新たな魔術を考える
バルガナーン大森林の経験を元に、新たな魔術について考えるウォルフ
「ウォルフ様、何してるんですの?」
王都から帰った翌日、クランの活動は本日臨時休業と決めたので、俺は拠点の庭で魔力操作の訓練をしていたら、ホリーとクリスが家から出て来た。
「魔力操作の鍛練してたんだけど、障壁の型を変えてレンズ状に出来ないかと思って試してたんだ」
「レンズですか?」
「ウォルフ様、恐ろしいことを考えますね……」
「ホリーさん、恐ろしいことって?」
流石、魔導師団長に任じられてただけあって、ホリーは俺の意図を理解しているみたいだ。
「ウォルフ様の障壁の厚さはご存知でしょう。それを薄くても良いと条件付けたら、どれほど広範囲に展開出来ると思われますの?」
「障壁を薄く展開して……レンズ状に?」
「ホリーが考えてる通りだよ」
「それが可能でしたら、障壁を張る程度の魔力でとんでもない熱量を産み出しますわね……」
「あっ、太陽の光を収束させるってことですか?」
「そう、太陽の光を使えないかと思ってね」
「魔力量以外で魔法の効果を爆発的に上げる方法なんて、完全に盲点でしたわ……」
魔法は自身の魔力を操作することで、自然界の魔力と反応させて様々な現象を発現させるものだ。
魔法を発現ためには、発現させる事象を明確にイメージしながら的確な魔力操作を行う必要がある。
生来、魔力操作を円滑に行うための器官を持つエルフと違い、人間は内包する魔力が少なく、魔力操作も難易度が高くなる。
そんなエルフですら、精密な魔力操作と明確なイメージを結びつける詠唱を必要としている。
人間である俺が魔術を使える理由は解っている。
ローレンスが俺と融合した時に、魔力操作器官を俺の身体に組み込んだおかげで詠唱を必要としない魔術の行使を可能としたからだ。
俺は身体強化を主体とした戦闘スタイルなので、魔力を使用する割合の多くを身体強化に使った方が戦い易い。
そう考えた結果、『自然界その物を利用する魔術を使うことが出来ないか?』という考えに至った。
「障壁をレンズ状に維持するのも難しいけど、これを空中に固定したままレンズの厚さを調整して、任意の場所に光と熱を収束させるのが難しいんだよ」
「ウォルフ様……それは難しいなんて話じゃなく、不可能って考えるのが普通ですわ」
「【ゾーン】が発現してたら、そこは問題なく使えるかもしれないんだよなぁ……」
そう、普通の人間……いや、エルフであっても戦闘中にそんな微調整をすることは不可能だろう。
しかし、俺には【ゾーン】のスキルがある。
人間が死に瀕した時に見る『走馬灯』。
それは、ほんの一秒の間に自身の人生の全てが頭の中で再生されると言う。
その速さで思考と魔力操作が出来る【ゾーン】が発現していれば、この様な突拍子もないことすら可能になるのではないだろうか……
「ウォルフ様なら……と言うよりも、ウォルフ様だけが可能な話かもしれませんわね……」
幼かった頃、俺に魔力操作の基本を教えてくれてたホリーの姿が被る。
こんなに真面目に物事に没頭するホリーは久しぶりだ。
ホリーも真面目に考えることがあるんだな……
「ウォルフ様……失礼なことを考えてられません?」
「いや、この魔術のことを考えてたぞ?」
「本当ですの?」
「疑わしい……ですね」
ホリーの感の良さと、俺の言動の一部から本音を推察するクリス……
このコンビ怖いくらい鋭い所があるよな……
「まあ、直ぐに実現するって手応えがある訳じゃないし、魔力操作の鍛練を地道に続けながら、【ゾーン】を任意で使える様になるために集中力を磨くしかないだろうな……」
「ウォルフさん、何か焦ってませんか?」
クリスに指摘されると、確かにそうだと思う。
大森林でハウンドウルフの群れを相手にした時に『数の暴力』の恐ろしさを改めて思い知ったことで、俺は新しい魔術を考える様になったからだ……
「そうだね、少し焦って考え過ぎてたかな……」
「大森林でも時間停止なんて言われてましたけど、ウォルフ様でも難し過ぎると思いますわ……それだけ、【ゾーン】の効果が凄いんでしょうけど……」
「異空間収納を知ってるからって、普通は思い付きませんよね」
「考えるだけは簡単だから。ホリーみたいに魔法の常識を知らないのが反って良いんだろ」
「ウォルフ様、光刃斬をお使いになった時に『イメージ通りに発現する』っておっしゃってましたわね?」
「そうだね」
「なら、その魔法の鍛練は続ける価値があると思われますわ。いざ、【ゾーン】が発動した時に明確なイメージがあるほど成功率が上がる可能性が高いですから」
魔法に対するイメージの重要性を知るホリーが言うと、現実味があるな……
「ってことで、ウォルフ様!」
ん?
「せっかくの休日ですから、私達とデートしましょう!」
何が『ってこと』なんだ?
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今年も残り三日となりました。
皆様、お忙しいと思われますが、健康に気をつけて年末年始をお過ごしくださいm(__)m




