デートで受難
童貞小僧ウォルフの初デートです
「ウォルフ様、こっちですわ!」
クリスとホリーに連れ出された俺はハルムントの中心街にいる。
さっきまで、新しい魔術の開発に取り組んでいた筈が、俺の知らない世界に放り込まれてしまっている……
デートなんてしたこと無いんだから、二人をどうやってエスコートすれば良いのかわからない……
俺一人が意識し過ぎているのか?
「どこに行くんだ?」
「あのカフェです。前にホリーさんの服を買いに来た時、機会があればウォルフさんと一緒に行こうって二人で決めてたんですよ」
「大森林から一旦帰って来た時に?」
「そうですわ!」
はしゃいだ二人の様子から、楽しみにしてたってことが伝わって来る。
しかしながら困ったことに、俺がどうすれば二人が喜んでくれるのかわからない……
俺はマークみたいなリア充じゃないんだよ!
……って感情は表に出さず、笑顔でいないとね。
いくら俺でも、そのくらいはわかる。
「へえ、色んなメニューがあるんだな……」
「迷いますわね……プリンも捨てがたいですが、このフルーツシフォンケーキも魅力的ですわ……」
「私は、このチェリーパイと桃のタルトのどちらにするか決められません~!」
「桃のタルト!?」
「ほら、あそこに限定って書いてますよ」
「あっ、悪魔の誘惑ばかりですわ~!」
メニューを決めるだけで楽しそうだな……
「別に一つにしなくても良いんじゃないか?」
「ウォルフ様、そうしたいのは山々ですが……私の中の乙女がそれを許してくれませんのですわ!」
「ここで我慢出来るか……女子力が試されてるんです!」
そうなんだ……
それを俺の前で口にするのは、女子力的に良いのか?
結局、俺はハーブティー、二人は『限定』の言葉に負けて桃のタルトと紅茶のセットを選んだ。
「ああ~、至福ですわ!」
「幸せ~!」
二人が幸せそうにタルトを食べる姿が微笑ましい。
クランの活動中は『頼りになる戦士』である二人が、年齢相応の女の子に戻っている。
そんな二人を冒険者として扱っていることに罪悪感を覚えてしまうよな……
「ウォルフ様?」
「あっ、あまり見ないでください」
俺の視線に気付いた二人の頬が赤くなる。
「二人とも、こうしてると冒険者には見えないな」
二人が顔を見合わせる。
「女の子は色んな顔を持ってるんですよ?」
「私達も女の子ですのよ?」
ちっ、ちくしょー!
可愛いじゃねえか!!
必死で平静を装うが、俺の頬が赤くなってる気がする……
ホリーとは『幼なじみ』、クリスとは『冒険者仲間』って認識だったはずが、いつの間にか意識してしまってる?
『いつもと違って……お洒落した二人の姿が俺を惑わせているんだ。世間では可愛い娘に分類される容姿なんだ。可愛いくて当たり前だ。落ち着け俺!』
俺の葛藤に気付いた二人が、ニマニマとしながら俺を見ている……
まっ、負けるな俺!
……結局、俺の惨敗だった。
赤い顔をしながら何も言えなかった俺は、二人から弄られ捲ってカフェを出ることになった。
「ウォルフ様の照れたお顔なんて久しぶりでしたわ!」
「……」
「ウォルフさん、楽しかったですね!」
「そう……だね」
晩飯時に地獄はやって来た。
爆笑してるマークと、必死で笑いを堪えているユリア。
「何が面白いんだよマーク!」
「そっ、そりゃ……アッハッハッハッハ……だっダメだアッハッハッハッハ!」
チッ、このリア充は余裕をかましやがって!
「マーク、笑っちゃダメ……よ」
ユリア……お前も笑ってるじゃねえか!
「笑ってんじゃねえよ……」
「かっ……」
「かっ?」
「可愛いですわ、ウォルフ様!」
マジやめろー!!
結局、晩飯を掻き込んだ俺は部屋に戻って魔力操作の鍛練をすることにした。
決して、拗ねて引き籠ったんじゃねぇぞ!
朝の続きだ!
新しい魔術の可能性を上げてるだけだ!!
『マークさん、笑い過ぎですよ!』
『そうね、ウォルフが拗ねちゃったわ……』
『ウォルフ様から嫌われたら、殺しますわよマーク!!』
『お前らも笑ってただろ!』
『『『……』』』
『わっ、悪かったよ……』
流石のリア充も、女の子三人相手じゃ勝ち目がないみたいだな……
責任の全てを押し付けられて気の毒かな?
「ウォルフ、悪かったよ。機嫌を治してくれ……」
部屋の前で謝ってくるマーク。
許してやるか……
「部屋から出て来て、風呂の用意をしてくれよ……俺が睨まれる……」
……もう、知らん!
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今年も残り二日となりました。
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