父と子
スヴェイン剣術の奥義を使ったと告白するウォルフに対する父カイルの反応は……
「『光刃斬』だと!?」
「ええ……」
「お前の『光刃斬』で竜を斬ることが出来るとは……信じることは出来んな」
うん、道場にいた頃の俺を誰よりも知っている父は、信じられないだろうな……
「師範、私だけでなくウォルフ様を信じることが出来ないとおっしゃいますか!?」
「師範、自分達もウォルフの『光刃斬』を見ています!」
ホリーだけじゃなく、マーク達まで……
やめてくれ、騒ぎが大きくなっていく……
「『お前達を信用してない』とは言っておらん!」
「では、何故?」
「ウォルフ……木剣をとれ。お前が本当に『光刃斬』を使えるか確かめてやる!」
こうなってしまうよな……
だから嫌だったんだ……
「『光刃斬』を使うのは【ゾーン】の発動が条件ですよ。生命の危機に瀕した時じゃなければ無理です」
「【ゾーン】の効果とはどういうものだ?」
「思考の高速化と魔力操作の高速化、精密化です」
「それが『光刃斬』と何の関係がある?」
「ご存知の様に、俺の剣は魔力操作を意識した身体強化を主体にしてます。【ゾーン】が発動した時は……数倍の身体強化が出来ますので……」
「理屈は解った……しかし、陛下の御前で吐いた言葉の真偽は確かめねばならん。剣をとれウォルフ!」
そう言うと、父は木剣を構えた。
城の中庭で騎士団が鍛練しているのが悪い。
こんな所に都合良く、木剣なんか置いておくなよ……
「父上、道場にいた頃の俺と思わないで頂きたい」
「それはお前の剣で示してみろ!」
幼い頃から恐ろしかった父の剣……
その圧力を感じない……
父が衰えた訳ではない。
それを現す様に、父の剣気は研ぎ澄まされている。
「オォォォッ!」
気合いを込めた声を発した父が上段から斬り下げて来る。
それを、身体強化を使い避けながら剣で受け流す。
流した筈の剣は足元から跳ね上がり、下段から俺の胴体に向かい斬り上がって来る。
父が得意にしている『龍尾返し』だ。
以前の俺では回避どころか、剣で受けることすら不可能だった技だが、最大限の身体強化を使い剣を受け止める。
【剣豪】のスキルを持つ父の剣を正面から受け切り、跳ね上げた俺は最速の連擊を放つ。
上下左右……全ての方向から放つ連擊は、父を防戦一方の状態に追い込んだ。
『この連擊すら防ぐか……やっぱり凄いな……』
父は防戦に徹しながら、俺の魔力切れを待っているのだろう。
しかし、ローレンスのおかげで人間とは比べ物にならない魔力を持つ俺が魔力切れになることはない。
父の予測を超えて放ち続ける連擊の終わりは唐突に訪れた。
木剣が耐えられなくなり、剣を打ち合う型でお互いの剣が砕ける様に折れてしまったからだ。
「まさか……これ程とはな……」
折れた木剣を見詰めながら父が呟いた。
「【ゾーン】が発動した時は、この数倍の速さで剣を振ることが出来ます」
「それが本当なら、竜を斬ることも能うだろうな……」
産まれて初めて、父と正面から打ち合うことが出来た喜びを押し殺して、冷静に答える。
「それもスキル次第なのが現状です。【ゾーン】無しでも使える様に魔力操作を研かないといけません」
「そうか……」
とりあえず、父は納得してくれたかな?
後は……エリー様だ。
「御覧になられましたね、叔母様。これだけの魔力操作で剣を使うウォルフ様ですが、この状態で無詠唱で魔法まで使われるんですのよ!」
「私にも、無詠唱で氷の槍を突き付けてくれたな」
「アルフレッド殿下、それは誤解ですよ!」
確かに、アルフレッド殿下とお会いした時、御付きの近衛二人に対しては突き付けたけど……
「ウォルフ、お前はそんな無礼を働いたのか!?」
「ウォルフ君、無詠唱の魔法を使えるのですか?」
さっきまで、良い雰囲気だった父が激昂したが、エリー様の問いかけで空気が変わった。
「クラウディアの言ってることが本当なら、見せて貰えますか?」
「マーク、相手をして貰えるか?」
「わかった!」
マークと木剣で打ち合いながら、マークの背後に氷の槍と炎の槍を形成していく。
勿論、マークも本気で打ちかかって来るが、マークの死角を選んで魔法を展開する。
「マーク、もう良いよ!」
「何か、後ろから寒気がしてたんだけど……な」
組み手を中断したマークが、背後を確認しながら言った。
「死角を狙ってたんだから、打ち合いながら気配を感じるのは流石だよ」
「打ち合いながら、死角に魔法を展開する余裕があるお前には言われたくないな」
俺の魔術は、ある意味反則だからな……
「本当に無詠唱で魔法を使うのね」
エリー様が深刻な表情で呟いた。
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師走も後半となり、皆様お忙しい中お読み頂き感謝しております。




