ドゥニーム
これまでに商隊が襲われたのは山岳部に入って、トガチ村までの行程を半分くらいの場所だった。
少なくとも、本当に警戒しないといけないのは山岳部に入ってからだろう……
「もうすぐ山岳部に入るな……」
「ホリー、動きがあったら直ぐに商隊を結界で保護して貰えるか?」
「任せて下さい!」
「ユリアとクリスは商隊の護衛、マークとホリーは相手の動き次第で遊撃、手筈通りに頼む!」
まだ魔力探索にそれらしい反応はないが、山岳部に入って見通しが悪くなると緊張感が出て来た。
ホリーは自身が離れても結界の展開が出来る様に結界魔法陣を付与した魔石を用意している。
魔導師団でも使用事例の少ない高等魔法だ。
これで討伐対象の攻撃を防げれば良いんだけど……
予測ポイントの少し手前で魔力探索に反応があった。
「商隊はここで待機して下さい。ホリー、結界を頼む!」
この魔力の反応はヤバい……
俺はこの魔力を発する存在を知っている!
「ウォルフ!」
「マーク、ホリーと一緒に距離を置いて待機してくれ!」
マークに指示を出した俺は、身体強化を使い一気に距離を詰める。
身体の芯から熱くなっていく……
奴らの……ヴェレダの一派にいたエルフがいる!
「オォォォォッ!」
俺は叫びながら、ヴェレダ達を殲滅するためにローレンスが開発した炎の魔術を放つ。
「金色の障壁よ、我を護る盾となり全ての災厄を打ち祓いたまえ。金崖城壁!」
エルフのユニーク魔法……物理、魔法どちらの攻撃にも対応した防御魔法を展開して、俺の魔術を防いだか……
確か、ドゥニームという名前のエルフだ!
「ドゥニーム、ここで何をしている!」
「貴様ごとき人間が我が名を知っているだと!?」
「お前には、ここで死んで貰う!」
身体強化の効果を増して距離を詰めた俺は、ドゥニームに斬りかかる。
魔法の詠唱をする間を与えなければ、俺の方が有利だと判断した俺は接近戦を選んだ。
「くっ、接近戦なら自分に利があると踏んだか?」
剣を抜いたドゥニームが俺の剣を防ぐ。
「人間ごときの身体強化で、我々エルフに勝てるとなどと……思い上がりを!」
俺は自分の剣が弾かれたことに衝撃を受ける……
『身体強化が足りなかったのか?』
身体の芯から溢れてくる熱は増していく……
『なら、更に強化して叩き斬るまでだ!』
そう考えてドゥニーム目掛けて跳んだ俺に向かい、ドゥニームが斬りかかってくる。
スピードで互角だと!?
下段から斬り上げてくるドゥニームの剣を弾きドゥニームの体勢を崩した俺は一旦距離をとる。
集中力が足りないのか?
何故【ゾーン】が発動しない?
ギリギリの戦い……不利と言っても間違いじゃない戦いなのに【ゾーン】が発動しないことに焦りを覚える。
逆に自身の有利を確信したドゥニームが問い掛けてくる。
「何故、貴様が我が名を知っていたのだ!?」
「俺は、ローレンスの意志を継いで古代竜との約束を果たす者……ウォルフだ!」
「古代竜だと!?」
「ヴェレダを筆頭に、古代竜の怒りを買ったお前達は 俺がローレンスに代わって討つ!」
「そのざまで私を討つと言っているのか?」
「ローレンスの魔術とスヴェインの剣がお前を討つ!」
「出来ぬことは口にせぬことだ。ましてやこの私がいつまでもヴェレダの下にいるなどとは……」
薄ら笑いのドゥニームの口元から笑みが消える。
「今の私はヴェレダを超えたのだ!」
憤怒の表情で斬りかかってくるドゥニーム……
なんとかドゥニームの連撃を防ぐが、圧倒的に圧されている。
魔力量は俺の方が勝っている筈が……
何故、身体強化で劣っている?
「ウォルフ様、冷静になってください!」
ホリーの叫ぶ声!
ホリー達が近くまで来ていることに気付いてなかった?
俺は、ローレンスの記憶に感情が引っ張られて冷静さを失っていたことに気付いた。
冷静じゃなければ精密な魔力操作など出来る筈がないことに気付いた俺は、身体強化に集中する。
「そこだ!」
本来の動きを取り戻した俺の剣が、ドゥニームの剣を大きく弾く……
体勢を崩したドゥニームの横腹を俺の剣が掠めた。
「余計なことを!」
歯噛みしたドゥニームが後方に跳び距離をとる。
「蒼天に潜む天の刃よ、混沌の闇を切り裂き、我が敵を引き裂く刃となりて全てを断て。次元断!」
魔法の詠唱と共に膨大な魔力をその身体から吹き出したドゥニームがホリー達の方向へと掌を向ける。
「ホリー、避けろ!」
俺の叫びと同時に、ドゥニームからホリー達へと繋がる空間が歪む。
次の瞬間にホリーの左腕が肩の近くから切断され、宙に跳んでいた……
怒りで俺の眼に映る世界が真っ赤に染まる!
その瞬間にそれは起こった。
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