風雲レイスル城
王都の諜報員からの連絡先は魔導師団へと……
【王都】近郊に転移した俺達は、城門の衛兵にギルド証を提示して【王都】の街に入る。
【バルガナーン大森林】の探索結果を報告するためだが、エルフ達との接触は黙っておくことにした。
エルフの存在は亜人種の中でも、色々な面で厄介な事態を招きかねない価値を持つ……
独自の魔法体系、長い寿命とそこから得られる知識、何よりも……その美貌は人々を狂わせかねない。
午前中のギルドは、なるべく良い依頼を受けたい冒険者達で混雑しているので、朝食をとってからギルドに向かうことにした。
土竜をはじめとした珍しい素材も多数あるので、混雑は避けたいからだ。
俺達は時間を潰すために、ギルドの近くにある料理屋に入った。
冒険者が一日中出入りするギルドの近辺は、冒険者用の料理屋が軒を連ねている。
一部を除いて、冒険者って職業は裕福ではないので、安くて量のある料理屋が多い。
俺や、マーク達は【王都】で冒険者をしていたので、その中でも旨い店を知っている。
今日はユリアのお勧めの店に入ることにした。
「結構、旨かったな」
「値段以上の満足感ですね!」
「いっ、痛い、痛い、痛いですわー!!」
食事を終えて、店を出る俺達の後ろで……ホリーの悲鳴が響きわたった。
驚いて振り向くと、
「やっと捕まえたわよ、クラウディア!」
「おっ、叔母様……痛い、痛いですわー!」
前魔導師団長のエリー様が、ホリーの髪を掴み上げていた。
「ウォルフ君、あなた達も来て貰いますよ?」
穏やかな笑みを浮かべたエリー様……
眼が笑ってないな……
「ウォルフ君、お返事は?」
「はっ、はい!」
『俺達も……一緒ってことか?』
小声でぼやいたマークに、エリー様の視線が突き刺さる。
マークとユリアは、エリー様がどの様な方なのかを知っているが、知らないはずのクリスも本能的に逆らったら駄目だってことに気づいているみたいだ……
そして……俺達はレイスル城に連行されていった。
「さて、公務を放り出して逐電した理由から説明して貰いましょうか、クラウディア?」
城の会議室には、エリー様の他に、国王陛下、王太子殿下、アルフレッド殿下、そして父であるスヴェイン伯爵……といった王国の重鎮が勢揃いしていた。
「そっ、それは……ウォルフ様の所在が……」
「クラウディア、大きな声で皆様に説明しなさい!」
「うっ……うぅ……」
「ウォルフ君、あなたもクラウディアが魔導師団長の任に就いたことを知ってましたね?」
「はい……」
「クラウディア、あなたは魔導師団長の責務よりも、ウォルフ君達といることが大事なの?」
エリー様の様子から予想してはいたが……
俺達には『叔母様に復帰して貰ったから大丈夫』と説明していたが、本当は放り出して来たんだな……
これはマズい!
「ま、魔導師団長として、ウォルフ様の側にいることが、国の魔法研究に貢献出来ると判断したからですわ!」
ホリー、とんでもないこと言いやがったな!
「ほう、ウォルフの魔法は魔導師団長よりも優れていると言ってるのか?……クラウディア嬢?」
ちっ、父上ぇ、突っ込まないでー!
会議室にいる、全員の視線が俺に集まる……
そりゃ、そうだよな……
「皆様に見て戴きたい物があります、中庭に出て戴けますか?」
ホリーが自信たっぷりな口調で言う。
「ここでは駄目なのですか?」
「広い場所が必要なのですわ、叔母様」
なんとなく察しがついた……
こいつは土竜を見せる気だ。
「ふむ、この状況でクラウディアから『見せたい物』と提案されるなら、興味が湧くな」
国王陛下の一言で……全てが決定してしまった……
城の中庭に集まったお歴々を前に、ホリーがドヤ顔でマークに指示する。
「マーク、あれを皆様にお見せしてくださいませ!」
察しがついてはいたが、この面子の前ではマークも断ることが出来ない。
俺の顔を見て、申し訳なさそうに目配せしたマークが収納袋から両断された土竜を出す。
「なっ、これは竜か!?」
王太子殿下が驚きの声をあげる。
「これは……剣で斬ったのか?……いや、それは……」
「スヴェイン伯爵、貴公から見て、この土竜はどの様に討伐されたと推測する?」
「……さて、解りかねます……」
「この巨体をどの様にすれば両断出来る?」
「これは凄いわね……」
巨大な土竜が両断された姿を眼にして、みんな驚きを隠せずにいる。
「クラウディア、これは……あなた達が?」
「殆ど、ウォルフ様お一人で討伐されましたわ!」
あぁ、みんなの視線が俺に集まる……
「ウォルフ、お前はどうやって竜を討伐したのだ!?」
父の問いに答えない……訳にはいかないよな……
「『光刃斬』で斬りました……」
お読み頂きありがとうございますm(__)m
師走も後半となり、皆様もお忙しいと思われます中、拙作をお読み頂けますことを感謝しております。




