な依頼を押し付けられる前にと、俺達は逃げる様にギルドを出た。
今度こそ、トガチ村の温泉で休暇をとるぞ!
ギルド長が声をかけて来ていたが、聞こえないふりをして無視だ、無視!
「危なかったな、『こんな依頼もあるんだが?』なんて言ってたぞ、あのギルド長は……」
「依頼を受ける前に休暇の話をしておいたのに、どこまで惚けるつもりなんでしょうね」
流石にベテラン冒険者のマーク達は、相手がギルド長であっても辛辣だな。
まあ、俺達はただの冒険者ではなくクランだからギルドから依頼される立場であって、冒険者に出された依頼をわざわざ横取りする気はない。
クランは独立した小型のギルドなんだから、冒険者ギルドの下請けになるつもりもない。
「予定よりかなり遅れたけどクラン【黒狼】慰安旅行、トガチ村温泉に出発するぞー!」
「「「「オー!」」」」
転移でトガチ村近辺に到着した俺達は、そのままトガチ村の温泉宿へと向かう。
商隊の到着で物資不足が解消したトガチ村は活気に溢れていた。
俺達の休暇を延ばした甲斐があったなぁ……
温泉宿で、二人部屋と三人部屋を二泊三日の予定で確保した俺達は早速、温泉を満喫することにした。
この宿の温泉は、男女別になった露天風呂だ。
「マーク、覗くなよ」
「童貞君らしい発想だな、ウォルフ」
余裕かましてんじゃねえぞ!
このクソリア充が!!
『恥ずかしいから騒がないの、マーク!』
竹の柵で隔てられた女風呂から、ユリアが叫ぶ。
何気に否定しないところが大人の関係を覗かせる。
『ウォルフ様、私はいつでも受け入れま……ムググッ』
『ホリーさん、はしたないですよ!』
『あら、クリスさんも言って……ムガガッ!』
『もう!!』
「ウォルフ、お前はお前で大変だな……」
変に逆上せそうだ……
さっさと風呂から出よう……
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