エリー=リーヴァル
レイスル王国……影の支配者と噂されるエリー様
エリー様に促された俺達は、再び城内の会議室に戻った。
気のせいだろうか……国王陛下や、王太子殿下といった国の頂点に立つ方々が、王族として扱われているとはいえ、公爵家の当主でもないエリー様の主導で動いているような……
昔から、優しい方なんだけど……俺の本能がこの方に逆らってはいけないと警鐘をならしているんだよな。
周囲のお歴々を観てると、間違ってないんだと思う。
「うちの『アホ娘』の逐電によって、皆様に多大な御迷惑をおかけいたしましたが、私が思っていたよりも事態は深刻になっていたみたいです」
「エリー、どういうことなのだ?」
「陛下におかれましては『アホ娘』のために、ウォルフ君の国外流出阻止という名目をご用意戴きましたが、これが名目でなく……本当に必要なことになってしまってるみたいですわ」
「スヴェイン卿の息子でなく……我がレイスル王国にとって重要人物であると?」
「この子が使った魔法は、魔導師の在り方そのものに関わりかねないものですのよ、陛下」
「魔導師団長にそこまで言わせる程なのか……」
「『前』ですわ、陛下。と、言いたい所ですが、願わくば……私の復帰を正式にお認め戴き、クラウディアがウォルフ君達と共にいることを承認して戴きたいと思います」
とんでもない話になってないか?
俺の魔術は、俺が自覚してるよりもヤバいってことか?
「皆様は今頃になって、ウォルフ様の素晴らしさに気づかれたのですか? 私は幼少の頃からウォルフ様の素晴らしさに惹かれているというのに!」
ホリー……ブレないなお前は……
空気を読まない発言をしたホリーの後頭部を叩きながら、エリー様が続ける。
「ウォルフ君の性格は幼少の頃から知っていますが、この子を地位やお金で縛ることは出来ないでしょう……」
「それにつきましては、エリー様の御推察通りかと……」
「エリーだけでなく、父であるスヴェイン卿の見解も同じであるならば、そうなのであろうな」
「ウォルフ君は優しい子です。うちのクラウディアの様な痛い娘であっても、傍にいれば無下にして国を出ることは出来ないでしょう」
俺が優しいかどうかはともかく……
本人を前にしての話じゃないよな。
これは、暗に釘を刺してると解釈した方が良さそうだ。
「しかし、クラウディアを解任するとなると、将来的にもマズいことになるな。クラウディアには勅命を与え、特別任務に就くという型をとるか……」
「陛下の御厚情に感謝しますわ」
「他ならぬエリーとクラウディアのためだ。お前達が認めるウォルフのことも信じることにする!」
「陛下、愚息のために御配慮を戴き恐悦至極です。ウォルフ、お前も頭を下げないか!」
話の流れに着いていけずに呆然としていた俺達は、慌てて頭を下げた。
公務で多忙な国王陛下達は席を立ち、会議室には俺達と父、エリー様が残った。
穏やかな表情のエリー様が問いかけて来る。
「ウォルフ君、私達の話の意味は解ってますね?」
「要約すると、『レイスル王国を出て他国を拠点にすることは許されない』。『クラン【黒狼】の存続は認める』。『ホリーは痛い娘』ってところでしょうか?」
「ちょっ、ちょっと、ウォルフ様!?」
「話を理解していてくれて何よりです」
「おっ、叔母様!?」
エリー様のノリの良さが変わりないことに安心した。
父がシワを寄せた眉間を指で抑えながらため息をついているが、エリー様に突っ込みを入れる訳にもいかず、俺のことを睨んでいるので眼を逸らす。
「それでは、お話はここまでです。クラウディアだけは残りなさい、お話があります!」
エリー様に怒られるのか……
可哀想だが、俺は自分が可愛いので黙って退散した。
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会議室に残ったエリーとクラウディアの二人。
説教を覚悟して小さくなっているクラウディアにエリーが小声で囁く。
『大事な話です。防音結界を張りなさい』
周囲の体裁を考えるほど怒られる……と、覚悟したクラウディアは防音結界を展開する。
魔導師団にいた頃に、機密に関わる話をする時と、エリーが本気で説教する時に防音結界を張らせていたからだ。
「クラウディア、今回のことに言いたいことは多いですが、結果だけみると……よくやりましたね!」
意外なエリーの言葉に眼を丸くするクラウディア。
「叔母様?」
「ウォルフ君がこれ程になってるとは、正直考えてもいませんでした。あの子をレイスル王国に留めるために、あなたが為すべきことは解っていますね?」
「ウォルフ様の妻となり、私から離れられない様に心を掴むことですわ!」
「そうです。ウォルフ君の人に媚びない人柄は可愛いのよ、絶対に彼をリーヴァル家に連れて来なさい!」
「「ウフフフフフ……」」
防音結界の中で二人は妄想に耽っていた……
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