温泉旅行計画
「この五日でどれだけワームを始末してるんだよ!」
ヤケクソ気味にマークが叫んでる……
【竜の巣】十階層の探索も五日目になる。
この階層は嫌がらせの様にワームが襲って来るが……
その戦闘の音が新たなワームを呼び寄せるので、かなりタチが悪い。
「なかなか『品切れにより閉店します』ってことにならないな……」
「余裕あるじゃねえか、ウォルフ!」
「マーク、気持ちは解るが……落ち着け」
スカウトであるマークは戦闘中も新たに現れるワームを警戒してくれてるので、精神的にも負担が大きいんだろう。
「これで、殆どの地下の状況も把握出来ましたわ」
マッピング担当のホリーの声にみんな安堵した……
やっと終わりだ!
「さっさと帰って地図を完成させようぜ!」
マークの声にも少し余裕が出て来たな。
本当に疲れた……帰ろう。
「十階層の地図を正確に作成するってことは賛成でしたけど、マークとウォルフの負担が大き過ぎましたね」
「いや、地中から襲って来るんだ。みんな警戒しながらの作業だったから、誰がってものじゃなかったよ……」
拠点に帰ったことでマークも落ち着いたみたいだ。
「でも、殆ど二人で相手してくれてましたし……」
「クリス、それは役割分担だから」
「そうだよ、クリスちゃん」
「クリスとユリアには、マッピングしながら魔力探索を使って地下の様子を探ってくれてたホリーを護って貰ってただろ?」
「それでも……」
「クリスさんとユリアが護ってくれてたおかげでマッピングに集中出来たから、今日中に終ったんですのよ」
「おっ、ホリーが謙虚なんて珍しいな!」
「マーク、私はあなたと違って常識人ですのよ?」
【竜の巣】では、みんな疲れて殺伐とした雰囲気になりつつあったけど、いつものノリに戻って良かった。
「このメンバーだから、五日なんて短期間でマッピング出来たのは間違いないんだから喧嘩しない!」
ユリアがマークとホリーのじゃれ合いを止める……
これ以上疲れたくないんだろう。
「ギルドに十階層の地図を納品したら、温泉にでも行かないか?」
以前にクリスと転移用の魔石を埋めて回った時、山岳地域に小さな温泉村があったことを思い出したので提案してみる。
「良いな、少しゆっくりしようぜ!」
「そうね、疲れを取りましょう!」
「あの温泉ですね?」
「ウォルフ様と混浴……遂に二人は結ばれるのですわ……」
一人変なことを言ってるが、満場一致で温泉旅行が決まった。
「じゃあ、頑張って地図の清書をしてしまおうか」
地図の清書は予想よりも丁寧に、そして速く進んでいく。
テンション高いな……
完成した十階層の地図を持ってギルドに入ると、受付でギルド長が話があると告げられた。
帰りに温泉旅行の買い物をしてから帰るつもりだった俺達は、クラン全員でギルドを訪れていたのだが、嫌な予感を胸に応接室へと通される。
「こちらで少々お待ちください」
受付嬢が出ていった応接室で俺達は話し合う……
「おい、これは不味いんじゃないか?」
「嫌な予感がしますね……」
「最近、ギルドの依頼に変なものはなかったよな?」
「私の計画を邪魔するなんて許しませんわ……」
「いきなりな展開過ぎて想像もつかないな……」
「どうする?」
「ギルド長の話を聞いてからじゃないと判断できないな」
「…………」
人が歩いてくる気配を感じた俺達は話し合いを中断する。
ドアがノックされてギルド長が入って来た。
「このギルドを任されているランドだ」
「クラン【黒狼】代表のウォルフです」
冒険者あがりかな?
ギルド長は引き締まった身体を持つ初老の男性だった。
精悍な顔付きではあるが、剣呑な雰囲気ではない。
「君達のクランが【竜の巣】の詳細な地図と魔物の情報を素材と共に提供してくれていることは報告を受けている」
「………」
「そう警戒しないでくれ。ちょっとした頼みはあるが、特に咎め立てする様な話ではないんだ」
「依頼じゃなく、頼み……ですか?」
「ここだけの話にして欲しいのだが……」
ギルド長の真剣な表情に対し、俺は黙って頷く。
「トガチ村を知っているか?」
トガチ村はハルムントから東へ三日ほどの行程の山岳地域にある村だ。
そして、俺達の温泉旅行の目的地でもある。
「知ってるも何も、俺達は今からトガチ村に行くつもりだったんですが……」
「何?」
「さっき納品した【竜の巣】十階層の地図の作成で色んな意味で疲労が貯まったから、温泉に行くつもりだったんですよ」
それとなく、休むつもりだったことをアピールする。
「そっ、そうか。疲れているところに申し訳ないんだが、少し頼まれてくれないか?」
チッ、空気を読んでくれよギルド長……
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