クラン【黒狼】として契約
「ここは……?」
俺の意識が戻った時、商隊は夜営の準備に入っていた。
「ウォルフ様、気がつかれましたか!?」
「ウォルフさん、大丈夫ですか!?」
ホリーとクリスが俺の顔を覗き込んでいた。
「あれから、どのくらい気を失ってた?」
「半日ほどですわ!」
「商隊はそのまま待機して貰ってます」
ドゥニームは討伐したが他にエルフが居るのかが、はっきりしない状況で動いてないのは良い判断だろう。
マークかユリアの判断だろうか……
「心配かけてしまったみたいだけど、一気に魔力を使い過ぎた魔力欠乏症だから、もう大丈夫」
起き上がり、マーク達の元へ向かう俺を心配する様に二人はついてきた。
「ウォルフ、気がついたか!」
「何処か悪いところは?」
「ただの魔力欠乏症だ。迷惑をかけてすまない」
「あのエルフの相手はお前にしか出来なかったんだ。俺の方が力になれず、すまなかった」
余分な夜営になったことを商隊に詫びて、せめてもの償いに異空間収納から出しておいた出来立てのスープと肉料理を商隊の人達に渡した後で、自分達の夜営の準備をする。
「ウォルフ、何があったか説明して貰えるか?」
晩飯の後、焚き火を囲んで今日の出来事を説明する。
「あのエルフはヴェレダの一味のエルフだった」
「ローレンスが殲滅しようとしてたエルフか……」
「ウォルフ様が冷静じゃなかったのは、それが原因だったのですね?」
「それが原因で、ホリーを危険な目に合わせた。本当にすまない……」
「それなんですが、私は左腕が斬られたと思った次の瞬間にウォルフ様に抱かれてましたけど……?」
「俺もホリーの腕が跳んだのを見た。そのままホリーの周りの時間が止まっていたのもな」
「「「時間?」」」
「倒れかけてたホリーと、千切れて跳んだ腕が空中で止まったままだったんだ」
「でも、私の腕は傷一つありませんわ?」
「ウォルフさん、一体何があったんですか?」
俺は、グラディアス様に呼ばれて別の次元に行ったこと、【ゾーン】が最上位のスキル【大賢者】に昇華したこと、その効果で時間停止結界を展開したこと、更に再構築でホリーの腕を治療したことを説明していった……
「【大賢者】ってスキルも聞いたことがないですわ」
「創造神様から直接祝福を受けただとー!?」
「時間停止結界って……」
「再構築って回復魔法の常識を逸してますよ!」
うん、それぞれに食いついて来たよ……
【ゾーン】ですら、それまでの魔法の常識をぶっ壊し兼ねない効果だったのに、それを遥かに上回る効果だったんだから俺自身もびっくりしてるもんな……
「ウォルフ、あなたは自分の意志で【ゾーン】以上の力を使うことが出来る様になったってこと?」
「って、グラディアス様から聞いてるけど……時間停止結界と再構築の魔力消費は激し過ぎだな」
「それだけの力を与えないとヴェレダってエルフ達に勝てないと、創造神様が判断したってことか……」
「あ、ヴェレダ達の討伐は俺個人じゃなくクラン【黒狼】として、グラディアス様からの依頼を受けた型になってるからよろしく!」
「「「「ええぇぇぇぇっ!!」」」」
クラン全員が創造神グラディアス様と契約した型になってると知った四人は目が点になっている。
っていうか、魂が抜けてないか?
「ウォッ、ウォルフ、どういうことだ!」
「えっ、俺はクランの代表だろ?」
「私は普通の人間ですよ!」
「俺も普通の人間のつもりだけど?」
「ウォルフ、自覚がないにも限度ってものがあるんですよ!」
「俺達とパーティーを組んだのはお前らだろ?」
「ウォルフ様、これで何処までも一緒ですわね!」
「うっ、うん。そうだね……」
この世界の唯一神、グラディアス様と契約したクランなんて存在を利用出来る国家は無いだろう。
俺達の自由な活動は保証された!
「誰がそれを証明してくれるんだ?」
「どんなスキルを持ってても……ウォルフはウォルフね」
マークとユリアが冷めた眼で俺を見ている……
確かに……証明出来ないよな……
その『アホな子』を見る眼はヤメロー!
「それよりも、私とクリスさんはウォルフ様が私の腕を治して下さった治癒魔法を教えて頂きたいですわ!」
「回復魔法は文字通り回復力を増すものですけど、ウォルフさんの治癒魔法は根本が違いますよね?」
二人が興味を示すのは解る。
しかし、これは身体の構造を知った上で、かなり精密な魔力操作を必要とする魔法だ。
それを二人に説明して、まず精密な魔力操作の鍛練からってことで納得して貰った。
身体の構造については追々、教えていくつもりだ。
グラディアス様と契約してしまったが、ヴェレダの居場所等を口にされなかったってことは、そこまで最優先で急ぐ話じゃないんだろう……と、都合良く解釈しておく。
大丈夫、グラディアス様は俺の性格も御存知だろう……
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