マッピングの重要性
この十階層は土壌が柔らかいためか、グランワームの襲撃がかなり多い。
ワーム系の魔物は眼が退化している代わりに、音に対して敏感な器官を持っている。
つまり、地表で討伐している音に反応して集まって来るので厄介な魔物って訳だ。
「素材の価値が殆ど無いワームが多いって、この階層は最悪だな」
マークのぼやく気持ちは解る。
次々と地中から襲って来るワームは多少斬ったところで討伐することは出来ない。
頭の部分を落とせば一番ヤバい口で噛みつく攻撃を防ぐことが出来るが、その程度ではワームが死ぬことはない……
数日経てばその部分には新しい頭が再生して来るからだ。
ワームを討伐するためには、かなりの部分を斬り裂く必要がある。
再生能力を上回る損傷を与える必要があるのだ。
その手間の割に、素材としての価値は口の中にある無数の牙にしかないんだからコスパが悪い。
この階層のマッピングの途中であったが、今日の探索はここまでにして拠点に転移することにした。
「明日もワームに悩まされるんでしょうね……」
ユリアの一言にみんなの表情が暗くなる。
厄介な上に、巨大な蚯蚓なんて気持ち悪いに決まってる。
「無駄に広いですし……」
「焼き尽くしてしまいたい……ですわ……」
うん、やはり女性陣には特に不評だなぁ……
「マッピングをちゃんとしないと、他の冒険者が潜った時にヤバいことになりそうだしなぁ……」
「今までマッピング出来てないってことは、他の冒険者の心配をする必要がないってことじゃないんですの?」
「ホリーはスヴェイン道場と魔導師団っていう化け物の集まりに居たからピンと来ないだろうけど、出て来る魔物が解った状態で道も解るなら、冒険者の生存率は爆上がりだよ」
「やはりウォルフ様は優しいですわね!」
「私のことも助けてくれましたし、ウォルフさんは他の冒険者のことを考えてますよね」
自分が助けることが出来る時に助けないと、後々まで嫌な気分が付きまとうからなんだけど……
結局、俺は自分が可愛いだけだと思うけどなぁ……
「リザードマンは十階層の入り口に居たの以外見かけませんでしたね?」
「魔力探索でも引っ掛かりませんでしたわね……」
十階層の地図を清書しながらクリスとホリーが疑問を呈した。
俺も気になっていた点なので、マークとユリアも含めて見解を話し合う。
「階段は岩盤だったから、地中も岩盤でワームが入って来れなかっただけじゃないのか?」
「その可能性は高いけど、水場は普通の池って感じだったわね……」
「地中に岩盤の地層がある場所と、無い場所があるって可能性もありますわ」
「それなら、マッピングする上で重要な要素になりますけど……どうやって調べるんですか?」
「手間だけど一度マッピングした上で、ワームと遭遇しなかった場所の地層を調べるしかないと思う」
「そこまでするんですか?」
クリスの疑問は最もだけど、地図を頼りにダンジョンに挑む冒険者の安全を考えると、中途半端な地図で命を落とすなんて事態は避けたい……
俺達が作成した地図を持ってダンジョンに挑むのは、俺達【黒狼】を信用して命を預けてくれるってことと同意だと思うからなぁ……
俺の説明にみんな同意してくれたので、明日からは十階層の詳細な地図の作成が目的に決まった。
「ウォルフもクランの代表らしくなって来たな!」
「そうね……ウォルフ、頼りにしてるわよ!」
先輩冒険者の二人が認めてくれてるのか?
少し嬉しいんだけど……
「普段がもう少し『残念』じゃなければねぇ……」
ユリアの余計な一言で台無しだ!
クリスとホリーも黙ってないで否定してくれよ!
何で苦笑いしてるんだ!!
「最近はマークもウォルフに毒されて困ってるのよ」
更に追い討ちをかけて来るユリア……
しかもマークを巻き込んで。
「俺はウォルフと違ってマトモだぞ?」
「その反応がウォルフと一緒なのよ……」
二人で俺を貶してる様に聞こえるんだが?
「マーク、ユリア、夫婦喧嘩は犬も喰いませんわよ?」
「仲良くしましょう?」
ホリーとクリスが仲裁に入るが……
お前らも否定はしないんだな……
「ホリーには言われたくないな!」
「私はウォルフ様に逆らったりしませんわ!」
「わっ、私もウォルフさんに……」
「あなた達はウォルフを甘やかし過ぎですよ?」
俺って……甘やかされてたのか?
疑問が残る台詞だなユリア……
「当たり前です、ウォルフ様が私の生きる意味そのものなのですわー!」
ホリーが暴走したじゃないか……
「私は、ウォルフさんに命を救って貰ったから……」
クリスまで暴走?
「おい、何を他人事みたいな顔してるんだウォルフ!」
「お前ら、俺を貶してただけだろ?」
マークとユリアに一言突っ込みを入れて今晩の話し合いは終了することにした……
「私は貶してませんわっ!」
ホリー……終わろうぜ?
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