魔力の矢
新たな魔術の御披露目です
「やっぱり、ダンジョンは【バルガナーン大森林】と違った圧迫感がありますね……」
クリスの感想は間違ってない。
やはり、ダンジョンは独特の圧迫感を持ってるな……
【竜の巣】九階層に転移した俺達は、ダンジョン特有の魔力と障気による圧迫感に気を引き締める。
今日は十階層から探索していく予定だが、マッピングをしていく役割を、中衛を担当するホリーに任せている。
「じゃあ、早速降りるか」
前衛でスカウトを担当しているマークの声にみんな頷く。
各階層を繋ぐ階段は、階層毎に違いがある。
階層によっては、鉱山の坑道の様な階層、荒野の様な階層、森の様な階層と様々な階層があり、当然のことながら天井の高さにも違いが出るので、階段の長さで次の階層の広さを予測することも出来る。
但し、長い階段を降りた階層が坑道の様に狭い空間という場合もあるので絶対ではない。
階段が長いほど、様々な階層の可能性があるってことだ。
「この階層も階段が長いですね」
「そうですわね……広ければ助かるのですが……」
「そうね、狭いと前衛二人しか戦えないから」
「そのための前衛だからな!」
「ってことらしいから、スカウトに活躍して貰おう!」
「ウォルフ、お前も前衛だろ!」
階段の行き着く先は草原タイプの階層だった。
膝の上くらいまで伸びた草が一面にたなびいている。
「見通しが良さそうに見えるが、厄介な草の背丈だな」
「知能のある魔物は埋伏して来るかな?」
所々に見える岩の陰等は警戒しないと危なそうだ……
「どんな魔物がいるかですね……」
「ウォルフ、魔力探索をお願い出来るかしら?」
ユリアが魔力探索を催促する。
わざわざ、危険な目に合う必要はないので魔力探索で周囲を探ろうと思ったが、敢えてクリスとホリーに振った。
「クリス、魔力探索で周囲を探ってみてくれる?」
「私が……ですか?」
「大丈夫、ホリーもカバーしてあげてくれるかな?」
「ウォルフ様の出鱈目な魔力に頼りきってしまうと、ウォルフ様がいない所で危ないってことですわね?」
エルフ以上の魔力を持っているのは確かだけど、直接『出鱈目』って言われると変な気分になるな……
でも、ホリーは俺の意図を正確に把握してくれてる。
「実践して研いてないと、知識なんて役に立たなくなるからね」
「やってみます!」
クリスが魔力を薄く展開して魔力探索を始めた。
次の瞬間にクリスの表情が一変する……
「なっ、近くにかなりの魔物がいます!」
「どの程度の強さの魔物か解る?」
「オーク並みの魔力ですが……身体は小さい?」
「ホリーはどうだ?」
「おそらくですが、リザードマンですわね……」
実は、俺とマーク、ユリアはこの階層に入った時に魔物の気配に気付いていた。
ユリアは警戒心が足りなかった二人を心配して、遠回しに警戒の必要性を教えたって訳だ。
この心遣いはユリアならでは……だなぁ。
「ここからは見えないけど、近くに水場があるんだろう。全く意地の悪い階層だ……」
「この階層に入ったとたんに問答無用で襲われるってことだな。スカウト冥利に尽きるだろ?」
俺達が気付いてたことは敢えて伏せる。
これから始まる戦闘中に、二人の心が動揺しないためだ。
マーク達は軍で指揮官の経験があるので、こんな心遣いが出来る。
「俺にやらせて貰っていいかな?」
魔力探索でリザードマンの配置を確認した俺は、昨日試した魔術使うことを提案した。
この階層に至る階段を包囲する型で展開しているリザードマンは、広範囲攻撃を前提にした新魔術を使うのに適していたからだ。
「早速、新しい魔術を見れるなら大歓迎だ」
「新しい魔術ですか?」
「楽しみですわね!」
「この数相手に大丈夫なの?」
前方から、俺達を包囲してるリザードマンは二十体弱だ。
ほぼ、半円の型で俺達を囲んでいる。
階段から離れた所で完全に包囲するつもりだろう……
知性を持つ魔物の厄介なところだな……
階段から少しだけ踏み出した俺は、意識を集中させて魔力を練る。
練った魔力に明確なイメージを付与すると、俺の前方を囲む様に千本近い魔力の矢が顕現した。
後はイメージ通りの速度で放つことが出来るかだ……
「喰らえっ!!」
魔力の矢は、周囲を埋め尽くす様に放たれた。
前もって魔力探索でリザードマンの位置を把握して放った矢は、正確にリザードマンを殲滅した。
「上手くいったみたいだ……」
振り向いた俺が見たのは、呆れ果てた表情の四人だった。
「まあ、ウォルフだからな……」
「何でもアリですね……」
「一々驚いても仕方ないわね……」
「ウォルフ様、人間兵器ですわね……」
新しい魔術なんだけど?
反応が違うと思うんだけど?
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