剣と魔法の可能性
道場で鍛練するウォルフ達……
「お前、さっきの跳び込みの速さは何だ!?」
「しかも、空中で方向転換してなかったか!?」
ラルフ兄さんとゲイン兄さんが詰め寄って来る。
「障壁を展開して足場にしたんだ」
「障壁を足場に?」
「あの踏み込みに障壁が耐えられるのか?」
「俺はスキルで【魔力増大】を持ってるから……」
以前の俺の障壁では、兄さん達の言う様に障壁が耐えられず崩壊しただろう。
エルフの魔力量に【魔力増大】のスキルを持つ、俺の魔力量は世界でも有数になってる筈だ。
その膨大な魔力で形成する障壁は、竜級の攻撃以外を防ぐことが可能だと思われる。
「【魔力増大】か……確かホリーも持っていたな!?」
「あいつも使えるのか!?」
「この障壁の使い方は、さっき思い付いたから練習してみないと解らないと思う」
兄さん達の俺を見る眼が……胡散臭いものを見る眼になってるのは気のせいだろうか……
「思い付いたからといって、あんな技をいきなり使える訳がないだろう!」
「ウォルフ、何を隠してる!?」
「いや、本当だから!」
「私に失礼なことをおっしゃってると、ウォルフ様があなた達お二人に天誅を加えてくれますのよ!」
いつの間にか、俺の後ろに立っていたホリーがドヤ顔で兄さん達に捲し立てる。
「「ホリー、全く視界に入ってなかったわ……」」
ムキになるホリーを放置して、俺達はさっきの障壁の使い方について論議する。
昔から、このネタでからかわれているのに、気配を隠して近付くホリーの自業自得だと思う……
「ホリー、お前もこの戦法を使えるか?」
ラルフ兄さんの問いにホリーが答える。
「教えませんわ!」
ああ、拗ねてしまった……
「ウォルフ、お前とんでもなく腕を上げたな」
「ジーグ、腹は大丈夫か?」
「手加減しておいて言うことか?」
良かった。
慣れない身体強化だったけど、ジーグに怪我をさせずに済んだみたいだ。
「周りで観てた奴らに聞かなかったら、俺はどうやって負けたのかすら解らなかったよ……」
「色々……経験したからな」
「ウォルフ様は土竜も一閃できるのですから、ジーグを一閃することなんて簡単なことですわ!」
やめてくれ、ホリー……
「土竜を一閃?」
「例えにしても中途半端だな」
「何で竜じゃなく亜竜種なんだ?」
ほら、みんなが食いついてしまった……
「マーク、皆さんにお見せ………むぐぅっ!」
ホリーの口を塞いで道場の外へ連れ出す。
『騒ぎを大きくするなよ、ホリー!』
『本当のことではありませんか』
『だからって、わざわざ大騒ぎする必要ないだろ』
「相談中のところに悪いが……」
うおぉ、気づかない内に後ろにマークが……
油断してたとはいえ、スカウト技能は伊達じゃないな。
「ここで隠したところで、明日ギルドで素材を売れば大騒ぎになるだろ?」
「それは……そうだけど」
「なら、ここで見せておいた方がマシだと思うぜ」
「ウォルフ様、マークの言う通りですわ!」
「お前ら、本当にA級冒険者なのか?」
マークの後ろから、ラルフ兄さんが呆れた顔をしながら出て来た。
「油断し過ぎだろ。何を見せるって?」
ゲイン兄さんまで……
「マーク、悪いけど収納袋を持って来て、兄さん達に見せて貰って良いか?」
「もう、持って来てるよ」
観念した俺は、収納袋から土竜を道場横の庭に出す。
「これは竜か!?」
「この斬り口は……剣に見えるが……」
「土竜だよ、俺が仕留めた……」
驚愕の表情に変わった兄さん達。
また、説明しないといけないのか……
「どうやって仕留めたんだ、ウォルフ」
「『光刃斬』で仕留めた」
沈黙の後、ゲイン兄さんが呟く。
「【ゾーン】ってスキルか……」
あれ?
俺が光刃斬で斬ったなんて、疑われると思ってたんだけど、俺が斬ったことを前提に考察してくれてる?
「何で、意外そうな顔をしてるんだ?」
「俺が光刃斬で斬ったって信じて貰えるなんて思ってなかったから……」
「マークやユリアがこんなことで嘘をつく筈がないだろ。ホリーとお前の会話も聞いてたしな!」
道場から、門下生達が次々と出て来る。
みんな、土竜の巨体を観て驚いているが、興味って感じとは少し違う反応だな……
「剣って……これだけのことが出来るんだな……」
ジーグ呟きに、みんなが同意する。
「お前達、先程のウォルフとジーグの組み手を観てただろう。剣だけではなく、身体強化をはじめとした魔法を組み合わせることで、これだけの結果が出せるんだ!」
「俺や、ラルフ兄さんのスキル【剣豪】を言い訳にすることは出来なくなったぞ。ウォルフはそのスキルを持たず、自身の努力で結果を出したんだ」
自身の剣の可能性に拡がりを感じた門下生達が盛り上がっている。
俺の魔術は『努力』じゃなく、『棚ぼた』だと思ったが、この盛り上がりに水をさす様な真似をしたくなかったので、黙っておくことにした。
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